TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#553/30-Oct-00

ダイヤグラムを作りたい?ほとんどのグラフィックアプリケーションは期 待に背くが、ConceptDraw はそうではない。今週号でレビューするが、そ れはそのダイヤグラムに特化した機能セットのおかげだ。また、Aladdin 社の StuffIt Deluxe 6.0 を眺め、もっと小さな Eudora 5.0.1、 SETI@home 3.0、Action Files 1.5.4、Action Menus 1.0.2 のアップデー トを取り上げる。ニュースでは、Quark 社の創立者である Tim Gill 氏が 同社を離れ、Napster 社が Mac クライアントをリリースし、 Princeline.com が食糧雑貨を競売するという概念をあきらめている。

目次:

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今回の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/30-Oct-00

(翻訳:西村 尚 <hisashin@hotsync.co.jp>)
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(  :吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :敦賀 康子 <hiroki-tsuruga.soul75@nifty.com>)

Eudora 5.0.1 がリリース -- Qualcomm 社は、同社の広く使われている 電子メールプログラムへの小さなアップグレードとなる Eudora 5.0.1 を リリースした(新機能のレビューは TidBITS-547 の“Eudora 5.0 が貴 方の心を読む”を参照)。変更点には、小さな付加機能と Eudora の書き 直された Address Book へのさまざまな小機能と修正に加え、スペルチェッ カ、Eudora の IMAP 機能、読み込み機能へのさらなる小さな改良の数々 が含まれる。現在 Eudora 5.0 をお使いなら、アップデート(無料)する 価値はある。前バージョンからまだアップグレードしていないなら、改良 された安定性だけでも 5.0.1 にアップグレードする決心をすべきだ。 Eudora 5.0.1 は Mac OS 8.1 以降の動く PowerPC ベースのマシンを必要 とする。4.6 MB のダウンロード容量だ。 [ACE]

<http://www.eudora.com/products/eudora/download/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06112>

Action Files 1.5.4 & Action Menus 1.0.2 がアップデート -- Power On Software 社はマイナーアップデートした Action Files と Action Menus をリリースした。このユーティリティは各 30 ドルで、Open、Save ダイアログボックスの機能を向上するものと、カスタムのメニュー、キー ボードショートカットを作成するものである。( TidBITS-434 の “ACTION Files の使命”、 TidBITS-503 の“Now Menus が Action Menus として生まれ変わった”を参照。)Action Files 1.5.4 はいくつ かのアプリケーション(BBEdit 6、Adobe Photoshop 6、Adobe Illustrator 9、Microsoft Word 2001、CodeWarrior)との互換性を改善 し、Mac OS 8.1 以前との互換性の問題にも対応、また Recent Item リス トに現れないアイテムのバグを修正している。Action Menus 1.0.2 も同 ように Mac OS 8.1 以前との互換性の問題に対応し、Mac OS 9.0.x でのカ スタムのキーボードショートカットの作成・削除ができないバグ、特定の アプリケーションで作成した書類が Recent Items メニューできちんと現 れないバグ、また Mac OS 9.0.x での Multi-Action Menu Commands のバ グを修正している。アップデートは確かに些細なものだが、無料であり (アップグレードするにはデモ版をインストールするだけでよい)、Mac OS にローレベルでパッチを当てるので、機会があればアップグレードす る価値はあるだろう。Action Files 1.5.4 は 2.3 MB のダウンロード、 Action Menus 1.0.2 は 2.2 MB である。(この記事の執筆中に、Power On の Now Up-to-Date & Contact が、全てのプラットホームを含むスケ ジュール・プロジェクト管理の部門において、日本で第一位のセールスポ ジションを獲得する栄誉に輝き、Windows の Microsoft Project と Lotus Organizer までも追いこしたとのことである。)[ACE]

<http://www.poweronsoftware.com/products/ACTIONFiles/>
<http://www.poweronsoftware.com/products/ACTIONMenus/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04931>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05619>
<http://www.poweronsoftware.com/information/pressreleases/japan.asp>

SETI@home 3.0 クライアントを発表 -- 分散コンピューティングプロジェ クトの SETI@home のメンバーが Macintosh 版 SETI@home クライアント のバージョン 3.0 をリリースした。SETI@home は、世界中のコンピュー タの空き時間を利用して、電波望遠鏡のデータを分析し、地球外から来て いる可能性のある信号を探査するプロジェクトである。Version 3.0 は今 までどおりスクリーンセーバーとしてもスタンドアロンのアプリケーショ ンとしても動き、新しく最適化された高速フーリエ変換(FFT)アルゴリ ズムを導入している。この新しい技術によるパフォーマンスの向上のおか げで、SETI@home クライアントは 2 種類(“pulses”と“triplets”) のパルスの探知を試みることが可能になっている。Version 3.0 は、調査 するドップラー偏移率の範囲を広げ、また、ガウス曲線の適合を強化し、 間違って有効な報告をする数を減らしている。同クライアントは 3D グラ フを間引きして描き換えるようになった。これは画面に描画する時間が、 実際に計算する時間よりも長くかかるからだ。SETI@home 3.0 は ダウン ロードサイズが 450K、PowerPC 搭載機で最低 24 MB の RAM、System 7.5.5 以上を必要とする。SETI@home プロジェクトに参加し続けるには、 ゆくゆくはバージョン 3.0 のクライアントを使う必要がある。まだ参加 していないなら、TidBITS SETI@home チームヘの参加をご一考されたし! [GD]

<http://setiathome.ssl.berkeley.edu/mac.html>
<http://setiathome.ssl.berkeley.edu/cgi-bin/cgi?cmd=team_join_form& id=3308>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05401>

Napsterが(ついに)Mac クライアントをリリース -- Napster は、議 論の的になっているピアツーピア型の音楽共有サービスで、現在音楽産業 の大手に著作権侵害を助長するとして訴えられているが、Macintosh 用ク ライアントソフトウェアの初のベータ版をリリースした。このソフトウェ アの立ち居振る舞いが、サードパーティによる最も一般的な Mac 用 Napster クライアントのひとつである Blackhole Media 社の Macster に 似ているとしても、驚くことではない。Napster は最近 Macster を買収 し、公式の Mac クライアントとして承認した。Napster は同じ開発者チー ムに開発を続行させる予定である。同クライアントを使用すると、 Napster サービスに登録しているユーザーは他の Napster コミュニティ のメンバーから MP3 ファイルをダウンロードでき、もしそうしたければ 手もとにあったファイルをコミュニティと共有でき、またリアルタイム チャットに参加もできる。Napster 1.0b1 クライアントは 1.3 MB のダウ ンロードで、PowerPC を搭載した最低 Mac OS 8.1 が動作するマシンを必 要とする(CarbonLib 1.4 と Internet Config も必要である)。Napster は英語以外の言語もまもなくサポートする予定である。[GD]

<http://www.napster.com/mac/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06056>

Entourage 続報 -- TidBITS-550 に Microsoft Entourage のレビュー を載せたが、その後日談である。Entourage の組織化された構成は私のワー クスタイルに適している。しかし結局、私は Entourage の速さが恐れてい たとおりとんでもないものであることを知った。Entourage は、Eudora な ら 2 〜 3 秒で終わる検索実行と結果表示に数分間も要した。そのうえ、 Eudora ならほとんど瞬間的に行われる選択されたメッセージの移動や削除 は、何秒もかかった。ウインドウの切り替えさえも遅いのである。今や私 は完全に Eudora へ復帰したが、それはレビューで述べたような簡単なこ とではまったくなかった。私が推奨した方法は受信メッセージを処理でき たが、送信メッセージのコピーは処理されなかった。代わりに私は、実に 見事な AppleScript スクリプトである Eudora Export を用いた。これは Dan Crevier 氏と R. Shapiro 氏の合作であり、そのおかげで Eudora ユー ザーは恐れずに Entourage を実験してみることができる。[MAN]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06139>
<ftp://ftp.macemail.com/oe/R_Shapiro's_OE_4.5_Scripts.hqx>

Priceline.com が食料雑貨類の入札を終了 -- TidBITS-499 の記事 「付け値で購入、Priceline.com」で、私たちは Priceline.com 社のオー クション方式を使って航空券を買ったすてきな体験について書いた(その 後は行っていない)。また、低価格で入札するという同じ方式で食料雑貨 類やガソリンを買うという、Priceline.com 社の WebHouse Club プログラ ムにも触れた。食料雑貨類を HomeGrocer.com(現在は Webvan 社が所有) のような商店でオンラインショッピングすることの効用については、私た ちはすこぶる肯定的である。しかし WebHouse Club プログラムは私たちに とって有意義ではまったくなかった。そして今、実施して一年を待たずに Priceline.com 社は WebHouse Club プログラムを終了した(しかし同社の 他のサービスは引き続き行われている)。さて、この物語の教訓は何だろ う? 違う品物には異なるビジネスモデルが必要だということだ。それがイ ンターネットに関連しようとしまいと。[ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05575>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05303>
<http://www.priceline.com/infoctr/update.asp>

Gill 氏が Quark を去る -- Quark 社に近い筋によれば、創設者であり 会長だった Tim Gill 氏が、自身の団体である Gill Foundation を通じ て慈善事業を行うために同社を去ったとのことである。Quark 社の社長兼 CEO である Fred Ebrahimi 氏は、最近 Gill 氏の持ち分(未公開企業で ある Quark 社の半分)を買い取った。Gill 氏は Quark 社を 1981 年に 創設し、Apple III 用の初のワードプロセッサを書いた。Ebrahimi 氏は 社長兼 CEO として 1986 年に雇われた。Quark 社の主力製品である QuarkXPress は 1987 年の発売以来、デスクトップパブリッシング分野の 主要アプリケーションのひとつであり続けている。Quark 社からコメント は発表されていない。[JLC]

<http://www.gillfoundation.com/>
<http://www.quark.com/products/quarkxpress/>

アンケート結果:重要で中心的存在 -- 先週号のアンケートは、皆さん が自分の Mac を日常的にはどんなことに使っているのかというものだっ たが、結果は啓発的であり予測できるものであった。予想通り、圧倒的に 多かった回答はメールの 87 % とネットサーフィンの 80 % で、明らかに このアンケートの回答者のコンピュータ利用はインターネットが優位を占 めるということである。ワープロ作業は堂々の第 3 位で回答者の約 63 % であるが、ここから先は回答の著しい差がなかった。グラフィックやスプ レッドシート、紙と Web の両方の出版はそれぞれ 30 % かそれ以上の回 答で(これは 3 人に一人がそれらを日常的な作業としていることを意味 する)、開発とゲームは共に 20 % である(このことは 5 人に一人がゲー ム愛好者かソフト開発者であることを意味する)。残りのカテゴリーのオー ディオとビデオ、システムのカスタマイズ、その他が回答の 12 〜 18 % で、学習ソフトのために使うと答えた人はアンケート回答者のうちのたっ たの 5 % で最下位だった。[GD]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=62>

アンケートのお知らせ:帯域幅が良い -- 上記の通り、先週号のアンケー トにより TidBITS 読者が Mac をメールとネットサーフィンに最も日常的 に使うということが明らかになった。しかしこのことは帯域幅についての 質問を生むことになる。もしあなたがよくインターネットを利用するので あれば、職場と家庭両方において通常どんな種類のインターネット接続を 利用しているのか?56K モデムや 56K フレームリレーから 128K ISDN や 256K DSL までの幅広い様々な接続の種類がある。ぜひ、我々のホームペー ジで投票しよう! [ACE]

<http://www.tidbits.com/>


大幅アップデートの StuffIt Deluxe 6.0 と Expander 6.0

by Adam Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

圧縮・アーカイブソフトの大御所、Aladdin Systems 社の StuffIt Deluxe は、大幅なアップデートが施され、バージョン が 6.0 になった。 新機能の中でも、メールに添付された圧縮ファイルを受信者が解凍すると その旨を送信者に知らせるという機能、ReturnReceipt は特筆に値する。 ReturnReceipt は、受信者が StuffIt Deluxe 6.0 または StuffIt Expander 6.0 で添付書類を解凍すると、解凍を知らせる送信メッセージ を作成する仕組みになっている。通知を行うかどうかを決めるのは、常に 受信者側である。また、旧バージョンで解凍すると、テキストファイルが 現れるだけだ。まだ機会がなくこの機能を試していないのだが、状況によっ ては嬉しい機能であろう。その他変更点としては以下のものがある。 StuffIt アーカイブ内を検索する機能がついた。対応する圧縮および解凍 のファイル形式が増えた。アップデートの通知を自動的に受け取るよう設 定できるようになった。抗ウイルスプログラムと組み合わせて利用すると 解凍後自動的にスキャンできる。破損したアーカイブを修復するオプショ ンが加わった。StuffIt Deluxe 6.0 が StuffIt 5.x と同じファイル形式 を利用するということも忘れてはならない大切なことだ。

<http://www.aladdinsys.com/deluxe/>

StuffIt Deluxe のアプリケーションは Mac OS X Public Beta に一部対 応しているが、残念ながら、Classic の Mac OS Finder に依存している 好評の機能は対象からはずれる。たとえば、Magic Menu、True Finder Integration、Aladdin StuffIt Browser、Archive Via Rename、 StuffItCM コンテクストメニューのサポートなどが利用できない。 StuffIt Deluxe の動作必要条件は、Mac OS 8.1 以降を搭載し、6 MB の 空きメモリがある、PowerPC 機となっている。StuffIt Deluxe 6.0 の価 格は 80 ドル。以前のバージョンの StuffIt 製品のオーナーは 30 ドル でアップグレードできる。また、2000 年 10 月 1 日以降に StuffIt Deluxe 5.5 を購入した方には無料となっている。

<http://www.aladdinsys.com/deluxe/osx.html>
<http://www.aladdinsys.com/deluxe/upgrade.html>

Aladdin 社はStuffIt Expander 6.0 も同時に発表した。こちらは、方々 で利用されている同社の無償解凍ユーティリテの最新版となる。.rar に 対応するなど、対応ファイル形式が増え(DropStuff with Expander Enhancer が搭載している StuffIt Engine に依存するものがなくなった)、 アップデートの通知を自動的に受け取ることができるよう指定でき、抗ウ イルスプログラムと組み合わせて使うことにより解凍後に自動的にスキャ ンできるようになったなどが変更点である。Aladdin 社によると、 StuffIt Expander 6.0 は Mac OS X Public Beta 対応になっているそう だ。StuffIt Deluxe 6.0 および DropStuff 6.0 は、StuffIt 5 ファイル 形式を踏襲しているので、StuffIt Expander 6.0 でなくとも、新しく作 成された StuffIt アーカイブを解凍することができる。StuffIt Expander のバージョンが 5.x でも、解凍には問題はないが、 ReturnReceipt のリクエストはテキストファイルでしか現れない。 StuffIt Expander 6.0 の使用必要条件は、Mac OS 8.1 以降の PowerPC 機となっており(古いシステムを利用している方は StuffIt Expander 5.5 を使い続けよう)、ダウンロードサイズは 2 MB である。

<http://www.aladdinsys.com/expander/expander_mac_login.html>

Aladdin は DropStuff 6.0 と DropZip 6.0 のリリースも一緒に行ってい る。これは、StuffIt アーカイブや Zip アーカイブを作成するスタンド アローンのドラッグ ドロップユーティリティである(価格は 30 ドル)。 Mac OS X Public Beta 対応になり、アップデータの自動通知オプション が付くなどの変更点がある。どちらも ReturnReceipt リクエストが付い たアーカイブを作成することはできないので、その必要がある方は StuffIt Deluxe を利用いただきたい。DropStuff の以前のバージョンか らのアップグレードは 15 ドルで(DropZip は、登録ユーザーには無償アッ プグレード)、どちらもダウンロードサイズが 3.6 MB のデモ版が用意さ れている。

<http://www.aladdinsys.com/dropstuff/macindex.html>
<http://www.aladdinsys.com/dropzip/macindex.html>


ConceptDraw コネクション

by Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :三好 泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :蒲生 竜哉 <gamo@lib.bekkoame.ne.jp>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

ダイヤグラムを描かなければならない日というのは、遅かれ早かれやって くる。組織体制や仕事の手順を図にすることなどから、とっくにダイヤグ ラムの大切さを知っているという方もいるだろう。だが私のように、ある 日突然何かの概念を構造的に示さなければならない、という事態に陥ると いうこともある。しかも大切なのは最終的な見栄えだけでなく、途中の思 考、創造、改変といったプロセス全体なのだ。理想をいえば、鉛筆や黒板 といったもののコンピュータ版で、しかももっと端正で、クリーンで、手 早く使えるものが必要なのだ。最初のアイデアを大まかに描くことが簡単 にでき、なおかつぐちゃぐちゃにすることなく改訂できなければならない。

これを Mac で実現するには? これまでに私が TidBITS で取り上げてきた プログラム、たとえば Inspiration、Canvas、あるいは Excel でさえ、 作図に使うことは 可能ではある 。だが、Computer Systems Odessa 社 の ConceptDraw は、ダイヤグラム作成に特化したものであり、使いやす く、オリジナリティにあふれ、しかも強力だ。

<http://www.conceptdraw.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06025>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05801>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04852>

ConceptDraw を理解するために、ドローイング、コネクション、それに “スマート”オブジェクトという 3 層の概念に順番に取り組んでいこう。 この 3 つは ConceptDraw を奥深く探求するにつれ、この順番で姿を現し てくるものだ。

ドローイング -- ConceptDraw を使い始めた時には、特にすごいもので はないと感じるだろう。ただのドローソフトに見えるからだ。確かに普通 のドローソフトにある機能は揃っている。Canvas や CorelDRAW などの洗 練された強力なインターフェースと比較すると、ConceptDraw はやや無骨 な印象を与えるかもしれないが、重要な基本機能で欠けているものはない。

線のパス、ベジェ曲線、それに円や楕円の部分を使って図を描くことがで きる。パスには線の色、太さ、点線、矢印などの属性を指定することが可 能だ。閉じられたパスなら塗りつぶし、パターン、影を指定することもで きる。個別のパス、またはパスをグループ化したものがオブジェクトにな る。複数のオブジェクトをグループ化することも可能だ。オブジェクトは リサイズ、反転、それに自由回転することができる。どのオブジェクトに も移動可能なテキストボックスが付属し、テキストにはスタイルを指定す ることができる。オブジェクトの整列や配分を指定したり、オブジェクト 間のスタイルをコピーする便利なツールもある。カーソルをグリッドや、 オブジェクトの外枠に沿わせることができ、オブジェクトをガイドライン に“張り付ける”ことも可能だ。文書に複数のレイヤー、複数のページを 作成することだってできる。

ドローソフトが苦手で、ConceptDraw を使っても図を描くことができない という人には確かにあまり役には立たないが、図が描けるからといってそ れで立派な図式ができるとは限らない。そのためには、点をつなぐ線が必 要なのだ。

コネクション -- ConceptDraw におけるすべてのオブジェクトは、普通 のオブジェクトかコネクタオブジェクトのどちらかに分類される。コネク タオブジェクトは、2 つの接続ポイント(両端に一つずつ)を持っている。 普通のオブジェクトは 4 つの接続ポイントを、外枠の四辺の中点に持って いる。加えて、接続ポイントは好きなだけ追加することが可能で、気が変 われば削除することも自由だ。

コネクタオブジェクトの 2 つある接続ポイントの一つをドラッグすると、 もう一方の接続ポイントはそのままの位置で、オブジェクトが伸びたり場 合によっては回転する。そうして、コネクタオブジェクトの接続ポイント を別のオブジェクトの接続ポイントまでドラッグしてマウスボタンを離す と、2 つの接続ポイントが連結される。ということは、第 2 のオブジェ クトをドラッグ、リサイズ、あるいは回転させると、コネクタオブジェク トの接続ポイントも移動して、もう一方の接続ポイントはそのまま動かな い。したがって、コネクタオブジェクトを介して普通のオブジェクトを連 結してある場合には、普通のオブジェクトを動かしてもリンクが保たれる ことになる。

ConceptDraw は普通の直線と魔法のように直角に折れ曲がる直線の 2 種 類のコネクタオブジェクトをデフォルトで供給している。しかし、これが 実に面白いところなのだが、 どんな オブジェクトでもコネクタオブジェ クトにすることができ、したがってコネクタにどんな外観を与えることも できるのだ。しかもどんなオブジェクト(コネクタオブジェクトも含む) にもテキストを付けることが可能なため、コネクタにラベルを付けること ができる。その上、オブジェクトの接続ポイントの位置を自由に指定でき るため、コネクタをきちんと正確に見えるようにすることができる。

以上から、ConceptDraw はダイヤグラム作成に特化していないドローソフ トと比較して、ダイヤグラムを好きなように作成してメンテするためのパ ワーを与えてくれるということができる。だが、これだけではない。 ConceptDraw のオブジェクトは“スマート”なのだ。

“スマート”なオブジェクト -- どんなドローソフトでも、個々のオブ ジェクトに対して、それを記述したりオブジェクトが描がれた表記を命令 したりする特定の内部データを持っている。つまり、オブジェクトの高さ、 幅、回転の角度、終点、そして、パスのセグメントすべてに関するパラメー タの定義、線の太さ、色づけ、テキストとそのスタイルに関する情報すべ て、等々。ConceptDraw というのは、私が知っているドローソフトのどれ とも違って、すべてのデータへダイレクトにアクセスできる。オブジェク トのどれかを選択し、コンテキストメニューから“Show Table”を実行す ると、新しいウィンドウが開く。このウィンドウというよりはむしろスプ レッドシートのようなもので、これはオブジェクトのデータである。

データはこのテーブルの中で修正し、描かれている表記にすぐ適用され確 認するとができる。このように、ユーザーはオブジェクトに対して正確な 数値でコントロールできるのである。しかし、このソフトの本当の力が発 揮されるのは、数値をそのまま入力する代わりに、一般的な計算式や数学 的関数または文字関数を入れて、計算結果の値を利用するときだ。このよ うな計算式には、このオブジェクトのテーブル内の他の値を利用できるし、 他のオブジェクトのテーブルの値も利用できるようになっている。このよ うに、ユーザーが一つのオブジェクト対して特別にカスタマイズされた動 作を付与することができるのである。

たとえば、通常ではオブジェクトを回転させると、テキストもいっしょに 回転する。しかし、回転させたくないテキストを含んでいるオブジェクト に対しては、“TextAngle”を“-Angle”に設定する(オブジェクトの回 転がテキストに対しては無効になる)。オブジェクトの幅を常に“ObjID1” と名付けられたオブジェクトと同じ幅にするためには、その“Width”を “ObjID1”と設定すればよい。また、オブジェクトのテキストを常にオブ ジェクトの高さに指定しておくためには、“TheText”を “ValToText(Height)”に設定すればよい。さらに、オブジェクトには、 カスタマイズしたコンテキストメニューを持たせることもでき、このメ ニューの項目からオブジェクトの値を操作できるようになっている。

このような数式でオブジェクトの詳細を指定する機能について考えると、 畏敬の感情を抱くかもしれない。これは、有名な木版画に描かれた、無限 の宇宙のかなたを見るために自分の頭を夜空に向かって突き出している学 者のようなものである。そして、高校時代に三角法についてあまり注意を はらわなかったことを後悔するかもしれない。たとえば、わたしは、回転 させても常に垂線を持つ平行四辺形という意味での長方形を作ることがで きた。しかし、これを作るのにコーヒーを 4 杯も飲むはめになるほど時 間がかかってしまい、わたしは、その後、横にならずにはいられなかった。

[Kerry Magruder 氏は、ハイパーカードベースのメモ帳ソフト HyperNote の著者の一人であり、Matt が上記で述べているイメージについての興味 深い入り組んだ歴史を研究している人物である。読む価値は十分ある。 -Geoff]

<http://www.earthvisions.net/flat_earth.htm>

お気に入りプロジェクト-- ConceptDraw にはすぐにダイアログに組み 込むことのできる、自動化されたオブジェクトやコネクタのライブラリが 満載されている。オブジェクト指向の構造体や情報モデルを組み立てるた めの Booch、UML、あるいは Express-G(心配ご無用、何しろ私もこれら が何なのかということは全く知らない)などのライブラリ、フローチャー トやデータフロー作成用ライブラリ、データベース設計、ネットワーク描 画、Web ページのページ間連携の解説、室内レイアウト設計、回路設計、 テクニカル・ドローイング、組織図作りやプロジェクト設計用ライブラリ などなど、さらにはクリップ・アートやシンボル、地図記号のライブラリ まで用意されている。

また、自分のために新しくライブラリをおこすことも可能だ。もちろん私 がこれに挑戦しない訳がない、私のお気に入りプロジェクトであるセンテ ンス・ダイアグラム用ライブラリを作ってみることにした(昔からの読者 の方はきっと高校の頃にならったセンテンス・ダイアグラムのことを思い 出されたことだろう。元国語教師として、私はいまでもそれを使っている のだ)。結果はそれはすばらしいものだった。数日間の設計と試作の後、 私はセンテンス・ダイアグラム作成を恐ろしく簡単にする小さなライブラ リを作りあげた。個々の単語は“賢い”オブジェクトとしてふるまい、線 の長さは文章の長さと同一になるように、連結点は空白が均一になるよう に自動的に調整される。また、水平方向の単語は主語・述語あるいは目的 語・補語などを表示するコネクター・オブジェクトによって接続される。 斜体文字で表示される修飾語は“コントロール・ポイント” --- これは複 雑すぎてここではとても説明できない --- と呼ばれる接続点によって水 平方向の単語に“糊付け”される。私の最大の成果は right-angle と名 付けた、修飾語(たとえば、“とても人間的”とか)をもう一つの修飾語 に接続 するコネクターだ。これは自動化されたコネクター・オブジェク トで、コネクション・ポイントが移動してもその角度と向きを維持してく れる。

もし私がここで話していることを知りたければ、私の作ったセンテンス・ ダイアグラムのうちの 2 つを以下の Web ページに掲載したので参照して 欲しい。しかし、ここから学べることは少ないかも知れない。なぜなら、 重要なのは作られたダイアグラムではなくて、そのダイアグラムが作成さ れた過程だからだ。一度ライブラリが作られれば極めて迅速かつ簡単に ダイアログを作ることができるということについては、結局は私の言うこ とを信じてもらうしかない。

<http://www.tidbits.com/resources/553/sentences.html>

欲しいものリスト--ConceptDraw はまだ新しいプログラムであり、頻繁 にアップデートされている。また、まだ十分に成熟していない、時にはまっ たく完成されていないとすら感じられることがある。ConceptDraw のステー タスバーは画面下方に、無数のパレットは画面上方に配置されており、 まるで Windows のようにスクリーンを使う。またユーザーインターフェー スは奇妙ですらある。多くの基本的な機能がパレットボタンからしか使え ないし(同じ機能がメニューに存在しない)、他の機能はダイアログの奥 深くに隠されている。もし間違えて記述式を入力してしまったら、あなた は今まで見た中でも最も助けにならないエラーメッセージを見る羽目にな るだろう。このプログラムは Mac の文化としては異質の慣習を取り入れ ており、さらに多くの機能にはマニュアルにしか記述されていない“秘密 の”キーボードシーケンスが用いられている。

マニュアルは良質の HTML と手順を説明するためのアニメーション GIF によって書かれているのだが、説明文はくどすぎるか簡単過ぎるかの両極 端で、直感的ではなかったり説明が不足したりしている上マニュアルに間 違いがあるためユーザーの混乱は深まるばかりだ。本当に必要なものは チュートリアルとライブラリのガイドなのだが、こうした内容がマニュア ルから全く欠落している。また、英語を母国語とする人を誰か雇ってマ ニュアルやプログラムそのものに蔓延する単語の綴り間違いや文法の間違 いを直す必要がある。

ConceptDraw は時折クラッシュする。特に何か ConceptDraw が好きじゃ ないものをペーストしようとした時にクラッシュすることが多いようだ。 そういう訳で、セーブは頻繁に行った方が良い。通常の方法では終了でき なかったため、ConceptDraw を強制終了しなければならなくなったことも 何度かあった。特定のライブラリを開く等、一部のオペレーションは動作 が非常に遅い。最初の版では印刷にも不具合があったが(文字を回転させ ると画面の上ではちゃんとしているのに、印刷すると回転していない状態 で印刷されてしまう)、これはこのソフトの開発者たちがこの問題を解決 したベータ版を後に送ってくれた。また、保存した ConceptDraw 書類を 開いた時、上位アスキー文字が文字化けしてしまうのにははなはだ驚かさ れた(例えば、Option-P はクエスチョンマークになってしまう)。この 問題を回避する設定を開発者たちは教えてくれたし、またこれはクロスプ ラットフォーム開発にまつわる問題だと説明もしてくれたが、しかし、作 成したファイルを一度閉じてまた開けるだけで文字が化けてしまうのはや はり問題だと私は思う。

最後に ConceptDraw のスマート・オブジェクトを作ってみた感想を述べ ておきたい。私はこれはもっと賢くなっても良いと思う。もし記述言語が もっとプログラム言語に近くて、もっといろいろな概念を記述できれば (たとえば、“このオブジェクトに連結されているすべてのオブジェクト” とか)、より強力な効果が期待できる。次回以降の版でこれが実現される ことを期待しよう。

終点 -- 信じがたいかもしれないが、これでも ConceptDraw について 触れていない点が多々あるのである。オブジェクトの動きをカスタマイズ するのに他のやり方もある、たとえば、どの特性を(例、回転)ロックす るのか、ダブルクリックした時そのオブジェクトは何をするのか、あるい はそのグループはいつリサイズするのか等である。オブジェクトはリンク を含むことができ、他のドキュメント、同じドキュメント内のほかのペー ジ、あるいは Web URL をすら開くようにすることもできる。そして、 ConceptDraw はクロスプラットフォームである;Windows バージョンは OLE 埋め込みとリンキングを行い、Visio(最大の競争相手であり、現在 は Microsoft 社が所有している)からファイルインポートのためのコン バータすら用意している。

<http://www.microsoft.com/office/visio/>

ConceptDraw は私の気に入っている 2 つのことをしてくれる。第一に、 ダイアグラムを描くのを手助けしてくれる、これは基本的にこれまで私の Mac に欠けていたものである。第 2 に、自らの力をユーザーに開放して いることである、そのオブジェクトをデータテーブルの形でさらけ出し、 数式を用いてカストマイズできるようにしている - そして私はこれを可 能にするプログラム作りに完全にはまっている。もちろん欠点もあるが、 それはまた開発途上にもあるので、将来の改良に期待して欲しい。それは さておき、あなたが何らかのダイアグラムを描いているか、あるいはそう することもあるかもしれないと思う理由があるのであれば、今こそこの目 を見張らせるプログラムを検討してみる絶好の時である。

ConceptDraw 1.55 は PowerPC ベースのマシンで Mac OS 8 かそれ以降を 必要とする。約 30 MB のハードディスクスペースを占有し 30 MB の RAM 割当が望ましい。ConceptDraw の値段は 160 ドル(箱入) か 125 ドル (ダウンロード版、今だと 98 ドルへのディスカウント付き)であり、ま たデモ版もダウンロードで入手できる。

<http://www.conceptdraw.com/purchase/>
<http://www.conceptdraw.com/resources/suppdownl.html>


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