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#1556: iOS、iPadOS、watchOS のセキュリティアップデート、Drink Different ポスター、Mac OS X の 20 周年、Mac のコマンドラインを学べる参考書

Apple は先週、iOS 14.4.2、iPadOS 14.4.2、iOS 12.5.2、それに watchOS 7.3.3 に重要なアップデートを出した。これらは実際に攻撃を受けている WebKit の脆弱性 1 件を修正するためのものだ。懐かしい昔を思い出してみたい方々のために、今週号では 2 つの記事をお届けする。Mac OS X 10.0 が登場してから 20 周年を記念しての回顧記事と、Apple の有名な広告キャンペーンのパロディーとして出された Dantz Development の "Drink Different" ポスターを思い出す記事だ。最後にもう一つ、macOS のコマンドラインについてもっと知りたいと思われる方のために、Adam Engst が 2 冊の参考書を紹介する。Joe Kissell の Take Control of the Mac Command Line with Terminal と、Armin Briegel の macOS Terminal and Shell だが、これらはそれぞれ違った読者層に向けて書かれている。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Pages 11.0、Numbers 11.0、Keynote 11.0、BBEdit 13.5.5、Default Folder X 5.5.7、Fetch 5.8.2、Ulysses 22、Zoom 5.6.1、Firefox 87、それに Evernote 10.10.5 だ。

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

iOS 14.4.2、iPadOS 14.4.2、iOS 12.5.2、watchOS 7.3.3 が WebKit の深刻な問題に対処

iOS 14.5 やそれに関係したアップデートを待ち望んでいる私たちを尻目に、Apple は iOS 14.4.2、iPadOS 14.4.2、それに watchOS 7.3.3、それに加えて iOS 12.5.2 もリリースして、WebKit の中のまたもやもう一つの深刻な脆弱性と思われるものに対処した。

悪意を持って作られたウェブコンテンツを処理すると、ユニバーサルクロスサイトスクリプティング攻撃につながる恐れがある。Apple では、この脆弱性が悪用された可能性があるという報告について把握しています。

iOS 14.4.2 release notes

これらのアップデートはまた別の WebKit 脆弱性のためのアップデートがあってからほんの数週間後に出された。(2021 年 3 月 8 日の記事“iOS 14.4.1、iPadOS 14.4.1、macOS 11.2.3 Big Sur、watchOS 7.3.2 が WebKit のセキュリティ脆弱性に対処”参照。) Apple がもはや古くなった iOS 12 にもアップデートを出したのを見れば、この脆弱性が懸念すべきものであることが分かる。私たちの想像だが、iOS 13 に対するアップデートが出なかったのは Apple が iOS 13 の走るすべてのデバイスが iOS 14 にアップデート可能であることを前提としているからなのだろう。

今回のアップデートは早めにインストールすることをお勧めしたい。

インストールするには次のようにする:

いつも通りに、もしもインストール後に何か他の変更点に気付かれたなら、どうぞコメントに書き込んで頂きたい。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Dantz Development の "Drink Different" ポスターを回顧

かつて "I'm a Mac" を演じた俳優 Justin Long が今度は Intel に雇われて PC を宣伝し Mac をあざ笑う一連のコマーシャルに出演するという報道を見て、私は郷愁をかき立てられた。マニアでない人たちのうち何人がその昔の Apple の "Get a Mac" キャンペーンを覚えているのかという疑問はさておき、ここでは皆さんをそれよりさらにもっと過去の Apple 広告の歴史にお連れしよう。

1997 年から 1998 年にかけての Apple の "Think different" ポスターキャンペーンを覚えておられるだろうか。個々のポスターは歴史上の人物の白黒写真で、隅のところに小さなカラーの Apple ロゴと "Think different" という言葉が添えられていた。今は thecrazyones.it というサイトがそれらのポスターをコレクションしている。このキャンペーンの火蓋を切ったテレビコマーシャルの映像と、“メイキング”ビデオもある。

Think different posters
thecrazyones.it のスクリーンショット、元のポスターに名前は記されていなかった

皆さんはご存知でないかもしれないが、バックアップソフトウェア Retrospect のメーカー Dantz Development が、当時 Macworld Expo の際に開催したパーティーの会場で数年間にわたって "Think different" ポスターのパロディーを掲示していた。この、Dantz の "Drink different" ポスターは、Apple のデザインの真似をしつつ、有名人たちがさまざまな飲み物を手にしている写真を使っていた。実際、私たちの当時の記事“Macworld Expo SF '99 最高のもの”(1999 年 1 月 18 日) の最後のところで Jeff Carlson が Dantz にベストパーティー賞を与えつつまさにこのポスターに触れている。

最近私はたまたまこの Dantz オリジナルのパロディーポスターの写真を集めた低解像度アーカイブを見つけて、これは共有すべきタイミングなんじゃないかと思った。そのパーティーから 20 年以上が過ぎ、Dantz という会社が企業の墓場に消え去ってからもう 16 年が過ぎたのだから。ただし Retrospect はまだ生き残っていて、まずは EMC に買収され、その後 (さあ深呼吸して) Iomega、Roxio、Sonic Solutions、Rovi、Retrospect Inc. と転々とし、それから (最終的に?) StorCentric の手に渡った。

さて、Dantz のポスターに写っている歴史的有名人たちのうち、皆さんはどれだけの人の名前を答えられるだろうか? 彼らが手にしている飲み物を見分けられるだろうか? それぞれの写真の出典についてはどうだろうか? そしてもう一つ、Apple の "Think different" ポスターとの両方に登場しているのは誰だろうか?

Drink different MM

Drink different JW

Drink different CG

Drink different HB-IB

Drink different ET

Drink different LB

Drink different RS

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Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

Mac OS X、20 才となる:全てを変えた OS

もうそんなになるのであろうか? 24 March 2021 は Mac OS X の 20 周年の記念日となる。そのリリースを目撃した我々のような者にとって、1984 年から 2001 年迄 Mac を動かした "古典" Mac OS を (そしてそれ以降も:今でも使っている人はいる) 今日の Apple ユーザーの殆どは 全く使ったことがないことに思いを馳せると感慨無量である。

Apple の元役員 Scott Forstall は、この日を祝して滅多にしないツイートを発し、Steve Jobs が壁に X を書き殴りその名前を宣言した時のことを思い出している。

20 回目の誕生日おめでとう Mac OS X! 私は、今でも我々が君を名付けた時のことを覚えている。IL1 の小さな部屋で。Steve が大きな X を壁に書き殴り、そして微笑んだ時のことを。君は子供の Cheetah からどれ程成長したことか。

- Scott Forstall (@forstall) March 24, 2021

Mac OS X (今では単純に macOS と呼ばれている) が 2001 年に登場した時、その写真のようにリアルなアイコンとアニメーションに、それは未来から来たものの様に感じられた。Stephen Hackett は Mac OS X 10.0 からのスクリーショットを収集展示しているが、それが 20 年経っても如何にしっかり持ちこたえているかを見るのは驚きである。

About This Mac on Mac OS X 10.0
このスクリーンショットは 512 Pixels の Stephen Hackett の好意によるものである。

Mac OS X は Mac ユーザーには馴染みのない概念を導入した。Dock や Terminal の様なものである。この移行を乗り越えた者にとって、Mac OS X は大きな飛躍であった。それは元の古典 Mac OS だけでなく、Microsoft の競合する Windows XP をも古くさいものに感じさせた。しかも、後者が出荷されたのはその年の8月になってからである。

しかし、最初のリリースの Mac OS X 10.0 は基本的には有料のベータであった。(無料になるのには 10.9 Mavericks 迄待たなければならなかった。) 古典 Mac OS の多くの機能は Classic モードの外では失われ、そしてオペレーティングシステムは未来から来たものの様に感じられたが、一方では未来のハードウェアを待っている様にも見えた。性能はどうしようもなかった。Adam Engst はそれらの初期の荒さを "Mac OS X:未来はもうすぐそこに" (26 March 2001) に記録していて、次の様に言っている:

Apple の静かなリリースの理由は簡単である - 私の意見では、Mac OS X は殆どの人に Mac OS 9 に勝る十分な利点を提供していない。議論の余地のないものが一つある:Mac OS X は、現在のハードウェアとソフトウェアで出来ること全ては現時点では実現出来ていない。数多くの Apple の人目を引く機能が欠けている。例を挙げれば、DVD を再生したり、DVD や CD-R を焼いたりすることである。ハードウェアも問題が多い - Mac OS X には幾つかの周辺機器や拡張カードに対するサポートが備わっているが、他のハードウェア部品を使うことはユーザーに Mac OS 9.1 に再ブートすることを要するかも知れない。(ヒント - ベージュの Power Mac G3 以降の Mac 上では、再起動する時に Option キーを押下し続けると、次の起動の時に使うオペレーティングシステムの選択が出来る。) そして勿論、多くのアプリケーションは Mac OS X の Classic モードで問題なく走るが、Mac OS X 下でネイティブに走ることが出来るよう "カーボン化" されているアプリケーションは殆どない。幸いにして、既にカーボン化されているものには、Apple 自身による iTunes, iMovie 2, そしてプレビューの AppleWorks 6.1 があり、何れもがダウンロード出来る。

Mac OS X 10.1 が October 2001 に性能向上、CD 焼き、そしてインターフェース強化が図られて続いた ("Mac OS X 10.1: 主な機能" 1 October 2001 参照)。これが私の最初のバージョンの Mac OS X となり、PowerBook G3 (Lombard) にインストールされた。

思い出話を辿ることに興味があるのであれば、Jason Snell は長年に亘る彼の Mac OS X 記事を集めていて、それぞれのバージョンにおける変更の概要も見られる。自由時間が沢山ある人のためには、John Siracusa は彼の量の多い Ars Technica Mac OS X レビューに対するリンクを保持しており、10.0 から 10.10 Yosemite 迄カバーしている。

Mac OS X は多難なスタートを切ったかもしれないが、Mac の未来だけでなく iPhone, iPad, そして Apple Watch に対する基盤までをも創り出した。それは論議の余地はあるかも知れないが史上最も重要なソフトウェア展開の一つと言えるが、日の目を見ない危険性にも遭遇していた。

破れかぶれの一手

Macworld では、Jason Snell が Mac OS X の誕生を記録に残すのに良い仕事をした。初代の Mac OS は 1984 年当時は革新的だったが、すぐに古びてしまった。1990 年代には、Mac OS は全体的な再構築が必要なことは明らかであったが、当時の Apple は最悪であった。最も有名な試みは Copland というコードネームのもので、Paul’s Crap と言う YouTube チャネルでそれがどんなものかの感触は得られる。

Apple は、最終的には、前進するための最善の方法は新しいオペレーティングシステムを買うことだと認識するに至った。選択肢は、元の Apple 役員が指揮する二つの会社のどちらかであった:Steve Jobs の NeXT と Jean-Louis Gassee の Be である。結果は皆さんご存じの通りである。

NeXTSTEP は、ただの Mac OS X の Unix 基盤を以上のものを提供した。そこには、Dock の様な鍵となるインターフェース要素、TextEdit の様なアプリ、そしてアプリを作成するための Objective-C (大部分は今では Swift に置き換わっている) の様なものが含まれる。Mac 開発を長いことやっている James Thomson がこの Dock のコードを書いたのだが、Jobs がそれを初めてデモをするのを見ている時の彼の緊張感についてツイートしている

Steve が Dock を初めて紹介するのを再度見るのは本当に奇妙な感じである。と言うのも、それは私が書いたコードで走っていたからである。この部分の最初から最後までの間私は怯えていたと言うのは過少表現である。私はこれをそれ以来見ていないと思う。https://t.co/ru7dVnkGV9

- James Thomson (@jamesthomson) March 24, 2021

Apple による 1997 年の NeXT の買収はかなりの物議を醸した。Geoff Duncan はそれを我々のために "NeXT とともにやってくる次のシステムとは?" (6 January 1997) として記録してくれた。数ヶ月後、Adam Engst は NeXT の買収と当時の CEO Gil Amelio の決断についての分析を "Apple の決定" (31 March 1997) で提供した:

Apple の最近の変更について私が受け取ったメールの一つの主題は、元 NeXT 従業員が今や Apple の決定を行っているという認識である。その中の一人は、まるで NeXT が Apple を買ったように、その逆ではなく、感じるとまで言っていた。程度はあるが、これらの認識は間違ってはいない - 結局の所、Avie Tevanian と Jon Rubinstein、二人とも元 NeXT の人間、がオペレーティングシステムとハードウェア部門の責任者となっている。

それは実際に先を見通していたこととなった。今や NeXT が内部から取って代わったことは十分裏付けされた歴史でもある。Adam は当時次の様に感想を述べている、"Gil は他に何が出来たであろうか?" Gil Amelio はしばしば最悪の Apple CEO だと引用されるが、少なくとも、彼は NeXT を買収し Steve Jobs を呼び戻すという正しい決定をした。たとえ、彼はそうすることで彼自身の首をまな板の上に乗せることになることは認識していなかったとしてもである。

しかし、NeXT によって内部から食われてしまった後でも、Apple であり続けられるかに関しての疑問はあった:

基本的に、NeXT の買収は Apple の文化に重大な影響を与える。それは必ずしも悪いことでは無いが、それは時にはとげとげしい移行ともなり得る。問題は、Macintosh を特別なものとしたその考え方や信念が新しい環境下でも生き延びられるかどうかである。

Apple の古参者 Imram Chaudhri、iPhone のインターフェースの多くを創り出したとして評価されている、は面白い逸話をツイートしている。それは、Jobs との初期のやり取り、そして一台の中古の NeXT cube が、この頑固な CEO にそのオペレーティングシステムの多くの欠陥を実際に見せることで、彼との多くの論議で勝たせてくれる手助けとなったかについて語っている。

1995 年、apple でインターンとして働いている時、私は NeXT cube を $150 で stanford surplus で買った

mac os X を steve と設計している時、彼はよく NeXT の方がどれ程良かったかの話をした

そこで、私は自分の cube を持ち込んで、彼にそれは彼が覚えている程には良くないことを彼に示して論議に勝利した

- Imran (@imranchaudhri) March 25, 2021

X を超えて

Mac OS X がこのオペレーティングシステムの正式名であったが、Apple は "Mac" の部分を Mac OS X 10.7 Lion 時代の途中で切り落とした (我々は、サイクルの途中での切り替えは拒絶し、10.8 Mountain Lion を待つことにした)。数年後、Apple は今度は X を捨てて、macOS 10.12 Sierra に合わせて再度名前を変えた。今や macOS 11 Big Sur となり、Apple は遂に 10 のバージョン番号から前進して、macOS アップデートに意味のあるバージョン番号を与えた ("Apple のバージョン番号とビルド番号を解読する方法" 8 July 2020 参照)。

名前は置いておいても、Mac OS X の NeXT 派生の核はそのまま残っていて、PowerPC から Intel そして Intel から Apple シリコンへという構造変革にも耐え残っている。そして、初期の時代からのアプリで姿を消したものもあるが、多くの元々の Mac OS X アプリケーションは残っている。例を挙げれば、過小評価されているがビックリする程強力な Preview の様なものである。

元祖 Mac OS は公式には 17 年続き、そして Mac OS X 10.0 の子孫は最初の導入から 20 年経っても元気であり、終わりは見えていない。かつては死にかけた会社を救うためのダメ CEO による必死の試みだあったものが、今や $2 trillion のエコシステムへと花咲いた。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Mac のコマンドラインを学べる2冊の本

TidBITS 読者の皆さんはおそらく macOS が Unix に基づいていて、Terminal を開けばファイルやフォルダやアプリにコマンドラインでやり取りできるようになることをご存知だろう。大多数の Mac ユーザーにとってコマンドラインは大体において何となく珍しいもので、手を出しづらい感じに見えているのではないだろうか。それとは対照的な立ち位置にいるのが、Unix 風オペレーティングシステムに堪能でグラフィカルなアプリよりコマンドラインを使っている時間の方が長い人たちだ。でも私たちの多くはその両者の中間にいて、コマンドラインのパワーは知っているけれどもネイティブな Mac アプリの方が使いやすいと思っている。少なくとも私自身は間違いなくそれに該当する。必要ならばコマンドラインで grep を使えるけれども、可能であればその代わりに BBEdit を使っている。

もしあなたも私と同じようなら、おそらくここで指摘しておくべき最も重要なコマンドラインの要点は、それがどちらでも良いという問題ではまずないことだ。私がコマンドラインを使って何かをしようとする場合、ほとんど例外なしに、それは Finder、BBEdit、あるいは他のどんなネイティブ Mac アプリを使っても実行が難しいかまたは不可能である作業だからだ。だからと言って重複する範囲が膨大だということを否定するつもりはない。Finder の中でフォルダをダブルクリックしたりファイルを開いたりしてファイルシステムを進み行くやり方を知っているのと同じように、コマンドラインでのそれに相当する基本操作も、やはり知っておく必要がある。

ここに 2 冊の本がある。Joe Kissell がアップデートしたばかりの Take Control of the Mac Command Line with Terminal (Take Control Books で $14.99 で発売中) と、Armin Briegel の新刊書 macOS Terminal and Shell (Apple Books で $19.99 で発売中) だが、いずれも、コマンドラインを使いこなすために役立つと約束する。全くの初心者にも、また管理者レベルの技術を身に付けたい人にも。

Book covers for two Terminal books

(情報全面開示: Joe はもともと Tonya と私が Take Control Books を運営していた時代に Take Control of the Mac Command Line with Terminal を執筆して、彼を助けるために私自身もかなりたくさんの力を貸した。けれども私たちは 2017 年 5 月に Take Control を Joe に売却し、今ではこの本にも彼の会社にも金銭的利害関係はない。それから、私は Armin Briegel をあまりよく知っている訳ではないけれども、いろいろなカンファレンスでお互いに何度も会っているし、もう何年も前の MacTech 会場で月曜日のイベントの入ったカレンダー情報を TidBITS の各号に投入しようと苦労していた私のために彼は親切にもササっと AppleScript を書いてくれたことがある。)

意外でもないだろうが、この 2 冊の本は始めのところではだいたい同じ内容の話をカバーしている。ここはまさにさきほど触れた重複する範囲に属することだ。Terminal の操作の仕方、コマンドの入力、ファイルシステムのナビゲート、ページの読み方といったことは、誰もが理解しておく必要がある。けれどもその後では、この 2 冊の本はかなり違った方向に進む。

Take Control of the Mac Command Line with Terminal

Take Control of the Mac Command Line with Terminal はハイレベルの道を行く。Joe Kissell はいつものフレンドリーな、実用的な語り口で、シェルスクリプトを作ってタスクの自動化 (変数、ユーザー入力、条件文、ループ、数値計算も含む) をしたり、ssh 経由で他の Mac をコントロールしたり、パイプやリダイレクトなど重要な Unix テクニックを使ってみたり、grep を使ってファイルの中にあるテキストパターンを検索したり、パッケージマネージャで新しいコマンドラインソフトウェアをインストールしたり、といったことのやり方を説明する。

コマンドラインに慣れていない多くの Mac ユーザーにとって、一番難しいのは何ができるのかを実感することだ。そのパワーを理解していなければ、問題に出くわした際に何も考えることさえできないだろう。その学習過程を短縮化する役に立とうと Joe は 64 個の“レシピ”を含めており、それに取り組むことによって複数個のコマンドを組み合わせる必要が伴うことの多い実際的な解決法を手にすることができる。中でも私が特に気に入っているのが内部的に動作するタイプのもので、例えばボリュームがなぜイジェクトしないか (たぶんアプリのどれかが使用中なのだろうが、それはどのアプリか?) を理解したり、あるいはゴミ箱を空にしようとしても削除されないファイルを処理したりといったレシピだ。また、textutilコマンドを使ってよくあるさまざまのフォーマットの間でテキスト書類を変換する方法を学べて、私は大いに満足した。多数の Word 書類で一杯のフォルダを HTML に変換する (あるいはその逆の) 必要が生じることは容易に想像できるが、一つ一つ手で変換するなどとてもやる気がしないだろう。

macOS Terminal and Shell

Take Control of the Mac Command Line with Terminal が日常的な Mac ユーザー向けであるのに対して、Armin Briegel はシステム管理者として働いた経験を生かして macOS Terminal and Shell をシステム管理者、開発者、科学者、さらには Finder でいつも使えるようなレベルなり他のネイティブな Mac アプリでできるレベルなりを超えた柔軟性を必要とする“プロ”のユーザーのために執筆した。

なので、こちらの本ではユーザーを (sysadminctlを使って)、またグループを (dseditgroup を使って) 管理することについて多くの部分を割いて解説している。これはシステム管理者には非常に興味のある話題であることが多いけれども、自分一人で Mac を使っている普通の人々にはそうでないかもしれない。Armin はさらに隠れたユーザーアカウントを作成する方法も説明する。これは、システム管理者が従業員の Mac に管理者レベルのアカウントを確保しておいてトラブルシューティングや修理のために使うけれどもその Mac のログインウィンドウやその他の部分には一切影響を与えないようにする目的でよく使われる。また、Armin はさまざまのリンクタイプ、特殊なファイルアトリビュート、macOS アクセス権など、管理者や開発者にのみ使い道があるような話題についても詳しく説明している。

macOS Terminal and Shell が秀でているもう一つの個所は、Terminal アプリとシェルとの双方についてそれぞれの設定方法をことごとく解説して、それらの動作の仕方を自分の好みに合わせられるようにしているところだ。例えば、Terminal の中でコマンドを一つ選択して Help > Open man Page for Selection を選ぶ (または選択したものを Control-クリックして Open man Page を選ぶ) ことで新しいウィンドウが開いて、自動的に黄色の背景になって目立たされ、選択したコマンドの man ページが表示されることを私は知らなかった。また、マークを付けて出力をスクロールして戻る方法 (出力されたものが複数の画面にわたる場合に便利) や、コマンド内部でのキーボードナビゲーション、Option キーを使った矩形選択、その他多くのセクションもある。もう一つ、私が初めて知った嬉しいヒントは、Terminal でウィンドウグループを作ることで頻繁にアクセスする必要のある複数のサーバのそれぞれについてタブが開くようにできることだ。

余談だが Apple の Books アプリについて

Take Control デザイン言語で共同作業をした経験がある私は明らかに偏った先入観を持っているが、Apple の Books アプリの中で macOS Terminal and Shell のページを一枚一枚めくるうんざりするようなユーザー体験に比べて、PDF 版 Take Control of the Mac Command Line with Terminal を Preview で読む方が私は遥かに快適だ。(他のすべての Take Control ブックと同じように、Take Control of the Mac Command Line with Terminal には Books 用の EPUB 版もあるし、Kindle 用の Mobipocket 版もあるので、テキストの改行をフローし直せる方が良い場合にはそちらを使える。)

公平のために言えば、私がここで述べる Apple の Books アプリでの読書体験に対する批判は完全に Armin Briegel にはどうにもならない範疇にあるし、複数通りのフォーマットで電子ブックを出版することに伴う困難を私は誰よりもよく知っているつもりだ。それでもなお、うまく作られた PDF を Preview で読むことに比べて、Books アプリにはフラストレーションを起こす原因となる重要な点がいくつかある:

Books の良い面を言えば、Armin Briegel は特定の機能の使い方の実例を示した短いビデオを多数含めている。例えばファイルやフォルダを Finder から Terminal の中へドラッグしたりといったことだ。静的なスクリーンショット画像よりもビデオ映像の方が分かりやすい。最近の数年間で事情が変わったのかどうかは知らないが、PDF の中にビデオを埋め込むのは難しくて私たちの手には負えなかった。だからこれは、macOS Terminal and Shell が Books を使い続けるべき立派な理由だと言える。

でも、ここで 2 冊の本の読書体験の良さを比較することに力点を置きたい訳ではない。皆さんはそれぞれご自分の必要に最も適した本を選ばれればよいのだから。ご自分の目的のために Terminal の使い方とコマンドラインについてもっと知りたいというのが主目的ならば、Joe Kissell の Take Control of the Mac Command Line with Terminal が最も適した第一歩になることだろう。これは、深い湖の水面付近をさっとすくい取るための本だから。それとは対照的に、Armin Briegel の macOS Terminal and Shell は深く潜行して、Mac 管理者や開発者が日々の仕事で必要とする種類のコマンドラインの専門知識を授けることに重点を置いている。どちらの本を選んでも間違いはないだろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Pages 11.0, Numbers 11.0, and Keynote 11.0

Pages 11.0, Numbers 11.0, Keynote 11.0

あなたの書類にもう一味活気を増したいという場合のために、Apple は 3 つの iWork アプリをすべてバージョン 11 に上げ、検索オプションを強化するとともに Recents、Portraits、Live Photos などの新しいコンテンツカテゴリを追加した新しいメディアブラウザを導入した。3 つのアプリはいずれも、表のセル、テキストオブジェクト、および図形に電話番号のリンクを追加できるようになり、AppleScript を使って書類のパスワードを変更したりパスワードで保護された書類を開いたりできるようになった。(Apple の看板製品のアプリにより良い AppleScript 対応が組み込まれるというのは素敵だ!) さらに嬉しいことに、Keynote は今回から講演者用のコントロールを別ウィンドウに表示するようになり (講演者のノートと現在および次のスライドがより集中的に表示されるということで、TidBITS Talk ではこの機能に対する高評価の声が多い)、また Build Order ウィンドウにサムネイル画像が付いて複雑な並びの編集が楽になった。(無料、Pages は 292.3 MB、リリースノートNumbers は 255.8 MB、リリースノートKeynote は 345.8 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

Pages 11.0, Numbers 11.0, Keynote 11.0 の使用体験を話し合おう

BBEdit 13.5.5

BBEdit 13.5.5

Bare Bones Software が BBEdit 13.5.5 をリリースして、macOS 11 Big Sur で導入されたバグの結果としてサイドバーの中で不必要な描画作業が必要になっていた問題に回避策を施した。この古参のテキストエディタはまた、コードのない言語モジュールに支援された言語の関数本体で折り畳みを生成する際の問題を修正し、ワイルドカードの言語マッピングがキャッシュされた際に不正にタグ付けされていたバグを修正し、スリープ状態とクラッシュ回復用スナップショットのバックアップコピーを正しく保存するようにし、Big Sur の下で Appearance および Editing 環境設定画面のスライダー挙動を修正し、多数の書類を含んだウィンドウのサイドバーをリサイズする際のパフォーマンスのバグを解消している。(新規購入 $49.99、無料アップデート、18.7 MB、リリースノート、macOS 10.14.2+)

BBEdit 13.5.5 の使用体験を話し合おう

Default Folder X 5.5.7

Default Folder X 5.5.7

St. Clair Software が Default Folder X 5.5.7 をリリースして、Cocoatech のファイルブラウザおよび Finder 代替ツール Path Finder との連携を強化した。Default Folder X は今回から Path Finder のウィンドウのすべてのタブで開いているフォルダを表示するようになり、Default Folder X のメニューやドロワボタンを Path Finder のツールバーに自動的に追加できるようになった。Open/Save ダイアログを拡張するこのユーティリティはまた、Information タブで作成日と修正日が消えてしまうことがあった問題を解消し、ファイルダイアログでのフォルダの切り替えやアイテムの選択に関する信頼性を高め、カーソルが消える既知の問題をすべて修正し、起動時に Default Folder X がハングすることがあったバグを修正した。(新規購入 $34.95、TidBITS 会員には新規購入で $10、アップグレードで $5 の値引、Setapp, からも入手可、15.4 MB、 リリースノート、macOS 10.10+)

Default Folder X 5.5.7 の使用体験を話し合おう

Fetch 5.8.2

Fetch 5.8.2

Fetch Softworks が Fetch 5.8.2 をリリースして、M1 ベース Mac への対応を追加した。この古参のファイル転送クライアントへの今回のアップデートではまた、検索の最中のファイルリストの並べ替えでの問題を修正し、ドラッグした項目がファイルリストの最後のフォルダにアップロードされてしまったバグを修正し、転送ウィンドウ同士の間での項目のドラッグに関する複数個の問題を解消し、パッシブモードで 0.0.0.0 を使うサーバへの対応を追加し、Dock アイコンをクリックして転送ウィンドウを開く挙動を復活させ、キーボードナビゲーションが有効の場合の上下矢印キーに関する問題を修正し、ミラーダウンロードが迷子の項目を削除していなかったバグを修正した。(Fetch Softworks から新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、教育機関のユーザーには無料、無料アップデート、9.8 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Fetch 5.8.2 の使用体験を話し合おう

Ulysses 22

Ulysses 22

Ulysses が会社名と同名の執筆アプリ Ulysses のバージョン 22 をリリースして、ブログ出版機能に拡張と改良を加えた。今回のアップデートでは Micro.blog プラットフォームに直接出版する機能を追加し、WordPress への出版を改良した。(出版済みの投稿をアプリの中から更新することも可能になった。) Ulysses 22 ではまた、色をカスタマイズできるグループアイコンを追加してテキストをより良く整理できるようにし、見出しを大きなサイズで表示できるようにし、いくつかのパネルのルック&フィールを改訂し、書き出し後に Quick Export が自動的に閉じるようにし、他のアプリへ切り替える際のパフォーマンスを改善し、VoiceOver 対応を拡張した。学生は Ulysses を 6 か月間あたり $10.99 の割引価格で購入できる。(Mac App Store から購読月額 $5.99、年額 $49.99、Setapp からも入手可、無料アップデート、31 MB、リリースノート、macOS 10.14.4+)

Ulysses 22 の使用体験を話し合おう

Zoom 5.6.1

Zoom 5.6.1

Zoom が会社名と同名のビデオ会議アプリをバージョン 5.6 にアップデートして、Zoom Phone の三者通話を拡張して一人の参加者が離脱しても残りの二人が会議を続けられるようにした。今回のアップデートではまた、チャット検索の範囲を狭めて一人の人物の @mention を含む結果のみを表示できるようになり、絵文字を選択する際にコロンの後に 2 文字以上を入力することでマッチする絵文字のみを表示するようにし、ウェビナーのホストとパネリストがチャットでファイルを送信できる (バージョン 5.6 かそれ以上が必要) ようにし、ユーザーが自分の直接電話番号をプロファイルカードや電話設定画面からコピーできるようにし、ビデオの仮想背景が裏返ったり回転したりした問題を解消している。このリリースの後間もなく Zoom はバージョン 5.6.1 を出して、詳細不明のマイナーなバグ修正とセキュリティ強化を施した。(無料、24 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

Zoom 5.6.1 の使用体験を話し合おう

Firefox 87

Firefox 87

Mozilla が Firefox 87 をリリースして、Apple の VoiceOver スクリーンリーダーへのフル対応を追加した。Windows、Linux、Android、および iOS 用の Firefox はすべてそれぞれのプラットフォームに内蔵されたスクリーンリーダーに対応しているが、Mac における VoiceOver 対応は開発者向けプレビュー版を除いてこれまでなかった。Firefox 87 で、よく使われる VoiceOver 機能の大多数に対応した。今回のアップデートではまた SmartBlock を導入した。これは Firefox Private Browsing および Strict Mode 用の新しいインテリジェントなトラッキングブロック機能だ。SmartBlock は代用のスクリプトを提供することによってウェブサイトが Firefox のトラッキング保護に妨げられずに正しくロードされるようにする。今回のリリースではまた、リファラヘッダからパスおよびクエリの情報を取り除くことでサイトが誤ってユーザーの機密情報を漏らすことを防止するとともに、ビデオを視聴中のオーディオ用キーボードショートカットを追加した。(無料、126 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Firefox 87 の使用体験を話し合おう

Evernote 10.10.5

Evernote 10.10.5

Evernote が社名と同じ名前の Mac 用情報管理アプリのバージョン 10.10.5 をリリースして、ノートを Gmail または Outlook のデスクトップアプリにドラッグ&ドロップすることで電子メールの中のそのノートへのリンクを挿入できるようにした。(Outlook Web へのドラッグ&ドロップには未対応だ。) 今回のアップデートではまた、手書きのノートやスケッチで背景色や背景パターンを変更できるようにし、Home スクラッチパッドに 600 文字まで記入できるようにし、画像やファイルに Preview アプリで施した変更が Evernote の元のファイルに反映されるようにし、ノートの Merge アクションの速度を向上させ、タグの編集時にクラッシュすることがあったバグを解消した。(Evernote からMac App Store からも無料、147 MB、リリースノートmacOS 10.10+)

Evernote 10.10.5 の使用体験を話し合おう