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#1695: Arc インスタントリンク、HomeKit 2.4 GHz の謎、Authy Desktop 終了、Apple 成績表

Mac 上で Authy Desktop を使っている人は、この一か月以内に代替方法を見つける必要がある。Arc ウェブブラウザは Adam Engst の生産性を高めるために大いに役立ってきたが、その続報として Adam が Arc の新機能、既知の場所へ素早くナビゲーションできる Instant Links 機能と新しい Arc Search iPhone アプリを検討する。Glenn Fleishman は HomeKit で遭遇した謎に取り組み、一時的に 2.4 GHz Wi-Fi ネットワークを構築することで解決したと報告する。また、TidBITS Talk になりすます新手のフィッシングメールについて警告するとともに、多くの TidBITS 寄稿者を含む Apple 関係の評論家たち 58 人の意見に基づく 2023 年 Apple 成績表を紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは DEVONthink 3.9.5、Evernote 10.76.2、Fantastical 3.8.12、GraphicConverter 12.1、Mellel 6.0.2、それに Tinderbox 9.7.2 だ。

Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

TidBITS Talk になりすますフィッシングメッセージに注意を

既知の送信者から来たように見えるように偽造されたフィッシングメッセージについては新しいことは何もないが、何人かの人が TidBITS Talk からであると主張する一群のフィッシングの試みを私に警告してくれたので、ここであらためて皆さんにそれは偽物であって迷惑メールとマークすべきものだと念押ししておきたい。

これらのメッセージはうまくは作られてはいない。From 行は TidBITS の大文字化を間違え、名前の後のアドレスは TidBITS Talk に関連付けられているそぶりすら見せず、メッセージの本文の URL は明らかに疑わしい。どちらのリンクも今は死んでいる。

TidBITS Talk forged phishing messages

そうではあるが、メールを読む時は警戒を怠らず、異常なことに注意を払い、未知のサイトへのリンクは絶対にクリックしないように。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Authy Desktop が 2024 年 3 月 19 日に終了を迎える

二要素認証のエコシステム Authy を所有する Twilio 社が、macOS、Windows、および Linux 用の Authy Desktop アプリを 2024 年 3 月 19 日をもって終了すると発表した。その日に Authy Desktop が動作しなくなるのか、それともこれ以上アップデートが出なくなるのか、どちらの意味であるのかははっきりしない。Twilio はその後も引き続きモバイルアプリは維持するので、同社はデスクトップアプリのユーザーに対してモバイルアプリに移行するようにと勧めている。これまで Authy Desktop はごく基本的なアプリに過ぎなかったので、Twilio にそれを維持する気持ちがなくなったとしても特に驚くには当たらない。Authy Desktop の主たる値打ちは、認証コードを Mac のアプリから手軽にコピーできて、iPhone アプリを見ながらコードをタイプし直す必要がなかった点だった。

Photo of Authy Desktop
私はこれまでスクリーンショットを使ってキャプチャできない独立アプリに出会ったことがないので、この写真はその種の機能の無意味さを際立たせるものとなる。

はるか昔、当時の Google Authenticator アプリがデータを新型 iPhone へ移行させることができないと知って (今はできるようになっている) 私は Authy のアプリに乗り換えた。けれども LastPass で複数回のデータ漏洩があったのを見て、私は 1Password に乗り換えて 1Password が内蔵する二要素認証に依存するようになり、Authy は単なるバックアップ用に使い続けるのみにした。(2023 年 3 月 3 日の記事“LastPass がデータ漏洩についてさらなる詳細を公表”参照。)

では、もしあなたが Mac 上で二要素認証コードへのアクセスを維持したい場合、何をすべきだろうか? Apple silicon 搭載の Mac を使っている場合は、Mac 上で iPhone 版の Authy を走らせ、Authy の Backups 機能を使ってトークンを同期するのが最も簡単な回避策だ。Intel ベースの Mac を使っている場合や、ちゃんと Mac を重視してくれる会社に乗り換えたい場合のために、Twilio は二要素認証を提供するデスクトップアプリをいくつか挙げている。

そのうちフル機能のパスワードマネージャでないのは Authenticator Chrome 拡張と Step Two のみだ。Step Two は Authy Desktop に最も近い代替製品と言える。どうやら最大 10 個のアカウントまでは無料のようで、$9.99 のアプリ内購入でロックを外しアカウント数を無制限にすることができる。Step Two は iCloud 経由の同期をするが、モバイル版は $9.99 の別売となっているようだ。既に Setapp のアプリライブラリを購読している人にとっては魅力的で、デスクトップ版とモバイル版の双方が Setapp から利用できる。個人的意見を言えば、二要素認証にも対応したパスワードマネージャを使うことをお勧めしたい。例えば、Apple が内蔵している Passwords (2021 年 10 月 7 日の記事“iOS 15、iPadOS 15、Safari 15 のパスワード入力に二要素認証コードを追加”参照)、1PasswordBitwarden PremiumKeePassXCSecrets などがある。

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Glenn Fleishman

HomeKit アクセサリを 2.4 GHz Wi-Fi ネットワークに接続し直す

ほぼ2年前、我が家は天然ガス炉を冬の暖房と夏の冷房を提供する2段ヒートポンプに交換した。この切り替えの一環で、新しい温調器が必要となった。何かHomeKit に対応するものが欲しかったので、地元の公共事業からの大幅な割引の付いた Copeland の Sensi Touch を選んだ。HomeKit 用に設定する中で幾つか初期の失敗をしたことを覚えているが、余り時間をかけることなく動かせるようになった。その後、昼と夜のスケジュールと、我が家全員が家を出る時や戻る時の自動化を追加したが、過去 20 ヶ月間は問題なく働いてきた。

Sensi Touch smart thermostat

しかしながら、最近、目が覚めた時、家は寒かった。温調器と温度計はどちらも我が家のデフォルトの夜間設定である 62°F (16.7°C) を示していた - 昼間の設定よりかなり下にしている。手動制御で、通常の昼間温度である 67°F(19.4°C) に上げた所、ヒートポンプが作動した。iPhone を見てみたら、Sensi Touch が HomeKit と通信していないことが分かった;機器のパネルで見てみたら、Wi-Fi に接続出来ていない事が分かった。(ひょっとすると、小悪魔が前の晩にルーターに悪さをした? 原因が判明することはないと思うが。)

手っ取り早い解決策、と私は思った! 私はその Wi-Fi をオフにしてオンにした -運はなかった。私はルーターのいくつかを再起動してみた。変化なし。私は温調器を再ペアリングしようと試みた:済みません、それはすでに HomeKit に追加されています。Home アプリは、温調器のエントリを削除して元に戻そうとした後でも、削除された機器はまだ存在すると主張した。ひょっとすると、私たちのHomeKit ハブとして機能していたのは Apple TV であったかも知れない? 私はApple TV を再起動し、おまけに、新しい Home アーキテクチャの下では HomeKitハブではないにもかかわらず、私たちのネットワーク上の2台の iPad の電源を落としたりもした。何も起こらない。TidBITS の友人の Geoff Duncan からのアドバイスを得て、私は Apple TV のアカウントからログアウトしてログインし直し、それで HomeKit の破損は解消するかもしれないと考えた。とんでもない。

最後に、Sensi Touch 上の我が家の HVAC 構成の全ての詳細設定画面の写真を撮った後、工場出荷時に戻す再起動を行った。(全てのヒートポンプの設定は保持されていて、助かった!) 今度は、Home アプリに Sensi Touch を追加しようと試みることは出来たが、その過程は最後まで行き着けなかった - Sensi Touch はネットワークに接続出来ないと言い続けた。

ここで、私は設定を実行する時に、Sensi アプリで注意を払っていなかった詳細に気づいた。Sensi Touch と Copeland の無料の "クラウド" (彼らの言い方) を使えば、スケジューリング、使用状況、その他の詳細、或いはそれを HomeKit にオプトインさせたり出来るという事である。そのアプリは、Sensi Touch には 2.4 GHz Wi-Fi ネットワークが必要で、iPhone は 2.4 GHz に接続している必要がある と指摘していた。

私はそれ迄この事を考えてみたこともなかった。と言うのも、私のネットワーク上の全てのルーターはデュアルバンド (2.4 GHz と 5 GHz) であり、家の周りを歩き回っても、バンドに関係なく、すべての機器がお互いを "見る" ことが出来るように、全ては同じネットワーク名とパスワードを持っていたからである。

問題はそこにあった:どうやら、私の iPhone は一貫してより高速な 5GHz ネットワークを使用していたらしい。私のネットワークは同じ名前だったので、iPhoneに 2.4GHz を強制的に使用させることは出来なかった。

私がしたことは次のとおり:

  1. 私の主ルーターである NetGear 機(それは温調器に最も近い)上で、2.4 GHz帯を使うゲストネットワークを設定した。多くのルーターは、2.4 GHz および 5 GHz のゲストネットワークを別々の名前、セキュリティ、およびその他の詳細を持たせて設定出来る。
  2. 私は 2.4GHz のゲストネットワークに独自の名前とパスワードを与えた。
  3. ルーター上で "ゲストがお互いを見て、私のローカルネットワークにアクセスするのを許す" という設定を有効にした。殆どのルーターが同様の設定を持っている。
  4. 私の iPhone 上で、2.4GHz のゲストネットワークに接続し、HomeKit のペアリング過程を開始した。

NetGear 2.4 GHz guest network

成功! ステップ3は重要であることに注意して欲しい。最初にやった時、それをやっていなかったため、Sensi Touch は自らのクラウドには接続したが、HomeKitには接続しなかった。Mastodon でこれについて言及した時、誰かがゲストネットワークは通常セキュリティのために Bonjour(mDNS)や他のネットワークブロードキャストトラフィックをメインネットワークから分離していることを思い出させてくれた。ステップ3でこの機能を有効にする事で、mDNS ブロードキャストが可能になり、HomeKit が検出された。

こんな事が起こったので、私は更なる調べをしてみて、多くの HomeKit 機器には2.4GHz 無線しか含まれていないことを見つけた。これは、構成を簡素化してコストと電力使用量を低く保つ点で理にかなっている。HomeKit をサポートするスマートデバイスは、通常、少量のデータを送受信する必要がある - Sensi Touch は、多く見積もっても、おそらく一日当り数メガバイトしか送信していないであろう。殆どの場合、2.4 GHz ネットワークは 5 GHz ネットワークよりも優れた到達範囲を提供する。(これは、障害物が 5 GHz をより阻止しやすいためである;帯域幅をより必要とする機器は、短距離では 2.4 GHz よりも大幅に多いスループットを提供する 5 GHz を好む。) 5 GHz を要するものは存在し、HomeKit 対応の防犯カメラの様な、より高いスループット接続の恩恵を受けることが出来る。しかし、スマート温調器、コンセント、電球と言ったものは通常 2.4GHz しか使用しない。

Wi-Fi と HomeKit の容易さ故、私は明らかな解決策を見落とした! 私は自分自身を Wi-Fi の専門家だと思っているが、問題の間違った端から始めてしまい、5分間で済む問題を1時間以上かかる問題に変えてしまった。この記事が同じような状況にいる他の人を助けることに役立てばと願うものである。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Arc の新機能 Instant Links、タブグループ化、Arc Search iPhone アプリ

かつて私は Browse By Name と呼ばれる Google 機能が大好きだった。(2011 年 4 月 6 日の記事“Browse By Name で Google Chrome や Safari 5 のサーフを高速化”参照。) ウェブブラウザがこれを使うように設定しておくと、アドレスバーから実行した検索はたいていの場合、検索結果を表示することなく望みのページを直接開いてくれた。概念的にこれは Google の "I'm Feeling Lucky" ボタンと似た働きをした。このボタンは検索の最初のヒットを直接開いてくれるからだ。その後、Google は何年もかけて Browse By Name 機能を廃止の方向へと押しやり、 TidBITS Talk での議論から 察するところでは 2021 年にはどうやらまだ使えていたようだが、この機能が 完全に使えなくなったという去年の投稿を 見つけた。Google が Browse By Name 機能を廃止したのは驚くに当たらないし、他の検索エンジンでその種の機能を提供しているものもない。なぜなら、その種の機能は収益を産む広告を表示する機会を回避することになるからだ。

Instant Links

検索エンジンの広告を強制的に見せるというのは、The Browser Company の新しいウェブブラウザ Arc の開発者たちが掲げた目標には含まれていない。アップデートを紹介するビデオの中で CEO の Josh Miller が語っているように、Arc はあなたが望むものを、あなたが望む時に、Instant Links と呼ばれる新しい AI 駆動の機能を用いて提供しようとする。この機能は Arc > Settings > Max でオン/オフを切り替える。機能をオンにした場合、検索を実行する際に Shift-Return を押せば、Arc はまず検索を実行してからあなたが望むものを判定してそれを返す。必ずしも常に正しい判定であるとは限らないが、なかなか良い結果が出ていると思う。例えば "Vision Pro specs" とタイプしてから Shift-Return を押せば、直接 Vision Pro Tech Specs ページが開く。

Arc Max new features

Arc Max Instant Links Folder

それだけではない。Instant Links 機能が複数個のタブを開いてくれることさえある。ビデオの中で Miller が実演しているように、"YouTube videos of Steve Jobs introducing the Mac, iPod, iPhone, and iPad" (Steve Jobs が Mac、iPod、iPhone、iPad をお披露目している YouTube ビデオ) という入力に対しては4個のタブが開き、それぞれが該当するビデオを示す。その上さらに、"Make a folder containing YouTube videos of Steve Jobs introducing the Mac, iPod, iPhone, and iPad" (Steve Jobs が Mac、iPod、iPhone、iPad をお披露目している YouTube ビデオを含むフォルダを作れ) と Arc に命じれば、それらが一つのピン留めされたタブフォルダの中に入る。複数個の結果を返せる Arc の機能は必ずしもあなたの望みとは一致しないかもしれない。私が Arc に "Make a folder of TidBITS articles about BBEdit" (BBEdit に関する TidBITS 記事のフォルダを作れ) と命じたところ、ある程度関連のある TidBITS 記事やその他のページがいくつか集められた。時には一つのものだけしか返されないこともあった。

私はこの Instant Links 機能が (そしてかつての Browse By Name 機能が) 重要だと強調したい。なぜなら、私たちは答を知らない質問をするために検索する場合よりも、むしろウェブ上にある既知の場所を開くために検索エンジンを使う場合の方が多いと思うからだ。「現在 App Store にどのくらいの数のアプリがあるか?」という質問に答を提供できるサイトがどこにあるのかは知らないけれども、「Vision Pro の仕様」を調べたくて検索する場合にはどこにあるかが既に分かっているので、Google の検索結果が羅列されたベージを経由する必要は全くない。たとえ検索エンジンが違う意図を持っていたとしても、ブラウザは私たちの意図のために働くべきだ。

Tidy Tabs

他の Arc ユーザーたちがピン留めタブ (頻繁に訪れるサイトやページ) と Today タブ (短時間のみ必要な一時的ページで、スケジュールに従って Arc が閉じても構わないもの) の概念的区別をどうやって処理しているのかは知らないが、私自身は Arc が 7 日間経った Today タブをアーカイブするように設定している。ただ、たいてい私はタブを時々巡回して、不要なタブは自分の手で閉じ、必要なタブにはピン留めをして勝手に閉じられないようにしている。

Arc Max Tidy Tabs

でも、あなたの眼前に多数の Today タブがある場合には、もう一つ別の Arc Max 機能が役に立つかもしれない。これも今回の新機能だが、Tidy Tabs を有効にすると、Today タブの一番上のところにある小さな茶色のアイコンをクリックすれば、Arc がタブをカテゴリーごとに分けてグループ化してくれる。私の推測だがおそらく Arc は AI を使って個々のページのコンテンツを評価することで適切なカテゴリーのラベルを割り当てているのだろう。私のテストでは、かなり正確にカテゴリー分けができていた。いったん Arc がいくつかのページをカテゴリー分けした後は、カテゴリー名の上にポインタをかざすと、そのカテゴリーをピン留めされたタブフォルダに変えるボタンと、そのカテゴリーの中のタブをすべて閉じるボタンとが表示される。また、タブをドラッグしてカテゴリーから別のカテゴリーへ移動させることもできる。この Tidy Tabs 機能は私にとって画期的というほどではなかったが、時々便利に使えた。

Today タブをたくさん使う人は、Arc のもう一つの更新された機能を知っておくとよいだろう。サイドバー上でピン留めタブのセクションを丸ごと折り畳んで、Today タブだけが見えている状態にすることができるようになった。サイドバーの一番上にあるワークスペース名をクリックすることで、ピン留めタブの折り畳みと展開ができる。

Arc Sync

The Browser Company は複数の Arc のインスタンスの間でスペース、フォルダ、タブを (つまりはサイドバー上にあるものすべてを) 同期するための自社独自のソリューションを開発した。(履歴、パスワード、拡張、Favorites タブ、およびプロファイルは現時点ではデバイス間の同期ができないが、The Browser Company は近いうちにそれらの同期機能も追加したいと言っている。) 従来、Arc は iCloud に依存していたけれども、それは時々低速になったり不安定になったりしていた。ただ、私の推測では iCloud を使わないようにした最大の理由は新しいベータ版の Windows 用 Arc のためにクロスプラットフォーム対応を望んだからだろうと思える。もしも私が Apple デバイスに加えて Windows も使わなければならないようになったなら、断然このベータ版を使ってみたい。

Arc Sync はエンド・ツー・エンドの暗号化を使った同期だ。これをセットアップすると、Recovery Card が示される。そこに表示された文字列を使えば、たとえ Arc アカウントのパスワードを忘れてしまい、同期セットの中の他のデバイスにアクセスできなくなったとしても、自分のデータにアクセスできる。

Arc Sync Recovery card

Arc は近いうちに iCloud 同期を廃止する予定なので、Arc Sync に切り替えておく価値はある。その手順は Arc > Settings で開始する。既に iPhone 上で Arc の Mobile Companion アプリ (現在は Arc Sidebar Sync と改名されている) を使い慣れていても、心配することはない。このアプリは新しい Arc Sync でも動作する。ただし現時点ではバグのせいで Tidy Tabs カテゴリーの内容が Arc Sidebar Sync に表示されない状態だが。

Arc Search iPhone アプリ

名前が変わったこと以外、Arc Sidebar Sync は同社の開発者たちからあまり注目を得なかった。今はその理由が分かる。数週間前に、The Browser Company は Arc Search という名前の新しいモバイルアプリをデビューさせて、私たちが iPhone 上でブラウズするやり方を考え直そうとした。どうやら当初の考え方は、iPhone でのブラウズの大半は検索を巡るものであるのでこのアプリを開く際には (素早くアクセスするためのロック画面ウィジェットもある) 検索語を入力できるようになっているべきだというものであったようだ。私としては、検索語を口述するためのマイクロフォンボタンも付けて欲しいし、口述による検索をデフォルトにする設定項目も欲しいと思う。

デフォルトで、Arc Search はあなたが検索語を入力して Go ボタンをタップすると Google 検索結果ページを表示する。他の検索エンジンを選ぶこともできるが、Brave Search は候補に含まれていない。

Arc Search Google results

検索画面に見える Browse for Me ボタンに注目して頂きたい。Go ボタンをタップする代わりに Browse for Me ボタンのどれかをタップすると、Arc Search はその検索結果ページに表示されるべきだったものから上位の6つのウェブページを読み込んで、それらのページのコンテンツを要約した“ウェブサイト”を構築する。そこには元のページへの参照リンクもある。このやり方がどの程度有効かは、あなたがどんなタイプの検索をするかに依存する。私はまだ感じを掴もうとしている段階だが、例えばレストランのお薦めなど与えられたいくつかの選択肢のうちから選びたい場合にはうまく働くし、その話題についてまず全体的な概観をしてそれからもっと詳しいページを調べて行くような場合にも効果的だ。

Arc Search Browse for Me results

Arc Search でのやり取りのモデルには多少の慣れが必要だ。例えばあるページをロードしてから、そこにあるリンクをタップして別のいくつかのページへナビゲートしたとしよう。その際、右へスワイプしてナビゲートを戻ったり、左へスワイプしてナビゲートを進んだりできる。けれども最初のページで右へスワイプすると、そのタブ全体をアーカイブしてから前回の検索結果を示したタブに戻ることになる。慣れないと、一体どうなっているのかと思わされる。

Arc Search には2つの種類のタブの集まりがある。アクティブなタブと、アーカイブされたタブだ。左下隅のタブスタックボタンをタップすると、iOS のアプリ切替を思わせるタブ切替が開く。ここで、スワイプしてアクティブなタブをすべて見ることができ、その一つをタップすればそれがスタックの一番上に来る。このやり方で、最近使ったタブに戻るのは簡単だ。ただ、ここで左へスワイプしてナビゲートしてはいけない。それをすると現在のタブがアーカイブされてしまい、タブ切替から除外される。タブ切替の中で上へスワイプしてもそれがアーカイブされる。

Arc Search tab switcher

アーカイブされたタブはなくなった訳ではなくて、空間効率の良いリストにブラウズしやすい状態でしまわれているだけだ。そこにアクセスするには、タブスタックボタンをタップしてタブ切替を開き、それからスクリーンの一番下にあるタブボタンをタップする。Arc Search は先週の分については一日ごとに、それより古いものについてはもっと長い期間ごとに分離して整理する。アーカイブされたタブのどれかをタップすれば、期待通りにそれがアクティブなタブスタックの一番上に来る。

Arc Search archived tabs

Arc Search のツールバーの右側に上向きの矢印がある。これをタップすればコントロールにアクセスでき、進む・戻る風のボタンの付いたアドレスバー、そのページを Arc Search の検索フィールドの下にあるお気に入りに追加する星形ボタン、および再読み込みボタンが使える。もっと興味深いのは Reader Mode、Find on Page、Copy URL、Share の各ボタンで、私が iPhone 上でブラウズする際にしたいことの大半をこれらがカバーしている。Settings ボタンを使えば Arc Search がデフォルトで広告、クッキーバナー、およびトラッカーをブロックしていることが分かり、スワイプしてナビゲートする挙動が気に入らない人はここでスクリーンの縁からのスワイプに限定させることもできる。

Arc Search options and settings

当初私は Arc Search の価値について疑いを持っていたが、疑わしきは罰せずということで試しにこれをしばらくの間デフォルトのウェブブラウザにしてみた。今もまだ慣れる途上にはあるけれども、Safari に戻りたいと思ったことはない。Safari では、とにかくタブの管理がどうしようもない状態だと思うからだ。電子メールから、あるいは実行した検索から、その中のリンクを使ってとてつもない数のタブを開くようになれば、いずれは嫌になって全部閉じてしまうかもしれない。それに比べて Arc Search が維持するアーカイブ済みタブのリストは整理されている感じがずっと強く、前のタブに戻ろうとする際にも目障りだとあまり感じさせず便利に使える気がする。

Arc Search で決定的に欠けているのは、デスクトップ上の Arc との繋がりがないことだ。Arc Sidebar Sync アプリは決して完璧とは言えないけれども、私が使っているすべてのスペースの中のすべてのピン留めタブへのアクセスを提供してくれる。つまり、私にとって重要なサイトならどこへでも、2回ほどタップするだけでアクセスできる。(その際、1Password が自動的にパスワードを入力してくれることも、とても大きな要素だと言える。) だから、友人たちとディナーの卓を囲んでいて、次の競技会には何人ぐらい出場登録をしているかと誰かに尋ねられたら、私はほんの数秒のうちに登録システムにログインして調べることができる。

私の一番の望みは、The Browser Company がデスクトップ上の Arc のサイドバーと iPhone 上の Arc Search との間で同期するためのエレガントな方法を作り出してくれることだ。ピン留めされたタブについては Arc Sidebar Sync がうまく働くけれども、Safari で共有されたページを受け取ってあとでデスクトップ版の Arc で読みたいと思っても、今のところその挙動はあまりにも頼りない。また、頻繁に使うサイトを集めた Favorites タブについて The Browser Company はまだ一度も共有させてくれておらず、その点がとても苛立たしい機能欠落だ。現状は、iPhone アプリが2つあって、片方はデスクトップ上の Arc との共有された状況を反映するためのもの、もう片方は私たちが iPhone 上でブラウズするやり方を考え直すためのたたき台と言えるものだ。

以前にも言ったことだが、ここでもう一度言っておこう。Arc は私が過去十年間に使ったどのアプリよりも大きく私のデジタル体験を変えた。これを使うことで、私は以前よりずっと速く、ずっと生産的に仕事ができる。そして、毎週のアップデートで次々と登場するさまざまのちょっとしたこともあって、これを使っている時間を大いに楽しめている。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

DEVONthink 3.9.5 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

DEVONthink 3.9.5

DEVONtechnologies が DEVONthink 3.9.5 をリリースして、数多くの「生活の質に関連した」改良、およびバグ修正を施した。この書類および情報マネージャは今回、Arc ウェブブラウザからのクリッピングへの初期対応を含み、ブックマークレット Formatted Note を追加してウェブページのキャプチャの信頼性を (有料ページであっても) 高め、Evernote から .enex ファイルを読み込む際に OCR で追加されたテキストを保持するようにし、より幅広い種類の書類で PDF 注釈の信頼性を高め、PDF 書き出しを改良して目次を維持するようにし、クリップボードから画像を Markdown 書類へコピーする際の信頼性を高め、macOS 14 Sonoma の下でウィンドウの寸法を正しく維持するようにし、Markdown 書類をフォーマット付きノートやウェブページに変換する際のエラーを修正した。(DEVONthink 新規購入 $99、DEVONthink Pro 新規購入 $199、DEVONthink Server 新規購入 $499、TidBITS 会員にはそれぞれ 15 パーセント割引、無料アップデート、リリースノート (バージョン番号の上にポインタをかざす)、140.6 MB、macOS 10.14+)

DEVONthink 3.9.5 の使用体験を話し合おう

Evernote 10.76.2 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Evernote 10.76.2

前回 Evernote を紹介した時以後、2023 年 1 月にヨーロッパのテクノロジー会社 Bending Spoons がこの情報管理アプリを買収した。そして今回 Evernote 10.76.2 がリリースされて、無料ユーザーのために重大な変更を施した。これまで有料ユーザーのみに提供されていた 14 個の機能が無料アカウントでも使えるようになったのだ。具体的には、旧バージョンのノートの閲覧、オフラインのノートとノートブック、PDF や画像の注釈、名刺のスキャン、書類と画像の検索、グローバルキーボードショートカットのカスタマイズ、ノートを電子メールで Evernote に送る機能などだ。今回のアップデートではまた、ノートの中で画像を揃えるオプションを追加し、検索の最中に Notebook リストの中でスタックが表示されなかった問題を解消し、Scratchpad でのコンフリクトの問題に対処し、新しいユーザーインターフェイスでのタグ並べ替えの問題を修正している。(Evernoteからも Mac App Store からも無料、294.4 MB、リリースノート、macOS 10.14+)

Evernote 10.76.2 の使用体験を話し合おう

Fantastical 3.8.12 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Fantastical 3.8.12

Flexibits が Fantastical 3.8.12 をリリースして、このカレンダーアプリに改良とバグ修正を施した。今回のリリースでは Fantastical Openings ミーティングテンプレートへのマーク付けが個人ページ上でも見えるようにし、Zoom アカウントの信頼性を高め、Microsoft Teams カンファレンス URL の探知を改良し、Outlook からドラッグすることで電子メール付き新規イベントを作成する機能に対応し、ローカルな On My Mac カレンダーに出席者を追加できなかった問題を解消し、誕生日や記念日のアラートへの変更が即座に有効とならなかったバグを修正し、一部の Microsoft 365 アカウントでタスクがすぐにアップデートされなかった問題に対処し、Event List ウィジェットが境界を超えて拡がることがあったバグを修正した。(Flexibits からも Mac App Store からも購読年額 $56.99、無料アップデート、61.4 MB、リリースノート、macOS 11+)

Fantastical 3.8.12 の使用体験を話し合おう

GraphicConverter 12.1 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

GraphicConverter 12.1

Lemkesoft が GraphicConverter 12.1 をリリースして、このグラフィックスプログラム Swiss Army ナイフに新機能と機能更新を加えた。今回のリリースではウォーターマークフィルターとブラウザアクションを装備し、HDR 画像を画像エディタ内に表示する機能に対応し (macOS 14 Sonoma と HDR 対応スクリーンが必要)、Apple gainmap を使用した JPEG および HEIC 画像を HDR として直接インポートできるようにした。今回のアップデートではまた、webP アルファのサポートを改善し、ブラウザでの PDF 表示を改善し、角度をつけてテキストを挿入するバッチアクションを追加し、匿名化のためのナンバープレート探知を改良し、十字線ツールに線のバリエーションを追加し、Sonoma で非常に大きな画像をスクロールする際の問題を修正し、コラージュ作成時にメモリリークが発生する可能性を修正した。(Lemkesoft からも Mac App Store からも新規購入 $39.95、無料アップグレード、157.8 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

GraphicConverter 12.1 の使用体験を話し合おう

Mellel 6.0.2 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Mellel 6.0.2

Mellel が会社名と同名の Mac 用ワードプロセッサのバージョン 6.0.2 をリリースした。新しい Vertical Split 表示モードを追加する、メンテナンス・アップデートだ。今回のリリースでは Mellel View と Compact View をそれぞれ Mellel Layout と Compact Layout に改名し、行の折り返しを伴うインライン画像を処理しようとする際に Mellel をハングさせた問題を解消し、インライン画像を選択する際に起こることがあったハングに対処し、画像またはテキストのボックスをインラインからフローティングへ変更する際に Mellel をクラッシュさせことがあったバグを修正し、幅の狭い表示におけるルーラの表示を改良し、分割表示の区切り線表示でコントラストを改善し、引用項目を含んだ表のセルを編集する際に文献スキャンをするとその後 Mellel の挙動がおかしくなったバグを修正した。(新規購入 $69.99、アップグレード $44.99、94 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Mellel 6.0.2 の使用体験を話し合おう

Tinderbox 9.7.2 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Tinderbox 9.7.2

Eastgate Systems が 12 月にノート取りアシスタント Tinderbox のバージョン 9.7 をリリースして、新しい Table 表示を装備した。これは好きなノートやコンテナのシンプルな概観を提供し、それを Markdown や HTML としてコピーしたり、スプレッドシートの中へペーストしたりできる。今回のアップデートではまた、辞書アトリビュートの表示を改良して表示されるアトリビュート表の中で複数行で表示できるようにし、名称未設定ノートの自動削除を Map 表示にも拡張し、Autofetch を改良して HTML でないコンテンツを取り込む際に空白類文字を保持するようにし、エージェントのアップデートの最中にアウトラインやチャートアイコンを描画すると起こることがあったクラッシュを修正した。

最近になってバージョン 9.7.2 が出され、非常に古い日付の処理を改良し、Displayed Attributes ピッカーを Roman アルファベット以外にも拡張し、お気に入りフォルダの中からファイルを開く際に Recent Files リストにお気に入りファイルとして置かれないようにした。(新規購入 $249、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、38.2 MB、Tinderbox Help 内にリリースノート、macOS 11+)

Tinderbox 9.7.2 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

2023 年の Apple: Six Colors 成績表

Six Colors の Jason Snell が毎年恒例の Apple Report Cardを公開して、長年の TidBITS 寄稿者 Glenn Fleishman、Michael Cohen、Jeff Carlson、Josh Centers、Kirk McElhearn、Rich Mogull、Joe Kissell を含む 58 人の Apple 観察者たる執筆者、編集者、開発者、ポッドキャスターその他のプロたちの声をもとに、成績表をまとめ上げた。

今回成績が上位に評価されたのはハードウェア信頼性、Mac、および iPhone の各カテゴリーで、iPad は HomeKit を抜いて最下位に落ちた。

Six Colors Apple Report Card 2023

去年はほどんとのカテゴリーで前年に比べて上昇したり少しだけ下降するに止まったりしていたが、Apple の主要製品3部門、つまり iPhone、iPad、Mac がいずれも前年より下降していた。(2023 年 2 月 9 日の記事“2022 年の Apple: Six Colors 成績表”参照。) けれども今年は、Mac の点数は変わらず、iPhone が少し上昇して前回の下降分以上を取り戻し、iPad は急下降を続けた。Apple は Apple Watch、Apple TV、Services、および Wearables でも今回はそれぞれかなりの下降を示した。一方、HomeKit、ハードウェア信頼性、ソフトウェア品質、対開発者関係、および環境/社会性の各カテゴリーは上昇した。2023 年にこのように評価が変動したのがなぜなのかについては、ぜひ Six Colors のレポート記事をお読み頂きたい。そこに、皆さんお気に入りの Apple 評論家たちの明快な発言も載っている。

Six Colors Apple Report Card category changes 2023

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