私たちは先月、コミュニケーションツールを使って子供たちを募り搾取しようとする者たちから子供たちを保護し Child Sexual Abuse Material (CSAM、児童性的虐待素材) の拡散を抑制することを意図した機能の計画を発表しました。しかしながら、顧客や権利擁護団体、研究者その他の皆様から寄せられたフィードバックに基づいて、私たちは今後さらに数か月間をかけて情報を収集し改良を施して、その後でこれらの非常に重要な児童保護機能をリリースすることを決断いたしました。
後者の記事にも記したように、Apple は当初の発表とそれに続いた説明で徹底的にヘマをしたので、今回 Apple が情報を収集し改良を施すために延期をしたのを見ても何の驚きもない。問題は、そのために Apple が一体なぜこんなに長い時間を掛けたのかだ。予定されているアップグレードからテクノロジーを取り除くことについて Apple には十分な経験がある。つい最近も SharePlay を延期したばかりではないか。
私の推察を言えば、Apple はこれから何か月か掛けてテクノロジーそのものとそのメッセージを伝える方法の両面で磨きを掛けた上で、来年のどこかの時点で改めて導入するつもりなのだろう。私の期待を言わせてもらえば、その発表ではこのテクノロジーが CSAM の拡散を抑制し、繰り返される虐待を阻止し、それと同時に政府レベルの転覆に抵抗できるためにどれほど効果的であるかについて、もっとずっと良い説明がなされて欲しい。そうすることでメディアの側でももっときちんとした分析ができ、仕切り直しの報道をすることができるだろう。たとえ今回 Apple が一度目の発表でヘマをしたとしても、それを受けて起こったメディアの加熱した報道は Apple が述べたこのテクノロジーの動作方法についての不正確な説明や誤解に基づくものであったのだから。
Apple の壁に囲まれた庭を保護している煉瓦を、裁判所と規制当局が少しずつ削り落としてきた。最近の記事でも、韓国の新しい法律が App Store や Google の Play Store で開発者に代替的な決済手段を使うことを認めるよう義務付けたことを紹介したばかりだ。(2021 年 8 月 31 日の記事“韓国の新しい法律が App Store での支払いに代替決済手段を義務化”参照。)
Apple は Cameron 氏ら、対 Apple 法人 訴訟での合意条件の一環として App Store にいくつかの変更を加えると発表したが、その影響は限定的だ。Apple の発表から私たちが探り出せる範囲内では、合意条件の大部分は Apple がこれまでしてきたことを続けられるとしている。例えば、少なくとも今後3年間 App Store Small Business Program を現在の形で維持することが合意された。このプログラムが終了するかどうかについて触れられたことなど、かつて一度もなかったにもかかわらず! (2020 年 11 月 18 日の記事“Apple、小規模開発者に対して App Store 手数料を 15% に下げる”参照。)
私たちは直接関与している訳ではないので、この和解の内容をどう解釈すべきかは分からない。著名な Apple 開発者たちの反応をまとめたものとして、Michael Tsai のブログ記事をお薦めしたい。要約すれば、開発者たちはあまり感心していない。それはつまり、Apple はこれを「米国の開発者たち」との合意と形容しているけれども、本来「より大きな Apple 開発者コミュニティーの意見を代表しているとは思えない、一部の開発者のために働く弁護士たち」との合意に過ぎないことを隠しているということなのだろう。
たとえ Apple の譲歩が最小限のものだとしても、このことも、韓国の法律も、いずれも Apple が大きな圧力の下にあることを、そして Apple が必要とあらば開発者たちの懸念に応える用意があることを、示していると言える。
日本の公正取引委員会との和解
Apple が日本の公正取引委員会 (JFTC) と結んだ合意はさらにもう一歩踏み込んでいる。これは小さいけれども重大な変更であって、Apple は「リーダー」アプリの開発者が自社ウェブサイトへのリンクをアプリ内に含めることでユーザーがアカウントを設定または管理できるようにすることを認める。例えば、Netflix アプリが Netflix ウェブサイトへのリンクを持つことが可能になる。何だこれは! この変更は 2022 年初めごろから実施され、Apple はそれまでに App Store ガイドラインと審査プロセスをこの変更に合わせて更新する。
この変更は、これまで最も嫌われていた Apple の方針、いわゆる“アンチステアリング”ルールに影響する。これは開発者が外部の決済システムへのリンクを提供することを禁じており、Apple のアプリ内購入システムを使わせるようにするためのものだ。リーダーアプリがリンクによってユーザーが外部のアカウント管理システムを使えるようにするのはささやかな、自然なオプションのように見えるのだが、従来 Apple はその種の外部リンクを呈示するアプリを断固として拒絶してきた。
では、その「リーダー」アプリとは実際何を意味するのか? 理論的には、Kindle、Spotify、Netflix のようなコンテンツ消費のためのアプリという意味だろう、けれども記事“開発者対 Apple: App Store に対する不満を総まとめ”(2020 年 8 月 13 日) で私が指摘したように、Apple による「リーダーアプリ」の定義は恣意的なものだ。Apple は App Store ガイドラインの中で次のように定義している:
Daring Fireball の記事で、John Gruber は二人の匿名の開発者の経験談を紹介している。二人はいずれも、リンクに関する Apple の新しい方針を信用しておらず、そこにはきっと何らかの条件が紐付けられるだろうと思っている。例えば、アプリ内購入による購読を併記して提供することを要求されるのではないかとか、Apple が新たな理由をひねり出してリンクを理由にアプリを拒絶し始めるのではないかとかいったことだ。それはつまり、Apple が開発者たちからの信頼をどれほど失ってしまったかを示唆している。
それからまた、このことが Apple の「ビデオ・エンターテインメント・プロバイダのプレミアム購読」プログラムとどのように交差するのかという問題もある。そのプログラムで、Amazon Prime Video アプリのユーザーは Apple のアプリ内購入システムを使わずにアプリの中からコンテンツを購入することができる。(2020 年 4 月 3 日の記事“Amazon の iOS 用と Apple TV 用 Prime Video アプリで購入が可能に”参照。) 他にも少数のビデオサービスが含まれているが、Disney+、Hulu、Netflix といったところは含まれていない。
Apple は事の成り行きを見据えており、規制を免れるため独自の行動を取りつつある。例えば、発表したばかりの News Partner Program は Apple News Format でコンテンツを提供する出版社に対してサブスクリプションの手数料率を通常の半額の 15% としている。また、昨年 Apple は App Store Small Business Program を打ち出して大きな譲歩をした。これは大多数の開発者に対して手数料を 15% に下げるものだ。(2020 年 11 月 18 日の記事“Apple、小規模開発者に対して App Store 手数料を 15% に下げる”参照。) けれどもその種の手立てもまだまだ少な過ぎ、遅過ぎなのかもしれない。
事ここに至れば、Apple としては最も論議を呼んだ App Store の方針と慣行に劇的な見直しを施すのが最も賢明なのかもしれない。例えば、アプリ内部に代替的な決済手段を設けることを認め、App Store の広告を撤廃し (あれは本当に価値があるのか?)、大手の開発者との特別契約を廃止し、審査の手続きを根本から見直してもっとうまく偽物のアプリを見つけつつ正当な開発者を不当に罰しないようにしてはどうか。また、Apple はストリーミングゲームサービスやエミュレータを App Store に取り入れることもできるはずだ。例えば iDOS は近年で最も素敵な iPad 用アプリの一つだったが、Apple は当初これを承認したものの、考えを変えて App Store から取り除いてしまった。
Quicken の最初の所有者である Intuit が Quicken 2007 を当時 Mac OS X と呼ばれていたものに対してリリースした時、それは Mac ユーザーがオンラインアカウントを同期し会計報告を作成することに向けた大きな一歩であった。Quicken 2007 には、私が必要としていた、そして今でも必要な幾つかの簿記要件が含まれており、そして改良されてきた:
SSD を追加し Big Sur にアップグレードした所で、私は Parallels Desktop 仮想マシンの中で Mojave を走らせるに必要な性能を手にした。これで、代替機を捜す間、Quicken 2007 と Mailsmith を走らせられることになった。
何にするか決める前に、私の iMac は最も高く付く方法で壊れてしまった。地元の店で調べて貰ったら、問題はマザーボードが壊れたことに行き着いた。修理には数百ドル掛かり、部品の交換は馬鹿げており、私は主たる仕事用コンピュータとするべく M1-based Mac mini を買うこととした。(私は M1-based 24-inch iMac には余り魅力を感じず、それに2台の 27-inch モニターが欲しかった。)
M1 への移行で、私は危機に陥った。私はどの様にしたら Quicken 2007 を走らせられるのか? 私は猛烈に忙しい月の半ばにいたので、安全策を取り、仮想 Mac を設定した。私は MacStadium を選んだ。それは遠隔 Mac を必要とする人達のためのコロケーションサービスで、最初の月に対して割引を提供していた。(他にも仮想 Mac 選択肢は有り、例えば Amazon Web Services にも幾つかあるが、"月に数時間単一のアプリのみ使う" と言う様な料金体系を持つものは存在しなかった。)
Quicken 2007 用の私が未だ使ったことのない Mac を捜してみようと思い、私は eBay で、2012 年代の Intel-based Mac mini で Mojave を走らせられ、買っても良いと思える程度に安価でありながら、そこそこのものを捜した。私は、2012 モデルで 4 GB の RAM と 500 GB のハードドライブがついた物を見つけ、購入した。それは、そのままの構成ではとても遅かったが、未使用の手持ちの 256 GB USB 3.0 SSD 上に Mojave をインストールした後では、キビキビと動く単一目的の Quicken 2007 マシンへと変身した。モニター経由で手早く構成を済ませた後、私はそれをネットワークで目覚めさせ、画面共有経由でしか使わないよう設定した。
この Quicken 2007 マシンを邪魔にならない所に置くため、私は Humancentric Mac Mini Mount ($17.99) を使い、それを机の下に取り付けた。(このマウントには VESA マウント用にあけられたネジ穴があるので, Mac mini をモニターの背面にも取り付けられる!)
隠れた Mac mini の写真を投稿した後、一人のオンライン友人が最新の Quicken Deluxe を調べてみるべきだと言ってきた。数年前、Intuit は Quicken を私的な投資グループである H.I.G. Capital に売却した。この会社は、製品を壊すのではなく、それに新しい息を吹き込み、ソフトウェア定期購読モデルに移行したように見える。
私の経験した一つの障害は、これらの同期を行う全ての取引追跡アプリに適用される。組織の中には二要素認証コードを 同期する度に 要求する所がある。通常は、時折か、特定のコンピュータやネットワークを認可した後になされる。私はこれに属するアカウントが3つあった:PayPal (個人とビジネス別々に) そして Bank of America クレジットカードである。Quicken Deluxe はこれを階層的に扱うので、手が掛かる。アプリはログインしようとする、コードが必要なことを認識する、あなたにコードを入力するよう頼む、コードを入力する、それを確認する、繰り返し、繰り返し。それは階層的なので、数分を要することになってしまう。この時間の浪費を避けるために、私はこれら3つのアカウントに対しては自動同期を無効にした、と言うのも、それらは使用頻度も比較的少なく、同期は手動で起動しても十分だからである。
今回のリリースから、Rogue Amoeba は Fission の Mac App Store での提供を中止した。これは Apple がストアの改良を怠ったからだ。Rogue Amoeba の Paul Kafasis は次のように述べている:
制約の多い Apple の方針による数多くの欠陥と問題点がわが社のソフトウェアの大多数で提供を不可能にしていることを鑑み、Mac App Store は明らかにわが社には合わないと判断せざるを得ない。今後はわが社の製品を Mac App Store に置くことはしない。
Mac App Store 版の Fission を持っている人のために、Rogue Amoeba はそれを直接ダウンロード版に移せる手軽な方法を提供している。(ただしそのためにはその Mac App Store 版を少なくとも一回はあなたの現行の Mac で起動したことがあることが必要だ。) (Rogue Amoeba からの新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、16 MB、 リリースノート、macOS 10.13+)
Primephonic が加わることで、Apple Music のサブスクリプションの登録者は、Primephonic のプレイリストや限定オーディオコンテンツをはじめ、大幅に向上したクラシック音楽体験を利用できるようになります。今後数か月のうちに、Apple Music のクラシック音楽ファンは、作曲者やレパートリー別のより優れたブラウズおよび検索機能やクラシック音楽のメタデータの詳細表示などの Primephonic の最高の機能、そして新しい機能やメリットにより、特化した体験ができるようになります。
Primephonic ではもはや新規でサブスクリプションの登録をすることができず、2021 年 9 月 7 日をもってオフラインになる。現在の Primephonic のサブスクリプションの登録者は Apple Music を6か月間無料で利用できる。
TidBITS 海外駐在員でありクラシック音楽ファンでもある Kirk McElhearn は長年にわたって iTunes や Music アプリがクラシック音楽をまともに扱えないと批判してきたが、今回の買収を「とても良い知らせ」だと言う。
Apple の Primephonic 買収は興味深い。この会社はストリーミング市場では非常に小さな存在だったが、クラシック音楽のみを提供してきた。Apple がクラシック音楽専用のアプリを作るなんて、私には思いもよらなかった。私はデジタル音楽の記事を書き始めた当初から iTunes や Music のクラシック音楽対応を批判して 1/2
Apple が WWDC で発表した iOS 15 の興味深い機能の一つが、運転免許証や米国の state ID (身分証明書) を iPhone や Apple Watch の Wallet アプリに保存できるオプションだ。発表の当時に Apple は何も詳細を明かさず、この機能はこれまで iOS 15 のベータ版に登場していなかった。けれども今回 Apple は多少の詳細情報を提供した。この機能はまずアリゾナ州とジョージア州の住民を対象に展開され、その後コネチカット、アイオワ、ケンタッキー、メリーランド、オクラホマ、ユタの各州が続く。おそらくその次はカリフォルニア、ニューヨーク、テネシー、ワシントンとなるのだろうと私たちは推察する。
Apple の発表はかなり細かいことまで述べているけれども、Daring Fireball の John Gruber は Apple との記者会見を通じてさらにもう一歩踏み込んだことを明かしてくれた。中でも最も重要なのは、iPhone のロックを外して画面に表示したり iPhone を手渡したりする必要がないことだ。識別情報は、Apple Pay の使い方と同じように生体認証を経た後で NFC を使ってリーダーに送信される。さらにもっと良いのは、必要な情報のみを共有するオプションをシステムが提供することだ。例えば、自分の年齢のみを示したい場合には、誕生日の日付を明かさずに年齢の認証ができる。(あともう一つ、記事の脚注部分に Gruber が多くの州の state ID の醜さについて汚い言葉満載で非難しているところも一読に値する。)