Thoughtful, detailed coverage of everything Apple for 30 years
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#1541: Thanksgiving 休刊、5G を理解する、iPhone 12 mini と Pro Max レビュー、Big Sur アップデートバッジを隠す、iOS 14.2.1、App Store 手数料率引き下げ

ここ米国では Thanksgiving (感謝祭) のホリデーなので、私たちも TidBITS の電子メール号を休刊にさせて頂き、この機会に自らがいかに恵まれているかを数え上げつつ、大変だった 2020 年からの回復の道を探ろうと思う。次回の電子メール号は 2020 年 12 月 7 日の発行となる。さて、Apple は先週 iOS 14.2.1 をリリースして iPhone 12 での 3 件のバグを修正し、また App Store の手数料率を小規模開発者に対し半額に引き下げて論議を巻き起こした。macOS 11 Big Sur が登場したが、まだ今すぐはアップデートしないという人たちのために、うるさくアップデートを促すバッジを隠す方法を Adam Engst が説明する。それから今週号の特集記事として、Josh Centers が iPhone 12 mini と iPhone 12 Pro Max のレビュー記事をまとめて紹介し、Glenn Fleishman が 5G とは何か、どのように働くのか、将来にはなぜ重要になるのかを詳しく解説する。私たちはまだ号に収まりきらないほどたくさんのアプリのリリースのお知らせに追い付こうとしている最中で、今週注目すべき Mac アプリのリリースのお知らせは Mailplane 4.3、Agenda 11.2、URL Manager Pro 5.5、CleanMyMac X 4.7、Transmit 5.7、SEE Finance 2.2、Safari 14.0.1、セキュリティアップデート 2020-006 (Mojave と High Sierra)、Hazel 5.0、Nisus Writer Pro 3.2 と Nisus Writer Express 4.2、Firefox 83、Pixelmator Pro 2.0、Zoom 5.4.3、1Password 7.7、それに DEVONthink 3.6 だ。

Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

30 November 2020 は TidBITS 休刊

今週の木曜日は米国では Thanksgiving (感謝祭) の休日なので、30 November 2020 には電子メール号を休刊にして、私たちスタッフや寄稿編集者の面々も家族や友人とともに食卓を囲んで、少なくとも、食事と我々の直近の家族と、一週間を過ごしたいと思う。

2020 年は、控えめに言っても、大変な年であった。百万人を超す人が COVID-19 パンデミックのために亡くなり、その内 250,000 人以上が我が同胞の米国人であった。数え切れない程多くの人が今病んでおり、重症の人もいる。そして、最初の感染から回復した多くの人ですら、長引く後遺症に苦しんでいる。また、このパンデミックは経済も打ちひしぎ、企業を破産に追い込み、そして多くの失業者を生んだ。

今年身近な人を亡くした人に対して、我々は食卓に集まった時、皆さんのためにお祈りする。我々は、可能である時にはいつでも、天の恵みをかみしめる積もりだ。そして、皆さんにも、同じ事を試すようお勧めする。今年の冬は暗いかも知れないが、春は必ずやってくる。望むらくは、安全で効果的なワクチンの広範囲な配布と共に!

その間、このホリデーシーズンはどうか家に居て欲しい。出掛けなければならないなら、マスクをし、手を頻繁に洗うか消毒して欲しい。我々は我々の読者を愛しており、皆さんと一緒にこの先何年も過ごしたい。

Take Control of Thanksgiving Dinner cover

今年、我々は遠い親戚には会えないであろうが、食事には安らぎがある。我々は再度、ディナーの準備で Joe Kissell の Take Control of Thanksgiving Dinner からの便利な作業シートに頼る積もりだ - 何を用意すべきかを Joe ほどうまく、分かりやすくレイアウトしてまとめられる人は他にいないので、助言が欲しい方はどうぞ彼の本をご一読あれ。

来週の TidBITS 電子メール号は休刊にさせて頂くが、その間も TidBITS ウェブサイト.への出版はいつも通り続ける。私たちのサイトを時々チェックするか、RSS feed を購読するか - TidBITS 会員になればフルテキストのフィードを受けられる - Apple News で、または Twitter でフォローするかして、私たちの最新の記事を読めるようにして頂ければと思う。次回の電子メール号は 7 December 2020 の発行となる。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

iOS 14.2.1、iPhone 12 ユーザーのために3件のバグを修正

iOS 14.2.1 release notes

Apple が iPhone 12 シリーズの iPhone 12 mini、iPhone 12、iPhone 12 Pro、および iPhone 12 Pro Max 専用に iOS 14.2.1 をリリースした。それ以前の iPhone を使っている人はわざわざ Settings > Software Update をチェックする必要もない。このアップデートは iPhone 12 Pro 上で 1.1 GB というサイズで、別の方法として Mac から Finder を通じて、また macOS 10.14 Mojave かそれ以前では iTunes を使ってもインストールできる。

この iOS 14.2.1 アップデートは iPhone 12 のみで発生していた少数の問題を修正する:

このアップデートには CVE の公開エントリはない。

iOS 14.2.1 は具体的な問題に対処しただけのものなので、iPhone 12 のいずれかのモデルを持っている人はおそらく直ちにインストールしても問題ないだろう。テキストメッセージも補聴器も使わず、かつ iPhone 12 mini を持っていなければ、念のために数日待ってからにしても構わないが、長いこと遠ざけておくべきものでもないだろう。

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Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

Apple、小規模開発者に対して App Store 手数料を 15% に下げる

ますます増大する批判と政府規制の脅し、更に COVID-19 パンデミックからの経済的圧力に対応して、Apple は App Store Small Business Program を発表した。これは、年間 $1 million かそれ以下を稼ぐ開発者に対して App Store 手数料を 30% から 15% に引き下げるものである。このプログラムは 1 January 2021 から実施される予定だ。

Apple は、更なる詳細は 12 月に発表すると言っているが、現時点で、開発者達が知るべき事を挙げると:

分析会社 Sensor Tower からの試算によれば、この変更は 98% の開発者の利益になるが、App Store の売上げに対する影響はたったの 5% に留まる。(しかしながら、開発者 David Barnard は Sensor Tower のデータを鵜呑みにしないよう言っている。)

Apple が小規模開発者に対してその様な恩恵を与えることを受けて、Apple に対して批判的なより大きな会社は、Epic Games や Spotify の様な、大喜びするであろうと思われるかも知れない。と言うのも、彼らはしばしば、彼らはその様な小規模開発者のために Apple と闘っているのだと言ってきたからである。しかし - びっくり! - 彼は幸せではないのだ。

Epic Games は、その大ヒットゲーム Fortnite に対するゲーム内通貨を App Store 支払いを避けて買える方法を iOS バージョンに忍び込ませようとした後、何ヶ月間も Apple との戦いを続けている。Apple は直ちにそのアプリを禁止し、訴訟合戦に至っている。Epic CEO Tim Sweeney は、Apple の新しいプログラムに対してこう言っている

もしこれが Apple によるアプリ作成者を分断しそしてストアや支払いに対する彼らの独占を守るという計算された動きでなければ、これは祝うべき事であったであろう。開発者全てを平等に扱うと言う約束を再び破っている。

Epic の目標は、Apple に対する訴訟に書かれている様に、App Store にあるアプリを単にサイドローディング (バイパス) させる事ではなく、Apple によって App Store 内で配布されるべく、競合するアプリストアが、Epic Games ストアの様な、許されることである。

Spotify もまた、Epic とは Coalition for App Fairness におけるパートナーだが、声明をリリースしている:

Apple の反競争的な振る舞いは iOS 上の全ての開発者を脅かしており、そしてこの最新の動きは更に、彼らの App Store 規則は恣意的でありそして気まぐれである事を証明している。Apple の App Store への独自の支払いシステムを試し、それを使わない選択をした開発者を罰するため使う通信規制は、彼ら独自の競合するサービスに対して Spotify の様なアプリを圧倒的に不利なものにしている。市場が競争力を保つよう保証する事は重要なことである。我々は、規制者が Apple の 'ショーウィンドウの飾り付け' を無視し、そして消費者の選択を守り、適正競争を保証し、そして全てに対して公平な競争の場を作り上げるために、緊急に行動を起こすことを望む。

これらの反対にも拘わらず、独立の開発車は喜んでいる。

もしあなたの論調が、年間 $1m 以上売り上げる会社は 15% を払い、残りの我々の様な独立開発者は 30% 払うべきだというのであれば、我々が仲間でいるのは難しいと思う。

この動きは、常にこのコミュニティの中心であったより小さな開発者に対する状況を大幅に改善する。

- James Thomson (@jamesthomson) November 18, 2020

Apple がその手数料を 15% に減らす事は、私の様な小規模事業者や開発者に対して大きな違いをもたらし、そして、業界と他のプラットフォームに亘って波及効果をもたらす可能性を持つ。今年のこれ迄の状況を考えれば、もっと早く来ても良かった善意の意思表示である

— Steve Troughton-Smith (@stroughtonsmith) November 18, 2020

私は、この COVID 不景気で、売上げの約 30% を失った。この会計年度は気がおかしくなる程大変であった。この 15% の増加に、私はほぼ涙してしまった。

— Frank A. Krueger (@praeclarum) November 18, 2020

ありがとう @Apple、これは独立開発者を支援する偉大な一歩だ。課題は一杯あるが、耳を傾けてくれてありがとう。https://t.co/KlqU8PbClG

— Jared Sinclair (@jaredsinclair) November 18, 2020

これが Apple 側での PR の動きなのかどうかはさておき、開発者にとっては実際に入ってくる本物のお金を意味する。David Barnard は、手数料が 15% であれば、これ迄の 12 年間で追加の $380,000、年平均で $31,000 以上を手に出来たはずであると試算している。それは実際の人間にとっては大きな違いである。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple の Big Sur アップグレードバッジを隠す

コンピュータのテクノロジーを利用することの中に暗黙のうちに含まれているのは、それが必ず変化するという事実だ。あなたも、その流れについて行かなければならない。(2015 年 9 月 4 日の記事“何故アップグレードすべきか (自らの基準で)">”参照。) とりわけ Apple の世界ではそのことが年々真実となる。Apple が絶えずユーザーに働きかけてさまざまの方法でアップグレードを促すからだ。その中には技術的に正当化されるものもある。Reminders のようなシステムで永遠に後方互換性を保証しようとすればあらゆる前進を諦めざるを得なくなり、Apple にそれを望むのは理不尽なことだ。また、本当に不可欠のものもある。少なくとも2つの macOS リリースの範囲内に Apple から後れないでいないと、それ以後のリリースでは修正済みの重大なセキュリティ脆弱性にあなたの Mac が晒されてしまいかねないからだ。

バッジって?

Badged System Preferences icon in the Dock

けれども、Apple がアップデートを促す方法のうちいくつかは、最新バージョンの macOS を走らせていない Mac を使っている際に少々不快感を与えるものになることがある。中でも一番目立つのは、Dock 上にある System Preferences アイコンに Apple がバッジを付けて macOS のアップデートが利用できることを示すやり方だ。

表面的には、それは理不尽なことではない。Apple はユーザーに対して、新しいバージョンの macOS がリリースされていることを知らせるべきだ。これとは別に、Apple は通知も出す。こちらもやはり、あまりにも頻繁に出るのでさえなければ異議を申し立てるべき筋合いのものではない。

でも残念ながら、Apple はこの System Preferences アイコンのバッジを消す方法を一切提供していないので、アップデートがあるよということをユーザーに絶えず知らせ続ける結果となる。問題なのは、それが結果としてユーザーにバッジを無視してもよいと教育することになってしまうからだ。そうなれば将来、重要なセキュリティアップデートをユーザーがインストールしなくなってしまうかもしれない。それにこれは、その見栄えが気を散らすものでもある。macOS のインターフェイスは、ユーザーが不要と見なした情報によって乱雑になるべきではない。

過去には softwareupdate -ignore というコマンドが存在していて、これを Terminal で使えばバッジを消すことができた。けれども Apple はこのオプションを MDM ソリューションの管理下にある Mac 以外では使えないようにしてしまった。つまり、団体の IT 管理者がその団体のツールがまだ新バージョンの macOS と互換でないと判断した場合にはユーザーたちのためにバッジを消すことができるけれども、他の一般の Mac ユーザーたちはその技が使えないということだ。

macOS 11 Big Sur では、Apple はどうやらこの方針をさらにもう一歩進めたと見える。App Store アプリの Updates 画面で大多数の Mac ユーザーは GarageBand 10.4.1 へのアップデートを促されるのだが、まだ Big Sur にアップグレードしていない人がそれに応じて GarageBand をアップデートしようとすると、このアップデートは過去のバージョンの macOS とは互換でないという警告が出て唖然とさせられる。

GarageBand update error in App Store

当初、私はこれが単なるミスだと思った。SlackBITS でやり取りしている一人の TidBITS 読者が、Apple サポート担当に電話してみたところこれはパッケージの欠陥で近々修正されるという返事を得たと言っていたからだ。でも、Apple のメジャーな生産性アプリがいろいろある中で、Big Sur に限定されるのが GarageBand のみだというのはほとんど意味を成さない。(他の大多数は最近アップデートされていて、前のバージョンの macOS でもまだ動作している。)

それでもなお、Apple の GarageBand ページにも GarageBand の App Store ページにも、Big Sur が必要とはっきり書いてある。だから、ここに何か誤りがあるとすれば、それは GarageBand の実際のコードの中と、Apple がアプリをマーケティングするやり方の中にあるのであって、アプリを配布する方法に誤りがあったのではなかった。

GarageBand system requirements revealed

GarageBand system requirements note in App Store listing

現実的な結論を言えば、私たちも、また多くの Apple コンサルタントや管理者たちも口を揃えてお勧めしているように Big Sur にまだアップグレードしないでいる場合、App Store アプリの Dock アイコンにバッジがずっと出たままになるということだ。加えて、Update All をクリックするといつまでも GarageBand は Big Sur を必要としますというエラーメッセージを見なければならず、それが嫌なら Mac から GarageBand を削除しなければならない。

Apple のやり方としては、相当に手抜きの挙動と言わざるを得ない。日常的な Mac ユーザーにも softwareupdate -ignore コマンドを復活させるべきだと思うし、App Store アプリはその Mac に適したアップデートだけを信頼性を持って告げるべきだ。兎にも角にも、Mac にインストールできないアプリのアップデートを宣伝することなどあってはならない。また、以前は App Store アプリの中で特定のアプリについてアップデートを無視できた のに、ここ数年間のどこかの時点でそのオプションが消滅してしまった。

どえらいバッジなんかいらんぜよ!

1948 年の映画 The Treasure of Sierra Madre有名なセリフを真似して言えば、ここは "We don’t need no stinkin’ badges!" (どえらいバッジなんかいらんぜよ!) と叫びたいところだ。

個人的には、私はバッジを見てもそれほど苦にはならないのだが、ひどく気にする人たちもいるので、ここに3種類の解決策を提案させていただこう:

最後の2つの方法で作ったアイコンを加えると、Dock はこんな見栄えになる。

Dock showing different solutions for avoiding badges
System Preferences と App Store それぞれについて左から右へ順に: オリジナルのアイコン、エイリアス、Automator アプリ

残念ながら、現時点ではいかなる通知も、App Store 内のエラーメッセージも、Apple メニュー上の小さなあめ玉表示も、System Preferences 内の Software Update 環境設定枠に表示されるバッジも、いずれも取り除く方法はない。困ったことだ。是非とも Apple には、macOS アップデートと App Store アップデートの双方ともに無視できるオプションをユーザーの手に戻してもらいたいと願っている。

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Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

iPhone 12 Mini と iPhone 12 Pro Max:レビュー記事総まとめ

ラウンド2の準備は良いですか? 我々は、執筆禁止の制約が外れた後、iPhone 12 と iPhone 12 Pro のレビュー記事を "iPhone 12 と iPhone 12 Pro: レビュー記事総まとめ" (23 October 2020) にまとめた。今や、同様の記事が iPhone 12 mini と iPhone 12 Pro Max に対しても現れ始めた。もし未だであれば以前の記事を熟読されることを強くお勧めする。何故ならば、ここでは iPhone 12 ラインナップの基本的な機能について再度取り上げることはしないからである。

iPhone 12 mini と iPhone 12 Pro Max は対局の位置関係にある。前者はここ数年で最も小さい iPhone であり、後者は余りに大きく手で持つのも大変だとか多くのポケットに収まらないとする人達もいる。iPhone 12 を同じ大きさの iPhone 12 Pro から特徴的に際立たせるのは結構微妙であったが、iPhone 12 mini と iPhone 12 Pro Max のどちらを買うかを決めるのは遙かに易しい:

これらが基本事項である。評価者達が言っていることを見てみよう。そして、最後に、iPhone の購入決定を再考してみよう。

iPhone 12 mini レビュー

iPhone 12 mini はその大きな兄よりも $100 安いが、その機能セットは、電池寿命を除いて、同じである。Tom's Guide でのレビューで、Adam Ismail は言う:

廉価版プレミアムスマートフォンでは多少の経済設計はしょうがないと思われるかも知れないが、iPhone 12 mini にはそんな点は全く見あたらない。我々の iPhone 12 mini レビューにある様に、電池寿命に対する避けがたき犠牲を除けば、これはあらゆる点であなたが欲しがる iPhone である。しかももっと安い値段で。

Ismail 付け加える:

iPhone 12 mini は、まさに、より多くの電話メーカーが信念に基づいて作って欲しい類いの機器である。ある意味で、これは iPhone 12 ランナップの中において実際に 最も印象的な一員である。何故ならば、それはより大きな、そしてより高価なモデルがする事全てをするが、驚異的にその能力全てを [ありそうにない] 小さなフレームに詰め込んでいる。

TechCrunch の Matthew Panzarino も同じ感想を持っている:

iPhone 12 mini には機能的に iPhone 12 に劣る所は何もなく、私はこれら二つは二つの画面サイズを持つ一つの機器と見做したい。

Daring Fireball の John Gruber もファンである:

しかし、価値、つまりコスパについて語れば、iPhone 12 Mini は突出している。かつて技術の小型化は割り増し費用を意味する時代があった。より小型の携帯電話は、大型のものよりも高かった。全く同じ品質の画像を捉えるより小型のカメラは大型のものよりも高かった。iPhone 12 Mini の値段が iPhone 12 よりも $100 も安いと言うことは、うますぎる話のようにすら感じる。

では、弱点はないのか? 一つ挙げれば、小さな画面は皆さんが覚えている程には楽しくないかもしれない。

Ismail は言う:

これ程小さい機器と画面だと、対処するやり方を最初から学び直さなければならないかも知れない;例を挙げると、私は、タイプする時に両親指が良くぶつかり合うと感じた。

とは言え、殆どの評価者は小さいサイズの復活を賞賛している。The Verge の Dieter Bohn は 言う:

iPhone 12 mini は、目標は違うが久々の初代 iPhone の様に感じる。それは人間の手と本当のポケットを考えて設計された。

しかし、小型である事には不利な点が一つある:電池が小さくなることで、iPhone 12 ですら既に前の機種よりも電池寿命は短くなっている。Bohn は言う:

私はそれについてうわべをよく見せようとも、過度に悲観的になったりする積もりはないが、iPhone 12 mini の電池寿命は iPhone 12 よりも目に見えて悪い、iPhone 12 ですら電池寿命の王者であった iPhone 11 からは一歩後退であったのに... 従って、悪くはないが、とても素晴らしいとは言えない。未だ一週間には満たない私の使用感触から言えば、一日持たせようとするには、電池のことも多少気にしながら使う必要がある。

それにも拘わらず、彼は iPhone 12 mini をこのラインナップの中の彼のお気に入りだと公言している。

Gruber は言う:

ええ、私は Mini の電池寿命は 12 や 12 Pro (そして1年間使った 11 Pro、そしてその1年前に使った XS) よりも悪いことは認識している。しかし、私はその理由から購入をためらうことは一瞬たりともないであろう。Mini の電池寿命は、最悪でも、十分である。誰も、最長の電池寿命を期待して一番小さい iPhone を買うことはしないであろう。

Panzarino は、iPhone 12 のレビューと同様、他の評価者達よりも少々優しかった:

Apple は、iPhone 12 mini の電池寿命は 4.7 inch iPhone SE よりも良いと言っており、そしてそれは私のテストでも実証された。私は一日を十分にまかなえたし、 iPhone 12 mini と iPhone 12 との間の差は数パーセントポイントに過ぎなかった。

ビデオレビューでは、Marques Brownlee は、iPhone 12 と iPhone 12 mini の間の大きさの違いに焦点を当てていた

そして、Rene Ritchie は Star Wars ファンに対して、それを Baby Yoda フォンだと呼んで売り込んでいた。

iPhone 12 Pro Max レビュー

iPhone 12 Pro Max についての大きな話題:それは巨大である。iPhone 12 Pro に対して iPhone 12 Pro Max を選ばない唯一の本当の理由はその大きさである。

Wired の Julian Chokkattu は言う:

これは巨大であると私は言いましたよね? 名前の 'Max' は実際には十分に表現していない。去年の Max に比べ、それ程大幅ではないが、背はより高く、幅もより広く、そしてより重い。驚くべき事だが、厚さはより薄い。

The Verge で、Nilay Patel は言う:

私は、注文する前に、自ら 12 Pro Max の大きさを **安全を確保しながら** 体験出来る方法を見つけ出すことを強くお勧めする。

しかし、その大きさを扱えるのであれば、iPhone 12 Pro よりも遙かに良いカメラというご褒美を手に出来る。何故ならば、Apple は今年 iPhone 12 Pro Max により大きなレンズを搭載したからである。Gruber は彼のレビューで言う:

Apple の製品紹介写真、そしてこれが実生活ではどの様に感じるかをうまく強調した写真を私は撮影出来ないが、12 Pro Max カメラモジュール - 背面カメラ、フラッシュ、そして lidar センサーを含んだ一段高くなった四角形 - は、他の iPhone 12 上のカメラモジュールよりもずっと大きな表面積を持つ。これ迄の2年間は、XS Max と 11 Pro Max カメラシステムは、XS と 11 Pro 上のものと仕様上同一だっただけでなく、大きさも同じであった。

これにより、新しい安定化システムが可能になり、夜間撮影も良くなる。Wired の Chokkattu は説明する:

レンズを固定化する代わりに (それが光学画像安定化がすること)、Apple のシステムはセンサーを電話のケース内深くに固定させて保持する。これにより、Pro Max は、写真撮ったりビデオ撮影したりする時に不可避の手の小さな動きを打ち消すのが上手い。これは画像品質に好影響を与える。とりわけ、きれいな写真を撮るために数秒間に亘ってじっとしていなければならない低照度下では、そうである。

しかしながら、Chokkattu は、より大きなレンズが有用なのは夜間だけでしかないことを警告している:

太陽が出ている間に、iPhone 12 Pro でより大型のセンサーの特典を見定めるのはそう容易なことではない。日中に撮った写真でがっかりさせられる物はそう多くない。

Patel はカメラについて褒めちぎる:

結論は簡単である: iPhone 12 Pro Max の広角カメラは、私がこれ迄使ったことのある最も信頼置けるスマートフォンカメラの一つである。実に多様な場面で素晴らしい写真が撮れ、そして、その限界を感じさせられることはまずない。

Panzarino も同様である:

それは巨大だが、真に、真に良いカメラを搭載している。恐らく、スマートフォンではこれ迄で最善のカメラの一つ、一番ではないとしても、であろう。iPhone "Max" や "Plus" モデルを経験して来ている人に対しては、これは考えるまでもない。買えば良い、それは素晴らしい。そこには、Apple が今年盛り込みたいもの全てが入っており、おまけに iPhone 11 Pro Max よりもほんの少々だが薄い。

そして、勿論のこと、より大きな電話が意味するものは、より大きな電池が搭載出来る事である。Chokkattu は言う:

大きな電話はまた大きな電池を意味し、そしてここでの良い知らせは電池寿命は素晴らしい事である。5時間以上画面がオンの状態で使った後、11 pm に未だ 45% の充電が残っているというのは別に珍しいことではなかった。

ビデオ側では、Wall Street Journal の Joanna Stern は、iPhone 12 と 12 Pro Max のカメラ間の違いに焦点を当てている。

Rene Ritchie の "mega review" には、色々なものが少しずつあり、大きさとカメラの比較も含まれる。

そして、Marques Brownlee のレビューも見る価値がある。彼の賢い Photoshop 入門だけでも価値がある。

どの iPhone を選ぶか

iPhone 12 が発表された時、Adam Engst はアップグレード判断に関する我々の考え方をおさらいした ("iPhone 12 登場: あなたが知っているべきことは" 13 October 2020 参照)。しかし、更に時間がたち、そして評価者達もこれらの iPhone での経験もしたので、未だ決めかねている人達のために、もう一度見てみよう:

ある意味で、選ぶのが最も難しい iPhone は iPhone 12 Pro である。望遠レンズを除けば iPhone 12 はそれがやることの殆どをやるし、iPhone 12 Pro Max はもっと良いカメラを持っている。では、それはどんな人に向くのか?

私が今年新しい iPhone を買うとしたら、二つの理由から、恐らく iPhone 12 Pro であろう。一つは、iPhone X で望遠レンズをポケットの中に持つことに嵌まってしまった事である。子供達の写真を撮ったり、記事のためのスナップ写真を撮ったりする時、望遠と広角レンズの間で多くの選択肢を持てる。

もう一つは、その中道の iPhone の大きさである。私は、Plus サイズの iPhone が好きであったが、ポケットから引っ張り出すのが大変、ケース無しでも、だった。二人の幼児を持つ身として、私の iPhone は頑丈な Otterbox ケースに入れて保護する必要があるので、もし iPhone 12 Pro Max を買うとしたら、私はそれをベルトに取り付ける形で持ち運ぶ必要があるであろう。iPhone 12 Pro のフォームファクターは、余り扱いにくい大きさにならない一方で十分な画面スペースを与えてくれる。

皆さんは如何ですか? 新しい iPhone を買ったばかり、或いは、来年 iPhone 13 が出る前に一つ買おうと思っているのであれば、どのモデルを選びますか? あなたの投票を我々の一問調査に投じ、そしてその理由をコメントを通して知らせて欲しい。

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Glenn Fleishman  訳: Mark Nagata   

5G とは何か、なぜこれがモバイルコミュニケーションの (現在でなく) 未来なのか

私たちの日々の生活に、いったいどれだけのバンド幅が必要だろうか? 高速道路をドライブしながら毎秒 60 フレームの 4K ビデオをストリームできる必要があるのか? 例えば自動運転車のような新しいデバイスとリアルタイムのフィーリングでやり取りできるために、スマートフォンとの行き来のやり取りにはどれほどの素早さが必要なのか? 高速データにほとんどアクセスできない人たちが何億人といる世界の中で、毎秒何ギガビットという規格が本当に意味を持つものだろうか?

そうした疑問こそ、セルラーデータネットワークが成熟の度を増すにつれて私たちが問うべきことだ。Apple は iPhone 12 を発表した最近のイベントの中で、5G に対して「iPhone 発表の場に Cingular の Stan Sigman を伴う」レベルの時間と注目を費やし、業界の多くの人たちは今もなおあれはなぜだったのかという当惑の気持ちでいる。Apple は通常、マーケティングの視点を喋り散らかしたり、Apple あるいはその顧客にとって直ちに有用とは言えない事柄について他の会社の人物にダラダラ長話をさせたりしないものだからだ。

第5世代 (5G) セルラーネットワークは、既に米国各地で、またいくつかの他の国でも、ある程度の展開を果たしているし、それ以外の多くの国々も国家的目標として基盤構造を構築するために躍起になって私企業の後押しをしている。いずれは、スマートフォン、タブレット、固定デバイス、その他の機器がすべて毎秒数百メガビットから毎秒数ギガビットという速度でデータをやり取りすることになるだろう。現在開発途上国にあるブロードバンドのインターネット接続の圧倒的大多数に比べて桁違いに速いものであることを考えれば、それは物凄いことだ。

5G がやって来ることは必然だし、4G より「たった1つ上がっただけ」と言うのは冗談でしかないが、実はある程度それは真実だ。インターネットを念頭に置いたセルラーネットワークの最初のものは 3G であったし、4G や 5G はそれらの原理の上に構築されている。それなのに 5G は“次なる目玉”であって日々の生活とビジネスに大きな変革をもたらすものとして宣伝されている。

現行世代の 5G 対応デバイスで (単に高速版の 4G に "5GE" のラベルを付けただけのものではなく) 真の 5G テクノロジーを備えたものは、データを高速で動かし遅延も少なくできる潜在的可能性を持つ。けれども現実的には、真の 5G を実地に見つけることが難しく、現行世代のデバイスでは 5G より 4G LTE の方が速いことも多い。(Apple の 5G 対応 iPhone はまだ広く行き渡っていないのでそのパフォーマンスを比較することはできないが、大きな違いを生むとは考えにくい。)

しかしながら、大多数の人々にとって、また大多数の使用目的において、5G が変革を生むことはないだろう。その利点は主としてセルラーキャリアにとってのものであり、スループットが大きく増してより広い地域でより高額の料金を課することを可能にした 3G や 4G よりもはるかに明確な意味で、5G にはそのことが言える。5G のお陰でキャリア各社はいくつかの場合にサービスに対してより高額の料金を課すことができ、より多数の顧客を同時に処理することができ、より高いスループットとより少ない待ち時間を要する新しい市場を開拓することができ、いたる所で高速のセルラーデータ接続を持つデバイスをより多く備え付けることができる。

ユーザーにとっては、どこにいてもブロードバンドが使えるという感覚に次第に慣らされて行くことになる。それは、高速道路を疾走する車の後部座席に座って 4K 映画をストリームしたい場合や、コーヒーショップに座って 5 GB のファイルを 1 分間でダウンロードしたい場合を除けば、大してありがたいこととも思えなくなるだろう。例えて言うならば、あなたが寝ている間に市の当局が秘かに水道工事をして 10 インチの水道管を 20 インチの水道管で取り替え、あなたが目覚める前にきれいに工事を終わらせた、そんな場合にあなたが感じるものとほとんど同じ程度の興奮に過ぎない。5G は、“インターネットユーティリティ”がより多くのデータを処理できるために装備しなければならず、データが市中を行き交うために必要な新しいデータ接続を可能にする、より良いネットワークの水道工事のようなものだ。

(そうそう、もしもあなたが 5G が健康に与える影響に関する懸念を感じているのなら、現行の議論の大部分が作られたものであると論じた記事を私が書いた。2019 年 12 月 6 日の記事“5G と癌の関係が心配? ワイヤレスネットワークに既知の健康リスクがない理由を述べよう”をお読み頂きたい。)

それではまず、5G テクノロジーについて説明してから、その後でその応用に進むことにしよう。

5ジーは高速

セルラー業界は 5 つの世代を経てその標準を進化させてきた。それは 1980 年代に始まり、それぞれの世代がほぼ 10 年程度ずつ続いた。1G 標準はアナログで、完全に音声のみによるものであったが、遅いデータ転送速度にも詰め込みで対処することはできた。(かつて私は新聞のコラム記事を 1G を使って 9600 bps で提出したことがある。) 2G でデジタルに切り替わり、音声の品質も向上し、1990 年代の 56 Kbps ダイヤルアップモデムのものに近いスループットを可能にした。次に登場したのは中間的な改善を施した 2.5G で、EDGE と呼ばれ、3G への橋渡しとなって、Apple の初代 iPhone ではデータ転送速度を 200 Kbps にまで引き上げた。(この iPhone は意図的に 3G を避けていた。なぜなら 2007 年中頃に利用可能であったチップは湯水のようにバッテリーを食い尽くしたからだ。)

現代的な高速の、いたる所で利用できるインターネット接続へのわずかな望みさえ垣間見えるまでには、3G の登場を待たなければならなかった。3G はいくつかの変種の形で登場したが、最初の時点では理想的条件の下で上りは約数百 Kbps、下りは 1 Mbps をかろうじて超える程度というものであった。そして数年後には進化したスマートフォン用チップと基地局のお陰で 3G が下り 7 Mbps を超える速度に到達することができた。いくつかの変種では音声とデータを同時に飛ばすことができ、他の変種では音声通話中にデータを一時停止しなければならなかった。

未来のセルラーは Long Term Evolution (LTE、長期的発展) としてまだ開発途上であり、それが 4G ネットワークの基礎となるはずであったが、米国のキャリア各社は不安を覚えた。彼らは競って自社の高速版 3G ネットワークのことを "4G" と呼び始め、それが現在起こり始めているものを 5G と呼ぶ前兆となった。初期の "4G" ネットワークはほんの少しだけ速いものに過ぎず、真の意味の 4G LTE が登場して初めて速度が現在の数十 Mbps の領域に到達した。ただし、LTE では仕様により固定使用が 1 Gbps、モバイル目的には 100 Mbps という上限が定められていた。(4G と LTE を一緒にして "4G LTE" の形で使われることもあるが、時には LTE が 4G より優先的に使われることもある。)

これら各世代の進化に伴って、セルラーキャリアが利用できる電磁波の周波数帯も増えることとなった。世界中のあらゆる国が少しずつ違ったやり方で周波数帯のスペクトラムを切り分けているが、北アメリカと、ヨーロッパの大部分とはお互いに切り分け方を揃えており、他の地域でも隣接する国同士で揃えていることが多い。皆さんは Wi-Fi で使われているライセンス無しのスペクトラムに慣れておられるかもしれないが、一般的にセルラーキャリア各社はライセンスを購入しなければならない。多くの場合は期限付きのリース契約によって、スペクトラムの中のいくつかの領域をオークションで獲得したり、あるいは政府が注意深く調停して割り当てていることもあって、国によってはそれが利益供与、縁故主義、さらには露骨な汚職を匂わせていることもある。

US frequency allocations
National Telecommunications and Information Administration (電気通信情報局) が公開しているこの 2016 年の図表を見れば、使われる周波数帯が途方もなく複雑であると分かる。

セルラー標準が進化するにつれて、無線通信チップの製造も洗練の度を増し、スマートフォンが要求するパワーとバンド幅もますます増加の一途を辿って、スペクトラムの利用可能性がますます奇妙な具合に歪められた。初期のセルラーフォンは、3G の時代に突入した後でさえも、人気ある周波数帯のほんの一部だけしか扱えないチップを搭載していた。Apple は世界各地の周波数帯の違いに対処するためいくつか異なるモデルの iPhone を製造しなければならなかった。けれどもそのほんの数年後に、Apple、Samsung、HTC、その他の会社はすべてたった 2 つの機種を製造することで世界全体に何十とあるバンドに対応できるようになった。3G はいくぶんこの方向に進んだが、4G での変化はもっと大幅で、そして 5G はすべてに抜きん出た。現在どれほど多くの異なった周波数帯が使われているかの感じを掴みたければ、Apple の 5G および LTE iPhone 周波数帯ページをご覧になるとよい。

そのページの下の方まで鋭い視線で見回せば、興味深いことに気付かれるだろう。それは、圧倒的大多数の周波数帯が名前の後に MHz (メガヘルツ) の単位でリストされていて、ごく少数の周波数帯だけが GHz (ギガヘルツ) になっており、それらがすべて米国で販売されている iPhone の最新モデルに限られているという点だ。

その理由は、5G における真の革新が、より良いデータ転送速度を 4G やそれ以前の標準で使われるスペクトラム領域の中で実現しようというものではないからだ。そうではなくて革新は ミリ波 (mmWave) による送信にあり、これは非常に短い到達距離で非常に高い周波数の電波を使うものだ。ではその点について、また 5G が提供する他の事柄についても、掘り下げて調べてみよう。

長くて遅いか、短くて速いか

情報を伝達するために作られたコミュニケーションシステムならばどんなものでも、ワイヤードであれワイヤレスであれ、データのスループットを増そうと思えば、技術者たちは常に Shannon-Hartley の定理に縛られる。この定理は3人の賢い人たちによって証明され、そのうち2人の名前が付けられている。(3人目は Harry Nyquist だ。) この定理は実質的に、システムが伝達できる情報量の上限 (デジタルコミュニケーションにおいてはデータ転送速度) を説明するものであり、ノイズの存在によって最高速度が抑えられることを告げる。

ノイズは常に存在し、それが情報を壊す。ノイズがあるからこそ、Wi-Fi デバイスが最大 3.2 Gbps と宣伝されているにもかかわらず実際に大きなファイルをコピーしながらスループットを計測してみるとたった 500 Mbps しか出ていないということが起こるのだ。遠い距離を運ぶ間に何らかの干渉や信号劣化が起これば、あっという間に最大転送速度は落ちてしまう。(ワイヤレスネットワークにも、スループットの 20% から 40% ほどに達するかなり大きなオーバーヘッドが伴う。これはトラフィックを管理し、同じネットワークや近隣のネットワークにあるデバイス間の競合を防ぐために必要なものだ。)

スループット = スペクトル × アンテナ

Shannon-Hartley の制約の範囲内でスループットを改善するためにはいくつかの方法がある。一つはスペクトラムを増やすこと、つまり使える周波数の幅を広げて、通れるデータの量を増やすことだ。でも、周波数帯を追加するにはさきほど説明したように政府との交渉が必要だ。各国は躍起になって革新と投資を促そうとしているので、5G の将来的な恩恵があると見えればより多くのスペクトラムを割り当てようとしてきた。

スループットを増やすためのもう一つの方法は、アンテナを追加することによる。それはただ単に送受信の感度を上げるだけのことに聞こえるかもしれないがそうではない。過去 15 年以上にわたって、multiple-in, multiple-out (MIMO、複数入力・複数出力) 無線システムが同時に複数個のデータストリームを送信し、受信機がそれらを区別できるデバイスを可能にしてきた。ワイヤレス特性を変更してアンテナの異なる組み合わせを用いることで、セルラーならびに Wi-Fi の基地局は信号を特定のデバイスに向けてそこへ直接送ることさえできる。これを ビーム形成 と言う。

MIMO によって同じ周波数帯の中で周波数の再利用が可能となり、実質的にスループットが倍増する。これが Shannon-Hartley に反していないのは、同じ場所の中で別々の道筋を利用できるからだ。一つのビリヤード台の上で複数の手玉が互いにぶつからずに跳ね返って動くところを想像してみよう。ただ、ビリヤードの球と違って、ワイヤレス信号は別の道筋にある限りお互いを通り抜けることができるのだ。

ただし MIMO には一つ物理的な制約がある。アンテナは、その電波の波長に応じて特定の長さを持っていなければならない。Wi-Fi で使われる 2.4 GHz の波長はおよそ 5 インチ (12.5 cm) で、一般的にアンテナは波長の半分の長さに作られる。皆さんはきっとたくさんのアンテナが花輪のように付いた Wi-Fi ルーターをご覧になったことがあるだろう。8 本、9 本、12 本、あるいはもっとたくさん外部アンテナを付けているものさえある! けれども取り付けられるアンテナの数にはセルラー基地局であってさえも実用的な限界がある。大きさの問題もあるし、取り付けに関する複雑さもあるからだ。

Wi-Fi router with multiple antennas

5G のためのミリ波 (mmWave) 周波数帯は 24 GHz からで、極めて小さなアンテナを使うことができ、たくさんのアンテナをきつく詰め込むこともできる。(24 GHz 用の半波長アンテナの長さは 0.25 インチ、つまり 6.35 mm だ。) セルラー基地局では数十個のアンテナが互いにリンクされた位相配列を成していることもある。これにより、膨大な個数のアンテナの組み合わせにわたって正確なビーム形成ができる。業界用語でこれを“massive MIMO”と言う。これにより、たとえ混雑した環境の中でも、非常に多数のデバイスが基本的にそれぞれ独自にフルスピードのデータストリームを受信できるようになる。(有名な 2000 年代初期の Wi-Fi 障害は、当時は時代を遥かに先取りしていた位相配列のアンテナが、プロトタイプでは成功したにもかかわらず実際の製造に持ち込むことができなかったために起こった。けれども考え方そのものは、とりわけ mmWave の規模においては、正当なものであった。)

5G antenna panel
Fujitsu が 2018 年に設計した、アンテナ 128 個の 28 GHz 位相配列パネル

mmWave の欠点は、信号の出力と波長との関係から来る。同じ帯域の幅で信号品質とノイズの比 (よく言われる SNR、信号対ノイズ比) を同じにするためには、高い周波数の方が低い周波数よりも大きな電力を必要とする。電力レベルを同じにすれば、低い周波数は高い周波数ほど多くの情報を運べないけれども、低い周波数の方が遠方まで届き、より多くの固体を通り抜けられる。

当初 2.4 GHz 帯の方が Wi-Fi に使われたのは、到達範囲と固体貫通が2つの大きな理由であった。当初は Wi-Fi 用の周波数帯が非常に狭かったので、電波が物体や壁や天井を通り抜けても一定のデータ転送速度を確保できることが重要だったからだ。5 GHz の Wi-Fi は (米国で間もなく実現される 6 GHz も) より大きな電力とずっと広い幅の周波数域が許される規則によって初めて可能となった。

これに対して mmWave では、使われる周波数 (24 GHz 以上) があまりにも高いので、予想される電波到達範囲は Wi-Fi と同じくらい、半径がおよそ 500 フィート (150 m) だ。これに比べて 2 GHz のセルラー周波数帯では半径がおよそ 3 マイル (4.8 km) であり、もっと低い周波数の 700 MHz になれば半径 6 マイル (9.6 km) にまで信号が到達する。(実用的な話をすれば、セルラー基地局は互いに到達範囲をオーバーラップさせることでシームレスな引き継ぎを実現しているし、密集した市街地では多数のユーザーを処理できるようにもっとずっと密に基地局が設置されている。)

あともう一つ、別の要因もスループットに影響する。ネットワークシステムは変調によってデータをエンコードしており、それは (簡単に言えば) 情報のビットをアナログパターンに置き換えることによる。ワイヤレス通信においては quadrature amplitude modulation (QAM、直交振幅変調) が多く使われる。例えて言えば、正方形の中に点のパターンが含まれているものを行と列によって広げて一列にするようなもので、これを コンステレーション と呼ぶ。運ばれる個々の点は受信された際に、正方形上で行と列の交わる、正確に元通りの場所に置かれるべきものだが、QAM では受信機が正しい場所に戻らなかった点をちょいと動かすように作られている。

デジタルなセルラーおよび Wi-Fi のテクノロジーは、その各世代の進化ごとに、少しずつこのコンステレーションのサイズを増やした。その結果、ワイヤレス通信の個々の時間断片の中により多くのデータを詰め込むことが可能になった。コンステレーションが大きければ、よりクリーンな信号が必要となり、それは多くの場合、高いスループットを得るためにはデバイスが送信機に比較的近い場所になければならないということをも意味する。

好都合にも、mmWave は周波数が高いので、基地局が互いに近接して置かれていなければそもそもその地域をカバーすることができない。なので、クリーンな信号が必要という QAM コンステレーションの要求にも合っている。

待ち時間

スループットを増すためのこれらさまざまの変更点に加えて、5G では待ち時間(レイテンシ)を減らせる可能性もある。これはセルラーで通信の遅れを起こす要因であり、ワイヤードや Wi-Fi のネットワークにおいても重要な特性だ。レイテンシは、ネットワーク上の通信がどれだけ速く進むかとは関係なく、信号が出発点を出て到着点に届くまでにどれだけの時間がかかるかを測定した値だ。蛇口から出る水道水に例えてみれば、水道管の太さと水圧とがスループットを決める。それは時間あたりどれだけの量の水が届けられるかということだ。一方、レイテンシは蛇口を回してから水が出てくるまでにかかる時間だ。

4G ネットワークのレイテンシはおよそ 50 ミリ秒だ。5G では、通常 10 ミリ秒に近い値になるはずだ。こちらは現代の Wi-Fi とほぼ同じで、人間の視覚が認知できる限界、つまり映像が見えてから脳がそれを処理するまでにかかる時間に近い。けれども 5G にはそれをさらに短く、1 ミリ秒レベルにまで下げられる潜在的可能性がある。これは、ワイヤードの Ethernet が達成できるものと同等のレイテンシだ。

インタラクティブな用途では、レイテンシが良いことが極めて重要となる。ビデオ会議や VoIP 通話で映像や音声に時間差を感じてしまっては、リアルタイムで物事が起こっているという感覚が失われる。ゲーミングでは決定的に重要だが、多くの産業用、ビジネス用の用途でも遅れは限りなくゼロに近づくことが望ましい。

サブチャンネル

セルラーが隠し持っている技がもう一つある。4G と 5G はいずれも、周波数帯の広い幅をいくつかに分割して、一つのチャンネルを細かなサブチャンネルに分け、個々のサブチャンネルが独自の変調を施すようにしている。このテクニックは Wi-Fi 標準でも用いられている。もし一つのサブチャンネルで干渉が起こったり、反射の問題が起こったりしても、通信全体のスループットを下げずに済む。言わば、畑を耕して岩を避けるようなものだ。

もっと詳しいことが知りたい方には、5G について書いた非常に分かりやすい記事を Waveform が出しているのでお読み頂きたい。

5G の潜在的有用性と噂されるもの

米国は、5G で3つの種類の周波数帯を使う、世界で初めての国となる。さまざまの帯域に跨がる既存の周波数帯と、現在 5 GHz Wi-Fi で、また間もなく 6 GHz Wi-Fi で使われる帯域に近い新しく割り当てられた周波数帯と、それから 24 GHz からの mmWave 周波数帯だ。このやり方は、低い周波数帯で広範囲にハイ・パフォーマンスを届け、高い周波数帯で必要に応じて超高速のスループットを届けようとする、大規模な実験でもある。

5G の利用方法として言われているものは、私たちが今していることのすべてを含んでいる。ただ、キャリア各社はビデオのストリーミングについてはそれほど言及しない。たぶん、4K 画質のビデオストリームにはそれほど魅力がないのだろう。とりわけ、いくつかのキャリアは既にビデオを自動的にダウンスケールしたり、480p を超えるハイファイビデオを得るためにより高価な購読を要求したり、最高の 1080p のためにさらにもっと高価なプランを設定したりしているのだから。

キャリア各社が 5G に躍起になって (そして投資して) いるのは、そこに新しい金儲けの機会を期待しているからだ。とりわけ、低レイテンシ、高バンド幅、広到達域のワイヤレスによって新たな製品やサービスが生まれる業界に注目している。また、終端機器から中央処理装置へと知能をシフトさせられる業界も重要だ。

ブラウザの中で動作する JavaScript の速度が大幅に改善された結果、ローカルにダウンロードしたコードと遠隔にあるリソースの間でシームレスなやり取りができるようになり、それがウェブアプリに大きな恩恵を与えたのと同じように、5G ネットワークはリアルタイムでデータを終端へフィードすることのできる巨大規模のシステムを可能にすると言われている。その例としては、機能の少ない Internet of Things (IoT) デバイスが頭脳を遠隔に置く (その際にあらゆるセキュリティとプライバシーの問題が伴う) 状況もあるし、反対により高度なハードウェア、例えば自律走行車や運転アシスト自動車のようなものもある。

最も魅力的に見えるものをいくつか挙げておこう:

ネットワークの配備が進むにつれて間違いなく他にも使用事例が出現するだろうが、私が紹介したリストにあまり魅力が感じられないと思う方がおられてもそれは無理からぬことだ。それはキャリアにとっての問題であって、ネットワークの更新のコストを引き受けているのは主としてキャリア各社だからだ。ただし Verizon は例外で、既に顧客に追加料金を課している。下をご覧頂きたい。Verizon はまた、次世代のスマートフォンに 5G 対応を加えるためにエンジニアリングの努力を注いだ点を購入を促す最大の理由に据えつつ、それ以外には小さな改良しか加えなかったスマートフォンメーカーを大いに困らせることになる。スマートフォンはまだその機能において革新の終点には達していないが、カメラ、ディスプレイ、処理能力の改良は個々のリリースであまり大きな違いを産んでいないからだ。

要約すれば、5G がやって来ることは必然だし、社会のネットワーキング基盤構造として一つの重要な側面となるかもしれないけれども、大多数の人たちにとって今すぐ手に入れなければならない理由は何一つない。

キャリアはプランを計画 (プラン) 中

5G を実際に展開するに際しては、セルラーキャリア各社は数多くの互いに競合する問題に直面しており、多かれ少なかれ皆がほとんど同じテクノロジーを採用しているにもかかわらず、それぞれの会社によって異なるマーケティングと価格設定の手法を採用している。これはまるで、Coke と Pepsi が競争していて Coke が砂糖水を缶の 12 パックのみで販売し、Pepsi が 2 リットル瓶のみで販売しているようなものだ。

現時点で私たちの目の前にあるものを見れば、大手のセルラー会社各社が 5G ネットワークを展開しているのは自社が 5G ネットワークを整えているという主張を正当化する目的のみのためだとしか思えない。彼らは競争力を持って自慢できる権利を求めているのだ。1 Gbps またはそれ以上の mmWave サービスを顧客が使えるのはほんの少数の限られた地域に過ぎない。PCMag が Verizon の mmWave サービス地域の地図を丹念に調べて、それが現時点ではまだ少なく、しかも予想通りに高速の無料または有料 Wi-Fi が既にある地域に集中していることを見つけ出した。AT&T と T-Mobile はまだ mmWave の計画を発表していない。現時点で分かっていることは次の通りだ:

Verizon の初期的 mmWave 展開は有望のようで、カバーしている極めて限られた地域においては光ファイバーのブロードバンドやハイエンドの Wi-Fi と同等の速度を提供している。でも、ここでもう一度問いたい。何が目標なのか? 私なら、ボストンの Newbury Street を散歩しながら 1 Gbps の速度を必要とすることなんかない。でも、私たちが再びこの有名な通りで何千人もの人たちに囲まれて歩ける日が来たならば、卓越したスループットをありがたいと思うのだろうかという想像はできる。

けれどもここでもっとがっかりさせられるのは、“通常”版の 5G、つまり世代として 4G のアップグレードとなる 5G は、どうやら 4G LTE とオーバーラップする地域の一部ではパフォーマンスが 4G LTE より遅いらしいという点だ。そのことはいずれ変わるのだろうが、新しく買ったばかりの 5G 対応 iPhone が場所によっては実際 4G より遅いパフォーマンスしか出せないというのはやはり変だ。

私たちには 5G への準備ができているのか?

改良されたテクノロジーで実際に言っている通りのことをするものを悪く言うことはしたくない。5G ネットワークは必ずやスループットの意味でも利用可能性の意味でも大幅な進歩を提供してくれるだろうし、そのことは私たちの目にも見えるだろう。ただし、そうなるのは一年先か、ひょっとすると二年先のことだ。そうなる日が来るまでの間は、それほどのことでもない。

もうしばらくの間はこの業界全体が 5G について語らずにいて欲しかったのにと私は思う。でも、5G に関係している会社たちは何かを語らずにはいられない。なぜなら、マーケティングとはそういうものだからだ。「わが社はものごとを少しずつ速くし続けています」という広告をしても何の儲けにも繋がらない。とりわけ、競争相手たちは盛大に 5G の花火を打ち上げているのだから。

5G がやって来ることは必然だ。それはつまり、すべてのスマートフォンやセルラー対応デバイスはこれから一年の間に 5G の何らかの初期変種に対応するものへと移行するだろう。その中には mmWave を利用する、比較的高速のものもあるだろう。問題は、私たちの日々の生活に影響を及ぼすような使用事例を、いつになればこの目で見ることができるのかという点にある。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Mailplane 4.3

Mailplane 4.3

Uncomplex が Mailplane 4.3 をリリースして macOS 11 Big Sur に対応させたが、今回はまだ新しい M1 ベースの Mac には対応していない。この Gmail 専用電子メールクライアントはまた、Save Clip 機能に Clipboard オプションを追加して現在のメッセージを Markdown としてコピーできるようにし、アカウントがバックグラウンドでサインアウトされた場合にそのことをメニューバーに表示するようにし、Insert Screenshot を Escape キーでキャンセルした際に起こったクラッシュを解消し、バッテリー寿命を優先するためユーザーが Enable GPU Rendering オプションを無効化できるようにした。(新規購入 $29.95、無料アップデート、78.2 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Mailplane 4.3 の使用体験を話し合おう

Agenda 11.2

Agenda 11.2

Momenta が日付に集中したノート取りアプリ Agenda のバージョン 11.2 をリリースして、macOS 11 Big Sur へのフル互換性と、Relevant Notes ウィジェットの macOS 互換性を実現した。iOS 14 にある機能を反映して、Relevant Notes ウィジェットはすべてのノート、あるいはアジェンダ上、today、upcoming のノートのみの中から、条件に合ったノートを選んで Notification Center に表示することができる。今回のアップデートはまた、印刷や PDF 書き出しの出力を拡張し、リマインダーのエディタが Default 環境設定の下で Create All-Day Reminders 設定を守るようにし、エディタのインデント挙動を改善し、サイドバーがウィンドウボタンの背後でスクロールしていたバグを修正し、最近編集した関連ノートのパネルがゴミ箱に移されたノートを表示しないようにした。Agenda 11.2 は iOS と iPadOS 用にも入手でき、こちらは Scribble を使う際の挙動を改善している。(無料、プレミアム機能のアプリ内購入 $24.99、無料アップデート、59.3 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Agenda 11.2 の使用体験を話し合おう

URL Manager Pro 5.5

URL Manager Pro 5.5

Alco Blom がブックマークマネージャ URL Manager Pro のバージョン 5.5 をリリースして、M1 ベースの Mac と Intel ベースの Mac 双方でネイティブに走る macOS Universal アプリとした。macOS 11 Big Sur 互換となった URL Manager Pro 5.5 は、Preferences ウィンドウを更新して Big Sur のルック&フィールに合った新しいアイコンを使っている。今回のアップデートではまた、メイン表示に新たに Note、Date Added、Date Modified の各カラムを設け (Preferences で設定可能)、Edit Note ウィンドウの大きさを拡大した。(新規購入 $35、無料アップデート、13.7 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

URL Manager Pro 5.5 の使用体験を話し合おう

CleanMyMac X 4.7

CleanMyMac X 4.7

MacPaw が CleanMyMac X 4.7 をリリースして、数多くの内部的変更、インターフェイスの改善、バグ修正を加えて macOS 11 Big Sur との互換性を確保した。この Mac メンテナンスユーティリティへのアップデートではまた CleanMyMac X Widget を Notification Center に登場させ、Mac 上で利用可能容量のチェックと Smart Scan の起動が直接にできるようにした。アプリのアイコンも一新して、新しい Big Sur のスタイルに合うようにした。(新規購入は $89.95 の一回払いまたは $34.95 の年間講読、月額 $9.99 の Setapp Mac アプリ購読サービスの一部としても入手可、無料アップデート、63.9 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

CleanMyMac X 4.7 の使用体験を話し合おう

Transmit 5.7

Transmit 5.7

Panic が Transmit 5.7 をリリースして macOS 11 Big Sur と M1 ベースの Mac への対応を追加した。このファイル転送アプリはまた、Transmit の中で編集されたローカルファイルを保存する際の問題点を解消し、2 つのタブを同じサーバで開いた場合に接続の上級設定が適用されない可能性があった問題を修正し、File Browser ウィンドウが場合によって小さくリサイズされてしまったバグを修正し、AWS S3 に複数個の大きなファイルを同時にアップロードする際に転送が止まってしまわないようにし、ファイル名に不正な文字が含まれていた場合にファイルを OneDrive にアップロードできなくなっていた問題を解決し、Places Bar が一部のバージョンの macOS で黒く描かれていた問題を修正した。(新規購入 $45、無料アップデート、40.3 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Transmit 5.7 の使用体験を話し合おう

SEE Finance 2.2

SEE Finance 2.2

Scimonoce Software が SEE Finance 2.2 をリリースして、数多くの調整と macOS 11 Big Sur 互換性とを加え、M1 ベースの Mac への対応も追加した。この個人財務アプリは OFX Direct Connect ダウンロードでの自称名を変更し (そのため再アクティベートまたは追加の認証が必要かもしれない)、アカウントのダウンロードで他のアカウントが失敗した場合にも成功したアカウントを正しく処理できるようにし、調整支払先を選択する際に前回使った取引設定を適用しないようにし、Calendar 表示オプションのロード時間を改善し、スケジュールされた取引から生成された場合に分割された取引の順番が狂ってしまった問題を解消し、また Vanguard に (他のところでもあるかもしれない) 接続する際に前回の接続のクッキーを要求されても返さなかったことから生じていた問題に対処した。通常価格は $49.99 だが、SEE Finance は現在期間限定で Scimonoce Software ウェブサイトからも Mac App Store からも $39.99 でセール中だ。(新規購入 $49.99、無料アップデート、49.5 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

SEE Finance 2.2 の使用体験を話し合おう

Safari 14.0.1

Safari 14.0.1

Apple が macOS 10.15 Catalina 用と 10.14 Mojave 用に Safari 14.0.1 をリリースして、いくつかのセキュリティ脆弱性をパッチした。このウェブブラウザは入力検証を強化してアドレスバー偽装の問題に対処し、メモリ管理を強化して悪意を持って作成されたウェブコンテンツに任意のコードを実行されることを防いだ。Safari 14.0.1 は System Preferences > Software Update 経由でのみ入手できる。(無料、macOS 10.15 および 10.14)

Safari 14.0.1 の使用体験を話し合おう

Security Update 2020-006 (Mojave and High Sierra)

セキュリティアップデート 2020-006 (Mojave と High Sierra)

Apple が macOS 10.14 Mojave 用と 10.13 High Sierra 用にセキュリティアップデート 2020-006 をリリースして、これらの古いオペレーティングシステムにあった3件のセキュリティ脆弱性をパッチした。(2020 年 11 月 5 日の記事“Apple、攻撃確認された脆弱性のため多数のオペレーティングシステムをアップデート”参照。) 悪意を持って作られたフォントが任意のコードを実行してしまう可能性のあったメモリ破損の問題に対処し、悪意のあるアプリケーションがカーネル権限を取得して任意のコードを実行することを防ぐためにステート処理を強化し、カーネルメモリの漏洩を起こす可能性のあったメモリ初期化の問題を解消している。アップデートには Software Update からアクセスできる。これらのアップデートに関係した問題の報告は聞こえていないし、今回対処の施された脆弱性を悪用する攻撃が現に確認されているとのことなので、早めにアップデートすることをお勧めしたい。(無料、サイズはいろいろ、リリースノート )

セキュリティアップデート 2020-006 (Mojave と High Sierra) の使用体験を話し合おう

Hazel 5.0

Hazel 5.0

Noodlesoft が Hazel 5 をリリースした。このファイル自動化およびクリーンアップユーティリティのメジャーなアップデートだ。今回の最大の変更点は、従来の環境設定枠から独立のアプリに変わったことだ。Hazel は今回からフォルダリスト、ルールリスト、ルールエディタをすべてアプリのメインウィンドウの中に統合し、またフォルダをグループ分けして整理できるようになった。

macOS 11 Big Sur と M1 ベース Mac にも対応した Hazel 5 はまた、カスタムリスト項目と表の属性も追加し、それぞれをリスト (Hazel で作成されたものも、外部ファイルからロードされたものも) の項目や表と照合できる。この表照合機能を使って、表の中の一つのカラムを照合して別のカラムの値を使って改名できる。今回のアップデートではまた Rule エディタを分離させて複数のルールを同時に見られるようにし、同じルールセットの中の別のルールにナビゲートしても Preview モードが維持されるようにし、10.13 High Sierra 以上を必要とするようになった。

Hazel 5 の価格は新規ライセンスが $42、従来のバージョンからのアップグレードが $20 だ。2020 年 1 月 1 日またはそれ以降に Hazel 4 を購入した場合には無料でアップグレードできる。最大 5 名の家族で使える Hazel 5 ファミリーパックを $65 で購入することもできる。(新規購入 $42、5 名のファミリーパックは $65、アップグレード $20、20.4 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Hazel 5.0 の使用体験を話し合おう

Nisus Writer Pro 3.2 and Nisus Writer Express 4.2

Nisus Writer Pro 3.2 と Nisus Writer Express 4.2

Nisus Software が Nisus Writer Pro 3.2Nisus Writer Express 4.2 をリリースして、macOS 11 Big Sur、M1 ベース Mac、それに Dark モードへの対応をこれら 2 つの版のワードプロセッサアプリに追加した。双方のアプリでの新機能としては、挿入された PDF を扱う方法 (テキスト、画像、または連続した画像) の選択、選択されたテキストを利用可能なフォントを使って表示する新しいメニュー項目 Show Font Previews および Choose Replacement Font、それから OCR を使ってテキストを抽出する Extract Text From Image (10.15 Catalina が必要) がある。

また、Nisus Writer Pro と Nisus Writer Express の双方とも画像処理に特化したコマンドを追加し、Show Linked File in Finder コマンドでリンクされた画像のソースファイルを見られるようにし、適用したテキストスタイルを変更する Touch Bar 項目を追加し、Big Sur の下で DOC および DOCX ファイル読み込みの信頼性を高め、Big Sur におけるいくつかのユーザーインターフェイスの問題や不具合を解消し、フルスクリーンモードを解除した際の拡大倍率の復元に関する問題に対処した。

Nisus Writer Pro では新しい Copy Link to Bookmark オプションを追加し、Insert Cross-Reference および Add Link to Content の各ウィンドウでテキスト検索を使ってターゲットをフィルター分けしたり索引付けやスタイルによってターゲットを選んだりできるようにし、テキスト・画像・図形の陰影を調べたり変更したりするためのさまざまなマクロコマンドを追加し、また追跡された削除や置換が HTML や EPUB へ書き出されなかったバグを修正している。(Nisus Writer Pro は新規購入 $65、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、277 MB、 リリースノート。Nisus Writer Express は新規購入 $26、無料アップデート、71.7 MB、リリースノート。いずれも macOS 10.11+ が必要)

Nisus Writer Pro 3.2 と Nisus Writer Express 4.2 の使用体験を話し合おう

Firefox 83

Firefox 83

Mozilla が Firefox 83 をリリースして SpiderMonkey JavaScript エンジンに大幅なアップデートを施し、結果としてページをロードするパフォーマンスが最大 15%、ページの反応性が最大 12% 向上するとともに、メモリ使用量が最大 8% 減った。今回のリリースではまた、トラックパッドを備えた Mac でつまんでズームする機能に (ようやく) 対応してウェブページをズームイン・ズームアウトできるようになり、macOS で最小化されたウィンドウのあるセッションを復元する際の電力使用量を減らし、ピクチャ・イン・ピクチャのビデオを早送り・巻き戻しするためのキーボードショートカットに対応した。Firefox 83 は M1 ベースの Mac でも動作し、macOS 11 Big Sur と共に出荷されている Apple の Rosetta 2 エミュレーションに対応する。Mozilla は現在、M1 ベース Mac へのネイティブ対応を目指して開発作業中だ。(無料、73 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Firefox 83 の使用体験を話し合おう

Pixelmator Pro 2.0

Pixelmator Pro 2.0

The Pixelmator Team が Pixelmator Pro 2.0 をリリースした。この画像編集アプリのメジャーリリースで、より洗練されたデザイン、たくさんの新機能、M1 ベースの Mac へのネイティブ対応、それに macOS 11 Big Sur 互換性を備えている。Pixelmator Pro 2 で完全に Metal 駆動となった編集エンジンは Apple の M1 チップのユニファイドメモリを利用することで画像編集を大幅に高速化し、このアプリの Core ML 駆動の機能が M1 の特化された Neural Engine を使ってより高速 (ML Super Resolution に比べて最大 15 倍高速) の機械学習処理を実行できる。

今回の "Junipero" アップデートではまた、新しい Effects ブラウザを導入して手軽にエフェクトを検索・適用できるようにし、Tools および Layers サイドバーの位置をフルにカスタマイズして好み通りのワークスペースを作れるようにし、200 以上の新しいカラー調整、エフェクト、レイヤースタイル、グラディエント、図形プリセットを追加し、7 つの新しいカラー調整コレクションを追加し、統一ツールバーに新設された Zoom サイドバーを使って手早く画像のズームイン・ズームアウトができるようにし、AppleScript の修正をいくつか提供し、書類間でレイヤーのドラッグ&ドロップができなかったバグを修正している。(Pixelmator からも Mac App Store からも新規購入 $39.99、無料アップデート、217 MB、リリースノート、macOS 10.14.4+)

Pixelmator Pro 2.0 の使用体験を話し合おう

Zoom 5.4.4

Zoom 5.4.4

Zoom が会社名と同名のビデオ会議アプリをバージョン 5.4.3 にアップデートして、ミーティングの最中に一つのウィンドウまたはスクリーンに限られるのでなく複数個のアプリを共有できる機能を追加した。共有されたアプリは伸長する緑色の境界で示され、それ以外のアプリやデスクトップ上の空いた領域は視聴者から見えない。今回のアップデートではまた、ミーティング中のユーザーによる不正使用の報告を拡張し、Security パネルにすべての参加者の活動を即時停止するオプションを追加し、ユーザーがメッセージをチャンネルの最上部にピン留めできるようにし、ビデオを伴わないミーティングで空の画面にミーティング情報とオプションのみを表示する代わりに参加者のプロフィール写真と名前を表示するようにした。その後素早く出された 5.4.4 アップデートでは macOS 11 Big Sur に関係した CPU 過剰使用の問題を解消した。(無料、23.0 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

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1Password 7.7

1Password 7.7

AgileBits が 1Password 7.7 をリリースして、macOS 11 Big Sur 用のデザイン改良 (新アイコンも含む) と Safari 統合の拡張 (ログイン、クレジットカード、フォーム記入の際に出るインラインメニューも含む) を施した。このパスワードマネージャは今回から Apple Watch または Secure Enclave 装備の Mac を使って 1Password のロックを外せるようになり、メインの 1Password エディタにある Strong Password Generator を改良し、非常に長いパスワードでは大きな文字を縮小・改行して表示し、ばね仕掛けのヴォールトセレクタの上へ項目をドラッグしても働かなかった問題を解消し、Google Chrome の Beta および Dev リリースでのブラウザ統合を修正し、また管理者のために Security Preferences の多くのオプションについて MDM 設定を強制する機能への対応を追加した。(AgileBits または Mac App Store から独立動作のアプリ購入の場合 $64.99、講読の場合は月額 $2.99 または $4.99 (新規にアカウントをセットアップする TidBITS 会員は 6 か月間無料)、無料アップデート、57.5 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

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DEVONthink 3.6

DEVONthink 3.6

DEVONtechnologies が DEVONthink 3.6 をリリースして、macOS 11 Big Sur との互換性を確保するために必要ないくつかの変更を施した。この書類および情報管理アプリはまた書類リンクに注目して、データベースのスキャンにより書類間のリンク関係を (外向きリンクも、内向き“バックリンク”も) 見つけ、それらのリンクを検索や、スマートグループの判定基準や、リストの並べ替えに利用できるようにした。既存のデータベースが最初に開かれた際にスキャンされることに注意しよう。

今回のアップデートではまた、Search インスペクタを使った書類内検索を改良してワイルドカードやオペレータが使えるようにし、Markdown 対応を強化し、新しい Daily Journal テンプレートを追加し、Move To ポップオーバーで修飾キーを押さえることで項目を複製して増やせるようにし、目次を含んだ PDF を章によって別々の書類に分割できるようにし、iCloud アップロードモニタの CPU 使用とメモリ使用の量を減らし、WebDAV 同期保存の全体的な信頼性を高め、メインウィンドウでサイドバーの更新とリロードの効率を改善した。(DEVONthink 新規購入 $99、DEVONthink Pro 新規購入 $199、DEVONthink Server 新規購入 $499、TidBITS 会員にはそれぞれ 15 パーセント割引、無料アップデート、115 MB、macOS 10.11.5+)

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