TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1240/15-Sep-2014

さあ、心の準備をして頂きたい。今週号の TidBITS は並外れた内容だから! まず Apple Watch と、記録破りの iPhone 6 および iPhone 6 Plus に初対面の挨拶をしよう。けれどもその一方で、印刷版の Macworld と、iPod classic にサヨナラを言おう。Apple は Apple Pay を発表して決済ビジネスの革新を目指そうとしているので、Adam Engst と Rich Mogull が協力してその動作の仕組みを説明する。Adam は Apple が競争力を増すために出した新しい iCloud ストレージプランについても詳しく解説し、Josh Centers は Apple が 5 億個の iTunes アカウントに配った無料の U2 アルバムを入手する方法と削除する方法を説明する。最後にもう一つ、Agen Schmitz が今週の FunBITS 記事で、Amazon の Prime Music について深く掘り下げる。これは Spotify、Rdio、Beats Music といったものと肩を並べることができるのだろうか? 今週注目すべきソフトウェアリリースは、Parallels Desktop 10.0.2、TextExpander 4.3.3、Marked 2.4.1、それに iTunes 11.4 だ。

記事:

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Apple、新しい Apple Watch をプレビュー

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週 Flint Center で iPhone 6 と Apple Pay を発表した後、Apple CEO の Tim Cook はちょいと時間を遡って、恒例だったのにもう何年も使われていなかった有名なあの言葉「There's one more thing (あともう一つあります)」を言ってのけた。その "もう一つの thing" とはもちろん、長らく待ち望まれた Apple のスマートウォッチだ。その名前として、Apple が映写したスライドでは "(Apple ロゴ)WATCH" というロゴ表示が使われたけれども、幸いにも同社のウェブサイト上では普通の文字を使った "Apple Watch" という名称が使われている。

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けれども、あなたがそれを手にするのはかなり先になる。この Apple Watch は 2015 年の前半にならないと入手できない。また、これは一つだけのデバイスではなくて、三つのシリーズに分かれ、さまざまの機種のものがある:

それぞれのシリーズに多数の異なるモデルがあり、サイズは 38 mm と 42 mm の二種類、ベルトもさまざまで、耐久性ある色付きプラスチックで磁気留め具付きのものから、各種の伝統的なバックルタイプ、さらには Milanese ループまである。さまざまの Apple Watch シリーズを合わせれば、提供される組み合わせの可能性は何十種類もある。私が覚えている限り、Apple が一つの製品に最初からこれほど多くの異なるモデルを同時に提供したことはかつてなかった。その上、Apple の今回の最新の製品を現在市場にある他のスマートウォッチとデザイン面で比較すれば、いやいや比較にも何にも ならない。間違えようもなく腕時計のように見えるスマートウォッチというのは、私の知る限りこれが初めての製品だ。

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この Apple Watch は、多くの腕時計と同様、防水仕様だが完全防水ではない。つまり、雨の中で着けていたり、着けたまま手を洗ったりする程度ならば問題ないけれども、着けたままシャワーを浴びたり泳いだりしてはいけない。アスリートたちの場合は、土砂降りとシャワーに大した違いがないのでこの程度の防水では不安かもしれない。

でも、そういうことはどれも表面的なものばかりだ。では、この Apple Watch は実際何をするのか? どういう風にするのか?

時計としては、Apple によれば文字盤が数百万もの違った顔を持てるという。この Apple Watch には多種多様なソフトウェア文字盤があり、その多くは時計メーカー用語で言う「複雑時計」のカスタマイズができる。Apple Watch の複雑時計としてはストップウォッチや株価レポートもあり、月の満ち欠けや会議の予定を表示することもできる。もちろんスクリーンはタッチ対応だが、それは単なるマルチタッチ機能のみではない。Apple Watch のスクリーンはタッチの圧力も感知するので、軽いタップと、深く押す操作とを区別できる。この機能を Apple は "Force Touch" と呼んでいる。

インターフェイスを制御する手法自体は、初代の iPod の旧式クリックホイールと、iPhone のタッチスクリーンとの混合と言ってほぼ間違いない。スクリーンの脇には腕時計の竜頭(つまみ)があって「デジタルクラウン」と呼ばれるが、これが制御のための主要な手段となる。このつまみをクリックしたり回転させたりすることで、スクリーン上のさまざまのアクションを制御できる。つまみの下の方にある第二ボタンを押せば、Apple Watch から iPhone への接続を利用して連絡可能な人たちのリストに切り替えることができる。

その通り、Apple Watch の機能の多くは、近くにある iPhone との協力を通じて働く。実際、動作には iPhone が必須だ。嬉しいことに、iPhone 5 またはそれ以降のすべての機種に対応する。iPhone と連携することで Apple Watch は連絡先にメッセージを送ったり、音楽を再生したり、内蔵のスピーカーとマイクロフォンを使って現実世界の Dick Tracy 風の腕時計無線機となったり、メールを処理したりなどのことができる。その「など」の中には Siri もあって口述筆記をしたり情報検索をしたりできるし、また新しいさまざまの形の個人対個人メッセージング機能もあって、例えばスケッチや、アニメーション化された絵文字、あるいは連続したタップをやり取りすることもできる。(この Apple Watch は触覚によるフィードバックもできるので、相手の送ったタップをあなたの手首で感じることができるようになる。)また、あなたの心拍をリアルタイムで相手と共有することもできる。

この最後の機能は、Apple Watch に内蔵されたさまざまのセンサーのお陰で働く。あなたの心拍数や、体の動き(例えば立ったり座ったりする動き)を計測でき、また iPhone の GPS と連動することによってあなたが朝のジョギングまたは自転車でどれだけの距離を走ったかも分かる。これらすべての情報やさらなる各種の情報はこのウォッチの Activity アプリと Workout アプリで扱われるほか、iPhone 上でも新しい iOS 8 の機能 HealthKit とやり取りできる各種のアプリでも扱われる。ただ、Apple はソファに座ったきりのカウチポテト族にも本格的なアスリートにも向くように Apple Watch をデザインしたと言っているけれども、Adam は私に、本格的な長距離ランナーの多くにとってウォッチに加えて iPhone まで身に着けて走るのは考えにくいことだと言っていた。長年本格的に競走に参加し続けてきたランナーたる Adam の言うことだから間違いないはずだ。

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また、こちらも iPhone と連携して働く機能だが、Apple Watch は店頭購入用デバイスとしても使え、Apple Watch 内蔵の NFC 通信機を使って商店の店頭にあるリーダー経由で支払いができる。これは、同じイベントで発表された新しい Apple Pay サービス(2014 年 9 月 9 日の記事“Apple Pay が代金決済業界に揺さぶりをかける”参照)によって可能となったものだ。[訳者注: Apple Pay はスタート時には米国のみにおけるサービスです。]

発表の際に Apple が実演した Apple Watch の機能の大多数は Apple のアプリによるものだったが、WatchKit API も提供されるので、独立の開発者がこれを使って自分自身のアプリを作成することもできる。おそらく iPhone 上のホストアプリとのコミュニケーションを必要とするのではないかとは思うが、Apple は今のところまだ詳しい情報を提供していない。

これだけたくさんのことが Apple Watch にでき、しかもサイズが小さいので、バッテリがどの程度保つのかという点が必然的に疑問となる。Apple は「アクティブな一日を過ごす」という以上のことを現時点では何も言っていない。この Apple Watch は、ウォッチの背面に取り付ける電磁誘導デバイスを使って夜のうちに充電する。充電時間がどの程度長くかかるのかについても Apple はまだ答えていない。私たちの予想では、毎晩ベッドに入る前に充電器を取り付ける必要があるという感じではないかと思う。

「黙って私の金を持って行け」というタイプの人たち(私自身もその列に加わるのではないかと思うが)は、最も安価な Apple Watch を手に入れるためでさえ少なくとも $349 を貯金しておく必要がある。最も高価なウォッチがいくらぐらいになるのか、いやむしろ、最安価なウォッチ以外のものの価格がどれくらいなのかというのも、現時点で答が出ていないもう一つの厄介な質問だ。

去年 Josh Centers が、どんなウォッチを Apple が出してくることになるのかと推測した。(2013 年 7 月 3 日の記事“iWatch を立証する”参照。)どうやら、彼の推測はかなり当たっていたようだ。彼の "claim chowder" に出てきた項目をいくつか挙げると:

なかなか美味しく出来たチャウダーじゃないか、Josh!

でも、はたして Apple Watch の売り上げは Apple にとって美味しいものとなるだろうか? $349 という価格であっても、Apple はきっとこの未来から来た時計をどっさりと売るだろうと私は思う。その上、今回発表されたものがバージョン 1.0 製品のプレビューに過ぎないことを考えれば、今後これらの製品シリーズがどんどん進化して、その価格帯も低価格と高価格の双方に広がって行くことだろう。

今年の年末のホリデーシーズンには、きっと「Apple Watch が欲しい」と書かれたカードが木の根元に置かれている光景が、あちこちで見られることだろう。

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Apple、大型画面搭載の iPhone 6 と iPhone 6 Plus を発表

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は先週二つの新しいモデルの iPhone を披露した:iPhone 6 と iPhone 6 Plus である。基礎となる iPhone 6 は 4.7-inch ディスプレイを、iPhone 6 Plus の方は超大型の 5.5-inch ディスプレイを備えている。

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このディスプレイはただ単に大きくなったのではなく、より良くなっている。両方とも Retina HD と称されており、"より小型の" iPhone の方は 1334 x 750 の解像度でそして iPhone Plus の方は 1920 x 1080 で表示される。どちらも全 sRGB 色標準をサポートし、そしてコントラスト、輝度、そしてホワイトバランスは更に強化されている。Apple は、より深い黒、より鮮明なテキスト、より広角の視野、そして屋外でもより見やすくする偏光板の改善を約束している。噂ではサファイヤスクリーンの採用が取り沙汰されていたが、どちらの iPhone 6 モデルもガラスのままである。

どちらの iPhone 6 もこれまでのものよりも薄い。iPhone 5s の厚さは 7.6 mm で iPhone 5c は 8.97 mm であったが、iPhone 6 の厚さは 6.9 mm でそして iPhone 6 Plus ですらも 7.1 mm に過ぎない。しかしこの大型の画面は重さに影響し、iPhone 5s と 5c の重量はそれぞれ 112 グラムと 132 グラムであったが、iPhone 6 は 129 グラムとなり、そして iPhone 6 Plus はずっと重い 172 グラムとなっている。

我々の所の Jeff Carlson は発表会にも参加しており、どちらのモデルもポケットに入れてみた (忍耐強い Apple のデモ係員の許可を得て) - そして結果としては、どちらのモデルも通常のジーンズのポケットに収まったが、iPhone 6 Plus の方は当然のことながらより大きく場所を取った。Ars Technica は iPhone 6 Plus の PDF テンプレートを載せているので、これを印刷し切り取ってみれば手にどの様に馴染むのかを確かめられる;厚紙に貼り付けてみれば、ポケットへの収まり具合も試せるかもしれない。Adam がやってみたら、iPhone 6 Plus は彼のジーンズのポケットに収まりはしたが、座った時、気持ち悪く食い込んできた。皆さんの状況は (そして身につけるものも) それぞれであろう。

長年の iPhone ユーザーには衝撃的とも言えそうな変更に、これ迄常に機器の上部にあった Sleep-Wake ボタンが、右側面、SIM スロットの上に移動されたことがある。Apple の理由は、ケースが大きくなっても片手操作をやりやすくすることある。Touch ID 指紋認証 Home Button は標準装備となっている。

画面の背後にあるのは Apple の第二世代 64-bit モバイルプロセッサ A8 であり、20 億個を超えるトランジスタを有し、以前の A7 よりも 25% 高速で、グラフィックス性能は 50% 向上している。Apple によると、新しい A8 は 50% エネルギー効率が良いとのことである。これは電池寿命につながり、全ての動作モードで iPhone 5s と同等か或いはそれを上回っている。iPhone 6 Plus に対する一つのボーナスは、iPhone 6 よりも電池寿命が長いことである。例えば、iPhone 6 では 10 時間の LTE ブラウジングが可能だが、iPhone 6 Plus ではそれが最大 12 時間まで延びる。そして、iPhone 6 では最大 50 時間の音楽再生を謳っているが、iPhone 6 Plus ではそれが最大 80 時間となる。

A8 と共に Apple の次世代モーションコプロセッサ M8 が使われており、これには高度を決める気圧用の気圧計が搭載されている (気象アプリにも役立つかもしれない)。センサーの改良により移動距離も推定出来るようになった。

また歓迎すべきは、カメラに対する大幅な改善である。iPhone 6 の 8 メガピクセル iSight カメラは f/2.2 の開口部を持ち、そして沢山の新機能が盛り込まれた。Focus Pixels は、DSL 高級機のより高速な焦点あわせのための自動焦点能力を再現する新技術である。このカメラにはまた、より高速でより正確な顔認識、被写体ぶれや手ぶれ補正のための自動画像安定化、そして最大 43 メガピクセル迄のより高解像度のパノラマが搭載されている。iPhone 6 Plus だけの機能としては、光学式手ぶれ補正があるが、これは低光度下での被写体ぶれを防ぐためにセンサーを動かして補正する。

ビデオは 1080p の解像度で最大毎秒 60 フレームを撮ることが出来、スローモーションビデオは、720p の解像度で 240 fps で撮れる (iPhone 5s で導入された 120 fps も勿論使える)。ビデオ撮影には、今や撮影対象を鮮明に捉え続けるための連続自動焦点、そしてビデオを安定に保つ映画レベルの動画手ぶれ補正が採用されている。

しかし本質的には、iPhone は電話であり、iPhone 6 はこれ迄にない接続オプションを持っている。LTE バンドは最大 20 であり、現在市場に出ているどのスマートフォンよりも多く、データダウンロードは LTE 上では最大 150 Mbps である。Apple はまた voice over LTE (VoLTE) を提供するので、使える地区では、音声の明瞭度は増すはずである。また、Apple の最新の AirPort ルーターの利点を生かす 802.11ac も搭載しており、iPhone 5s では標準である 802.11n よりもスループットは最大 3 倍になる。

iPhone 6 Plus の興味深い機能は Reachability で、これにより片手での操作が可能になる (そしてこれは多くの Apple 評論家がけなした Samsung の機能と似ている)。Home ボタンを二回触ると画面は下に動いて、親指でより届きやすくなる。iPhone 6 Plus はまた特別の横位置ビューを持っており、これは iPad 上での横位置ビュー機能と同様に働く。例えば、Messages では、横位置モードは左に会話のリストを表示、右側にあなたのメッセージを表示し、そしてホーム画面もその向きに合うよう回転する。一方、iPhone 6 は、iPhone 5s や iPhone 5c よりも大きな画面を持っているが、この方向性機能は得ていない。

両方の iPhone モデルで有効活用出来そうな一つのソフトウェアディスプレイ機能は Display Zoom であろう。これは、より大きくなった画面サイズを有効利用して、コンテンツの大きさを増加させる。既存のアクセシビリティの様に、全画面をズームするのではなく、Display Zoom はアイコンとボタンを大きくし、そしてまたタッピングのための標的領域を大きくする。これは、我々のように加齢が目にきている世代にはとりわけ嬉しい。

画面サイズに関して言えば、iPhone 6 と iPhone 6 Plus のより大型の画面サイズを十分に活用するには、アプリは微修正が必要となる。iPad 上の iPhone 専用のアプリの場合と同様、より大型の画面サイズに合わせられていないアプリは、Apple が "デスクトップ級スケーリング" と呼んでいるもので自動的に拡大される。

最後に、両方の iPhone 6 モデルとも初めて near-field communication (NFC) を採用する。これは Apple の新しい Apple Pay サービスの礎石となるものである。この話題についての詳細、そしてそれが両方の iPhone 6 モデルに内蔵された Touch ID センサーにどう依存しているのかについては、"Apple Pay が代金決済業界に揺さぶりをかける" 9 September 2014 を参照されたい。

どちらの iPhone 6 も 12 September 2014 に予約注文の受付を始めたが、出荷は 19 September 2014 となる。色は iPhone 5s と同じ:ゴールド、シルバー、そしてスペースグレイである。iPhone 6 のベースモデル は 16 GB のストレージが標準で $199 であり、節約志向の人向きである。もっと容量の欲しい人向けには、32 GB のクラスは削除されたが、64 GB モデルの値段が $299 に下げられ、そして、ついに 128 GB モデルが $399 で登場した。iPhone 6 Plus の値段はそれぞれのクラスで $100 プラスとなり、16 GB モデルが $299 から始まる。

9to5Mac によれば、64 GB と 128 GB モデルには、iMovie, GarageBand, Keynote, Pages, Numbers, そして iTunes U がプリインストールされてくるという;これらは 16 GB モデルに対しては無料ダウンロードとなっている。我々としては、使わない人や空き容量を確保したい人は、これらを削除出来ることを願う。

Apple は新しいケースを用意しており、シリコーン製と革製がある。シリコーンケースの値段は、通常の iPhone 6 用は $35 で、iPhone 6 Plus 用は $39 であり、色は黒、青、ピンク、緑、白、そしてレッド ( Product(RED) チャリティに寄付) が用意されている。革ケースの方は、$45 と $49 であり、色はブラック、ソフトピンク、オリーブグリーン、ミッドナイトブルー、そしてレッド (Product(RED) チャリティに寄付) がある。

もし、新しい iPhone 6 にも 6 Plus にも興味が無いのであれば、引き続き販売される現行モデルの値下げは嬉しいかもしれない。二年契約と共に購入する場合、iPhone 5s は 16 GB で $99、32 GB で $149 となり、そして iPhone 5c は無料で入手可となる。

我々としても、iPhone 6 に対してきちんと評価する時間を費やした後でないと確かなことは言えないが、Apple は再度十分価値のあるアップデートをリリースしたように見える。 iPhone 6 も 6 Plus も、革新的ではないが - それは Apple の目標ではない - 新しい iPhone を欲しいと思っている人、そしてより大型の画面が絶対に必要な人達を惹きつけるに十分な新機能を提供している。これらのモデルの大きさに嫌気が差す人達は、当面は iPhone 5s や 5c に固執する事が出来る;Apple が将来のリリースでも小型のモデルを出すかどうかはその時になってみないと分からない。

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iPhone 6 と iPhone 6 Plus、24 時間で新記録の 4 百万台を売る

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

伝統にのっとり、Apple は最新の iPhone モデル - iPhone 6 と、大型画面の iPhone 6 Plus - が予約注文の記録を塗り替え、最初の 24 時間で 4 百万台を超えたと発表した。これは Apple が最新の大幅改訂であった iPhone 5 の時の予約注文の二倍に当たる。iPhone 5 では、最初の 24 時間に 2 百万台の予約注文が入った。(Apple は、昨年の iPhone 5s と iPhone 5c に関する 24 時間販売の数字を発表していないが、我々は下図の様に、最初の三日間での販売数 9 百万台から、3 百万台と予測している。)

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Apple 及び大手のセルフォンキャリアは、どうも iPhone 6 Plus の割り当て分を売り切った様で、彼ら全てがこの大型モデルに対してより先の出荷日を答えている。Apple は現時点で、iPhone 6 Plus は 3-4 週間で出荷出来ると言っている。一方、iPhone 6 に対する予約注文は 7-10 日で満たせる。

Apple も如何なるキャリアも販売台数をモデル別に分けていないし、iPhone 6 Plus モデルを Apple が何台製造しているかの情報も全くない。Apple が iPhone 6 の方が良く売れるだろうと想定し、発売に備えてそちらをより沢山作った可能性は十分にある。昨年、Apple はiPhone 5c に対する需要を過分に見積もった - Tim Cook は、Apple の January 2014 業績電話会見で iPhone 5c が iPhone 販売の中に占めた割合は予想よりも少なかったことを認めた。

Apple が販売数をモデル別に分けてリリースしたことは殆ど無いが、 Seeking Alpha の J. M. Manness の独自の推計では 、最初の段階では iPhone 5s の販売は恐らく iPhone 5c を 2.5 対 1 の割合で勝ったであろうとしている。時間と共に、iPhone 5c は勢いを増し、Apple の June 2014 四半期では、かなりの成長を記録した。

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Apple、新 iCloud ストレージプランを発表

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

これ迄は、iCloud メール、バックアップ、そして書類のために、無料の 5 GB の iCloud ストレージ以上のものを欲する場合、追加のストレージために、年額ベースで 10 GB で $20、20 GB で $40、或いは 50 GB で $100 も払う必要があった。これらの値段とストレージ量は全く時代離れしている様に見える。取り巻く状況を見れば、OS X Yosemite と iOS 8 で提供される個人のクラウドストレージ iCloud Drive が間もなくお目見えするし、そして Dropbox や Google Drive の様なオンラインのファイル共有サービスは極めて競争的である。

Apple の新しい料金体系

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追加容量のためにもう既に払い込んでいる人は、そのアカウントは自動的に新しいクラスにアップグレードされ、比例配分された残額は返金される。これら以前のプランは年額ベースだったので、Apple はそれらに対しては、既得権としてその周期を維持する;もし新プランに移行すると、課金は毎月行われ、年額ベースに戻ることは出来ない。

ストレージレベルをアップグレードするのは、Mac から (System Preferences の iCloud ペーンで、Manage Details それから Buy More Storage をクリック) 或いは iOS 機器から (Settings > iCloud > Storage & Backup > Buy More Storage とタップする) 出来る。

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これらの変更は歓迎だが、とりわけ iCloud Drive を多用すると思っている人にとっては、Apple が他の大手のクラウドストレージプロバイダーに対しても競争的だとはとても言えない。Dropbox が手始めに無料で提供するのは 2 GB に過ぎないが、それを増やすための色々な無料の方法を提供しており、最大で 18 GB かそれ以上に到達出来る。加えて、同社の 1 TB Dropbox Pro アカウントは月額 $9.99 しかかからない。Google Drive は無料で 15 GB を提供、そして 1 TB を同じ月額 $9.99 で提供している。

また付け加えて言っておく価値があるのは、Dropbox も Google Drive も、ただ安いだけでなく、オンラインファイル共有や共同作業のためには遙かに有用なことである。

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Apple Pay が代金決済業界に揺さぶりをかける

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst, Rich Mogull: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple CEO の Tim Cook は先週の Apple スペシャルイベントの最後に U2 をステージに上げたが、プレゼンテーションの中盤でのテーマソングはむしろ ABBA の "Money, Money, Money" が相応しかったかもしれない。このスウェーデンの 1970 年代のスーパーグループの歌に "It's a rich man's world" という歌詞があるが、Apple が今回発表した、2014 年 10 月に iOS 8 への無料アップデートとして提供される予定の Apple Pay モバイル決済システムの中にこそ、それが如実に表われていた。

Apple Pay は、Apple が自ら説明するところではあなたのお財布に置き換わるものとのことだが、iPhone 6 または 6 Plus を手に持つことで、または来たるべき Apple Watch を手首に着けることで、店頭での支払いができるというものだ。もはやクレジットカードを出したり、レシートにサインしたりといった手間は必要ないし、十分な現金を持っているかどうかと気にする必要もない。少なくとも理論的には、Apple Pay は支払いの体験を改善すると同時に、クレジットカードによる支払いに新たなレベルのセキュリティとプライバシーをもたらすものとなるはずだ。[訳者注: Apple Pay はスタート時には米国のみにおけるサービスです。]

(細かいことをほじくるのは気が進まないが、お財布を完全になくすというのは遥かに大きな挑戦となる。例えば公式の身分証明書、例えば運転免許証などを持ち歩くのは多くの国において今も義務であったり、あるいは少なくともその方が便利であったりするからだ。さらに言えば、本当の意味で現金の要らない社会というのはまだまだ遠い先の話だろう。)

Apple Pay での支払い -- さっき金持ちの世界 (rich man's world) と言ったのは、代金決済業界と大手の小売店の双方を引き込んで新しい決済システムを支持させられるだけの規模と力を備えている会社はおそらく Apple だけだろうと思うからだ。新しい決済システムという考え方は決して新しいものではなく、例えば Google や PayPal のような大会社でさえモバイル決済システムを作ろうと試みては失敗したことがある。問題は規模と一貫性にあり、既存のクレジットカードシステムの慣性に打ち勝つことの難しさにある。これまでのいろいろな解決の試みはいずれもそれほど大幅な改善とはならなかった。その理由は、セットアップが煩わしかったことと、特定のシステムあるいはアプリをどの小売業者が受け付けてくれるかが分からなかったことにある。

Apple Pay において、Apple は Visa、MasterCard、それに American Express からの対応の手配を済ませ、現在は数多くの大手の銀行と交渉しつつ米国内のすべてのクレジットカード使用のうち 83 パーセントをカバーすることを目指している。(Apple は「さらに多くの国にも Apple Pay をもたらすことができるよう懸命な努力を続けている」と述べた。)さらにもっと重要なこととして、Apple は既に非接触型決済に対応している数多くの大手の小売業者を説得して Apple Pay が使えるようにした。つまり、Apple Pay のスタート時点で既に少なくとも 220,000 の店舗が Apple Pay 対応となっているということだ。対応する小売業者をいくつか挙げれば、(当然ながら) Apple Store、Disney、Macy's、McDonald's、Nike、Panera Bread、Petco、Sephora、Staples、Subway、Walgreens、Whole Foods などがある。

Apple はまた、自らのエコシステムを活用して、開発者たちが自分の作るアプリの中に直接 Apple Pay を追加できるようにした。つまり、アプリの中から注文したものについて (Touch ID センサーを持つ iPhone 6 ならば) タッチ一つで支払いが済むようになるのだ。Apple のインターネットソフトウェアおよびサービス担当上席副社長 Eddy Cue は壇上で、Apple Store アプリ内からの使い方の実演をしてみせたばかりでなく、Groupon、Major League Baseball、Target デパート、Uber カーシェアリングサービスなどのアプリも実演した。最も興味深かったのはレストラン予約サービスの OpenTable を紹介した時だった。加盟しているレストランならば、OpenTable アプリを使って席を予約することもできるし、食事が終われば支払いを済ませることもできるようになる。私たちの予想では、支払いを扱っているアプリのほとんどが素早く Apple Pay に対応するだろう。決済処理会社 Stripe は、 Stripe を利用しているアプリは Apple Pay がスタートし次第 Apple Pay による決済も受け付けられるようになる と発表している。

Safari にホストされたウェブページの中から Apple Pay が使えるようになるのかどうかについては何も発表がなかったが、Apple がその難問を突破しようと試みるのも十分論理的なことに思える。

残る大きな疑問は、Apple Pay を通して行なわれる取引ごとに一定の取り分を Apple が得るのかどうかだ。もちろん、App Store、Mac App Store、および iBooks Store で Apple が取引手数料として徴収している 30 パーセントのような大きな比率にはならないが、PayPal や Stripe のような会社が徴収している 2.9 パーセントプラス 30 セントに似たものになる可能性は十分ある。この件については互いに矛盾する内容の報道を目にしている。ベンチャーキャピタル会社 Andreessen Horowitz の Benedict Evans は「Apple はユーザーに課金するのでなく決済に Apple Pay を利用する商人や開発者に課金する」と Twitter に書いた 。それが本当なのかもしれないが、Bloomberg の記事には Apple が銀行が商人たちから集めた "swipe fee" の中から一定の割合を取ると書いてある。この "swipe fee" は毎年 4 百億ドルにも達するので、たとえそのごく小さな割合であっても Apple が手にする金額は相当のものになるだろう。BankInnovation ブログにも、Apple が銀行各社と交渉し Apple Pay 経由の決済については "card present" レートを下げるようにしたと書かれている。その結果として Apple が支払う手数料がおよそ 10 パーセント減るとのことだ。

Apple Pay のセキュリティとプライバシー -- この Apple Pay システムは、近距離無線通信 (NFC) に依存する。NFC は極めて到達範囲の狭い電波を使って双方向コミュニケーションのチャネルを設置するテクノロジーだ。一方向にしか働かない RFID (ペットなどの IC タグを使うためのテクノロジー) とは違う。NFC はもう何年も前から決済のために使われてきたけれども、多くの場合それは物理的な鍵束に取り付ける独立動作のドングルを使うものであった。携帯電話で NFC を使う事例も従来からあったけれども、今回のような規模のものはなかった。

さらに重要なのは、Apple がセキュリティとプライバシーの双方を確保するために(セキュリティとプライバシーは互いに非常に異なるものだ)Apple Pay を設計したという点だ。セキュリティの側について言えば、Apple はそのデバイスと、バックエンドの決済システムとの組み合わせに依存する。まずデバイスが支払いのためのセキュアなリクエストを処理し、次いでバックエンドのシステムが支払いのセキュアな処理をするが、それらすべてがあなたの人物確認情報もクレジットカードの詳細情報も一切明かすことなく行なわれる。

あなたが(クレジットカードの写真を撮影することによって)iPhone 6 にクレジットカード情報を登録した際、あなたのカード番号に対してクレジットカード会社があなたに固有の決済用トークンを付随させ、そのトークンが iPhone のセキュア素子の中に保存される。カード番号自体は決して電話機の中に保存されない。

「トークン化」と呼ばれるこのやり方は、決済の過程を大きく変える。クレジットカード番号を商人に送る代わりに、Apple Pay がトークンを送り、商人はそれを決済プロセッサに転送する。するとその決済プロセッサが高度にセキュアな独自のバックエンドを用いてトークンを実際のクレジットカード番号と照合し、それで取引が完了することになる。

かなり何年も前からトークン化は使われてきたし、カード契約違反のリスクが減る(とりわけ商人にとってコンプライアンスのためのコストが減る)ことから人気を増しつつあった。取引に際して実際のクレジットカード番号が人目に触れることが一切なく、必要に応じて再生成できるトークンのみが使われ、繰り返し使われる請求書に毎度カード番号を再入力したりする必要もない。

Apple の場合、トークンは特定のデバイスに結び付いたものになるようだ。デバイスをなくしたら、Find My iPhone を使ってトークンもワイプ消去できる。その後、ただカードの写真を撮るだけで、新しい(または取り戻した)電話機に再登録ができる。このことによりあなたの負うリスクが劇的に減る。あなたのカード番号が人目に触れず、商人にさえ見せなくてよいからだ。もしも商人が侵入被害に遭えば、私の想像するところ Apple があなたにトークンを再生成するよう依頼するか、あるいはバックエンドのシステムにそれを処理させるのかもしれない。

Apple の Eddie Cue は、取引に際して一度きりのコードが使われるとも述べた。それによってトークン化がより複雑なものとなり、あなたのカードのみならずあなたのデバイスに付随したトークンも保護されるようになる。結果として、なくしたトークンがクレジットカードのように使われて詐欺に遭うリスクがなくなるのではないかと思う。

ただ忘れてならないのは、詐欺的な購入に対してクレジットカード顧客としてのあなたが責任を負うことはないけれども、それらのコストは商人や銀行が負わねばならないという事実だ。とりわけ、銀行がカードを再発行しなければならない場合にはそれが問題となる。また、信じられないような話ではあるが、詐欺の件数は史上かつてないほど減っている。けれども、最近になって大規模なセキュリティ違反が頻発し、件数はじりじり増えつつある。

プライバシーの側について言えば、Apple Pay は現金ほどの匿名性を持つことはできないけれども、今日のクレジットカードの世界に比較すればずっと良くなる。第一に、Apple Pay では、レジ係があなたの名前見ることすらないし、クレジットカード番号やセキュリティコードを見ることもない。またあなたが何を買ったか、どこで買ったか、いくら支払ったかなどを Apple が知ることもない。購入情報が商人と銀行によって記録されているので現金ほどプライベートにはならないけれども、私たちが今日クレジットカードで直面している状況は大きく改善される。さらに言えば、できる限り顧客の個人情報を収集しないという Apple の非公式方針にも合致することとなる。

大いなる揺さぶり -- Apple Pay は、既存の代金決済業界を大きく揺さぶる可能性を持っている。(セキュリティアナリストとして、Rich は広範にこの業界と取り組んでいる。)これはきっと、トークン化と NFC テクノロジーの双方が史上かつてないほど大規模に展開される実例となるだろう。Apple Pay は初めのうちは iPhone 6 または 6 Plus を購入した人たちのみに限られたものとなるけれども、Apple Watch が登場すれば iPhone 5、5s、または 5c を持っている人たちにも対象が広がるようになる。なぜなら、Apple Watch はそれらの機種の iPhone とも連携して働き、Apple Watch は NFC と Apple Pay に対応しているからだ。そして、何百万人もの人たちが参加するようになれば、商人たちとしても NFC リーダーを購入すべき動機がますます高まり、結果として他の NFC ベースの決済システムにも利益が及ぶことだろう。

私たちがデジタル時代に足を踏み入れるに従い、代金決済業界は消費者、商人、銀行業界それぞれの挙動を変えさせようと試みてきた。それは主として、カード盗難やカード詐欺に対する懸念が増しつつあるからだ。より良いユーザー体験と、リスクの低減、そして顧客のプライバシーの向上の組み合わせを備えた Apple Pay は、店頭でもオンラインでも、私たちが物を買うやり方を根底から覆す可能性を秘めている。

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Macworld、スタッフを解雇し印刷版を廃止

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週、長年 Macworld で編集者として働いてきた人たちが大勢解雇されたというニュースで私の Twitter フィードは爆発的に埋め尽くされた。Dan Frakes、Roman Loyola、Philip Michaels、Dan Miller、Dan Moren という面々が解雇された。(社員名簿に "Dan" という名前が多過ぎるのを Macworld の親会社 IDG がとがめたのだという噂には何の根拠もない。)その上、Jason Snell は自ら辞職した。彼は IDG Consumer で上席副社長兼論説員として働いていた。

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その後間もなく、何が起こったのかについての具体的な情報が聞こえてきた。Macworld 編集者の Dan Miller が、印刷版の Macworld は終了することになるけれども macworld.com ウェブサイトは人数の減ったスタッフによって継続されると確認してくれた。

そのタイミングが、とりわけ神経を逆撫でするものだった。多くの Macworld スタッフたちが、Apple による iPhone 6、Apple Pay、Apple Watch の発表を伝えようと特に長時間働き続けていた、まさにその時に起こったことだったからだ。それが意図したタイミングであったにせよ、あるいはたまたま給与支払期間の都合でそうなっただけにせよ、IDG は恥を知れと私は言いたい。

IDG は解雇についても印刷版の Macworld の閉鎖についても何の公式発表もしていないし、同社のいつも通りのホームページには解雇された編集者たちからの tweet を表示したとてつもなく場違いの Twitter フィードボックスがある。[訳者注: 現在この Twitter フィードボックスから「場違い」の tweet は消えているようです。]新しい Macworld の編集長 Jon Phillips が、新しいスタッフたち、Susie Ochs、Chris Breen、Leah Yamshon、Caitlin McGarry を紹介する記事を書いている。彼はまた、将来の Macworld はフリーランスのライターたちに大きく依存するようになるだろうとも述べている。

私たち TidBITS は、今回の解雇のニュースを聞いてとても残念に思っている。これらの人たちは長年にわたって私たちの友人たちであり同僚たちでもあった。この業界で時折人が入れ替わるのは避け難いけれども、今回のような大量解雇は、私たちの心の深いところを動揺させる。彼らの中には TidBITS に記事を書いたり Take Control で仕事をしてくれたりした人たちもいるし、彼らすべてが私たちのページのどこかで触れられている。今後も、私たちは彼らと共に仕事をする機会があればと思っている。

印刷版の Macworld が廃止されるのも悲しいことだ。1984 年に Macintosh がスタートして以来、Macworld は一貫して Mac コミュニティーの熱烈な支持者であったし、その役割は 1997 年の MacUser との統合(1997 年 8 月 11 日の記事“MacUser と Macworld が統合”参照)や、MacWEEK の消滅(2001 年 3 月 5 日の記事“MacWEEK 紙 MacCentral に併合”参照)を経ても変わらなかった。けれども、発行部数が 2013 年の 160,000 部から今年は 135,000 部に減ったという報道を見れば、Apple がいくら現在のテクノロジー業界で優位にいるとしても、Macworld 印刷版に書かれるものが不吉な文字だという印象はどうしても拭えなかった。

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U2 のアルバムを無料で得る(または削除する)方法

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

この記事は、書かれるべきではなかった。Apple がバンド U2 に費用を払って U2 のニューアルバム "Songs of Innocence" をすべての iTunes ユーザーが 2014 年 10 月 13 日までの間に限り無料でダウンロードできるようにすると Apple が発表した際、どうやってそれを入手するかについてもきちんと明らかにされているべきだった。

残念ながら、今日では iTunes に関することで明らかなものなどほとんどない。未だに多くの Apple ユーザーがどうやってアルバムを入手するのか分からず質問しているところを私たちはたくさん見てきた。

まず第一に、このアルバムは既にあなたの iTunes の中にあるかもしれない。あなたの iTunes ライブラリで U2 または "Songs of Innocence" で検索して、既に入っていないか確認しておこう。もしあれば(そして隅にクラウドアイコンが付いていれば)クラウドからそれを再生することもできる(ただしそれには iTunes Match を購読している必要がある)し、クラウドアイコンをクリックしてダウンロードすることもできる。

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もしもなければ、Preferences > Store に行って Show iTunes in the Cloud Purchases にチェックが入っているかどうかを見よう。もしもチェックされていなければ、チェックを入れてからもう一度検索してみよう。一旦 iTunes を終了してから再起動しないとアルバムが見えるようにならないかもしれない。

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それでも見つからなければ、iTunes Store に入り (サイドバーが見えていれば簡単、View > Show Sidebar を選ぶ)、上にあるダークグレイのナビゲーションバーで家のアイコンの隣にある Music リンクをクリックし、右側のサイドバーで Purchased をクリックする。そこに最初にリストされているアルバムが "Songs of Innocence" のはずだ。アルバムの右上隅にあるダウンロードを指す矢印の付いたクラウドアイコンをクリックすれば、ダウンロードが始まる。(また、宣伝用のバナーもあるので、それをクリックしてもアルバムがダウンロードされる。)

iOS 上では、少なくとも理論的には、このアルバムは iTunes Store アプリの中、More タブの下、Purchased > Music > U2 にあるはずだ。けれども、私のところではそうなっていなかった。幸いにも私は偶然 Music タブの中にこのアルバムの宣伝用バナーを見つけた。Free と書かれたボックスをタップするとボックスが Get Album に変わり、もう一度タップすればよかった。

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また、Apple が所有する Beats Music サービスからでもこのアルバムを聴くことができる。(Beats Music について詳しくは 2014 年 5 月 16 日の記事“FunBITS: Beats Music は何が違うのか”参照。)

Apple が私たちすべてに(つまり iTunes アカウントを持っている 5 億人の人々に!)このアルバムを買ってくれたことに対して感謝したいとは思うけれども、願わくは Apple の次回の大きなイベントでの目玉は iTunes を全面的に見直して再びこれを直感的にするというものであって欲しい。

「でも私は U2 なんて嫌いだ!」 -- 無料で音楽が手に入ったことに憤りを覚える人がいるのは信じ難いとも思うが、実際多くの人たちが憤った。人々はソーシャルメディアに怒りをぶちまけて、自分の iTunes ライブラリが Bono の存在で汚されたと不満を述べ立てた。

人々に喜びを与えようとする新しい Apple は、これら浄化の嘆願を聞き入れ、その後 iTunes アカウントからこのアルバムを削除するため 専用のツール をリリースした。このウェブページを訪れ、Remove Album をクリックすればアルバムは永遠に消し去られる。もしも気が変わったなら、2014 年 10 月 13 日まではもう一度無料でダウンロードできるけれども、その日が過ぎれば入手は有料となる。

これで、あなたは再びご自分が精選してきちんと取り揃えた音楽ライブラリに Bono がはびこる兆候など一切ないと自慢することができる。でも、あなたが何をするにせよ、iOS の Music アプリの Artists タブのところだけは決して目を凝らして見てはいけない。ちゃんと警告しましたからね!

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iPod classic への追悼の言葉

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple の最新の製品発表の興奮に隠れてしまった感があるが、長らく続いてきた一つの Apple 製品がなくなることとなった。2014 年 9 月 9 日に、Apple は同社のウェブサイトを短時間オフラインにしてデザインを改訂し、新型の iPhone モデルと、新しい Apple Watch をそこに書き入れたが、復帰したそのサイトにはもはや iPod classic の姿がどこにも見えず、iPod classic は何の知らせもなしにこのサイトからも Apple のオンラインストアからも消し去られてしまった。160 GB の iPod classic が消えた後に残ったのは、2 GB の iPod shuffle と 16 GB の iPod nano、それに iOS ベースの iPod touch だ。

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これは一つの時代の終わりであり、それは Apple が的外れなものと戦っていた向こう意気の強いコンピュータ会社から、コンピューティング、音楽、モバイル電話、写真を含む大きな世界のスーパーパワーへと急成長を遂げた時代だ。Apple を崖っぷちから救ったのは iMac かもしれないし、この会社を支配的な地位へと引き上げたのは iPhone だったけれども、Apple の栄光の道が始まったのは 2001 年 10 月 23 日、 Steve Jobs が iPod を発表した日だった。

振り返ってみれば、それは驚くほど地味なイベントだった。(私たちの当時の記事は "Apple iPod Makes Music More Attractive" (2001 年 10 月 23 日) 参照。)拍手喝采もなければ、入念なステージ上の実演もなく、スライドで使われた文字は Marker Felt フォントのみだった。この静かな発表から、後にパーソナルコンピューティング以外の分野への Apple の最初の大掛かりな進出となった製品がスタートしたのだった。当時の世間の反応は賛否入り交じったもので、今回の Apple Watch 発表に対する当初の反応と似ていないこともなかった。 iPod を「しょうもない」と形容した人さえいた

この控え目な iPod はその後さまざまな機能、例えば 30-pin のドックコネクタ、Windows 互換性などを加え、写真やビデオにも対応し、数多くの異なるタイプに分化しつつ、売り上げは飛躍的に伸びた。何億台という iPod が売られ、多くの家庭の引き出しの中には未だに古い iPod が転がっている。

ああ何たることか、2007 年に Apple が iPhone をリリースし、その数ヵ月後に iPod touch をリリースして以後、伝統的な iPod シリーズの運命ははっきりと決まった。タッチスクリーンが、クリックホイールに代わって、Apple のポータブルデバイスの未来となったのだ。

いや、ひょっとするとそれは真実でないのかもしれない。iPod の売り上げが落ち込み続ける一方で、クリックホイールの末裔とも言えるデジタルクラウンにその動作を依存する Apple Watch が、次なる大物として登場しようとしているのだから。(2014 年 9 月 9 日の記事“Apple、新しい Apple Watch をプレビュー”参照。)

160 GB の iPod classic が残した空白を埋めるものとしては、iPhone 6 に新たに登場する 128 GB のオプションが、同等のストレージ容量を持った新型の iPod touch が出るのではないかという期待をもたらしてくれる。かくして、iPod classic は消え去ったかもしれないが、ポケットの中に膨大な量の音楽を入れておけるというその遺産は今後も生き続けるだろう。

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FunBITS: Amazon の Prime Music をテストドライブ

  文: Agen G. N. Schmitz: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Amazon は最近忙しかった。Amazon Fire Phone をデビューさせたのみならず(私たちのレビュー“Amazon Fire Phone、制約多く、玩具っぽい”(2014 年 7 月 25 日) 参照)音楽ストリーミングサービス Prime Music も公開した。Amazon Prime 購読者のみが利用できる Prime Music は、楽曲、アルバム全体、さらには精選プレイリストによっても、あなたの iOS デバイスや Mac にストリーミング提供できる。(iOS デバイスの場合はトラックをダウンロードしてオフラインで聴くこともできる。)でも、これは十分な量の音楽と実用性を提供できるのか? 多数ある他の音楽ストリーミングサービスの選択肢に比べて乗り換える価値があるのか? さらには、Amazon Prime の年額 $99 という料金の一部分に見合うものとして正当化できると言えるのか? [訳者注: この記事の内容は、すべて米国におけるものです。]

Prime Music とは何か、何ではないのか -- Prime Music によって、Amazon は混雑した音楽ストリーミングの市場に参入した。ここには既に多くのもの、SpotifyRdioGoogle Play Music All Access (2013 年 11 月 22 日の記事“FunBITS: Google Play Music を検討する”参照)、PandoraiTunes Radio (2013 年 9 月 18 日の記事“FunBITS: iTunes Radio にチューン・イン”参照)、 SlackerBeats Music (2014 年 5 月 16 日の記事“FunBITS: Beats Music は何が違うのか”参照) などがひしめいている。Prime Music は Prime 会員にストリームするために百万曲以上を提供するといい、この曲数はかなり多いように見えるかもしれない。けれども競合相手と比較すると、Spotify、Beats Music、Rdio といったところがすべて 2 千万トラック以上を提供しているので Prime Music は少々貧弱に見えてしまう。(この点については後述)

Prime Music は三つの構成要素から成っている:

外出先での Prime -- Amazon は Prime Music の再生に三つのオプションを用意して、あなたが事実上どこにいてもアカウントにアクセスできるようにしている。Mac (と PC) での専用 Amazon Music アプリ、ウェブブラウザベースの クラウドプレイヤー、それに iOS デバイス用の Amazon Music with Prime Music アプリ(Amazon の従来の iOS 用 Cloud Player アプリをデザインし直したもの)の三つだ。これらはいずれも、Amazon 認証情報を使ってサインインすることを要し、Prime 会員も Prime 会員でない人も使える。けれども、Prime 会員でない人が使った場合 Prime Music トラックのストリーミングはできず、 Amazon Digital Music ストアから過去に(あるいは将来に)購入したトラックのみにアクセスできる。

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まずは iOS アプリの Amazon Music から見て行こう。全体的にはなかなか格好良いが、特定のコントロールを探したり、たくさんあるさまざまのライブラリを見分けようとしたりする際には戸惑うことになるかもしれない。もしも古い Cloud Player アプリを使ったことがないなら、クラウドから音楽ストリーミングができるように Amazon Music iOS アプリに認証を与える必要があるかもしれない。(Amazon は一つのアカウントから最大 10 台までのデバイスに音楽ストリーミングができるようにしている。)

アプリを開くと、Prime Music 表示から選べるトラックの選択肢が呈示される。スクリーン右上にある三本線の「ハンバーガー」ボタンをタップすればこの表示が開く。Songs、Albums、Playlists の各タブを探索したり、スクリーンの上の方にあるポップオーバーから Genres をブラウズしたり、あるいは虫眼鏡アイコンをタップして入手できるアーティスト、アルバム、トラックを検索したりしよう。最近アップデートされた Amazon Music iOS アプリ (バージョン 3.1) では検索機能が改善されて、Prime Music から入手できるものとあなたのデバイス上に既にロードされているものとが区別しやすくなっている。

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アルバムを選択したら、アルバムの表紙の下にある再生ボタンをタップして最初のトラックから順に再生するか、あるいはアルバム表示の中で個々のトラックをタップすることもできる。いずれの場合も画面は楽曲表示に移り、そのトラックのアルバムの表紙が大きく表示され、一番下には再生コントロールがあり、右上隅には三つの点のボタンがあってこれをタップすればさらなるオプションのためのポップオーバーが開く。このポップオーバーから、そのトラックをあなたの Prime Music ライブラリまたはプレイリストに追加したり、ダウンロードしたり、Prime にある同じアーティストの他のトラックを一覧したり、次に再生される楽曲のリストを表示したりできる。ポップオーバーの一番下では、再生をリピートあるいはシャッフルしたり、Facebook に再生済みトラックを共有したり、AirPlay 対応デバイスにオーディオを送ったり、音量を調節したりできる。(iPad 版の Amazon Music アプリでは、音量調節のスライダーが最初の再生スクリーンに現われる。)

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ライブラリに保存するオプションとダウンロードするオプションの双方が提供されることに注意したい。これらは機能的には異なるが、保存したトラックとダウンロードしたトラックは結局同じ場所に見つかる。曲を保存すれば、それをあなた自身の Prime Music ライブラリの中で整理できてあとで素早くアクセスできるようになる。曲を保存するには、アルバム表示の中の個別の楽曲の右側にある青いプラスボタンをタップする(あるいはアルバム表示の一番上にある Add All Prime Songs をタップすればそのアルバムの内容全部が保存される)か、または楽曲表示のポップオーバーメニューで Add Song to Library オプションをタップする。ライブラリの中にある楽曲を見つけるには、まずハンバーガーボタンをタップしてから、Your Library の下に並んだ表示オプション (Recently Added、Artists、その他) のどれかを選べばよい。ただし、あとでその曲を再生する際にはやはりクラウドからストリーミングされることに注意しよう。

一方、曲をダウンロードすればそのトラックがあなたの iOS デバイスの中に保存されるのでオフラインで聴くこともでき、アルバム表示から LP レコードの全曲をダウンロードすることも、楽曲表示から個々のトラックをダウンロードすることもできる。上記の保存の場合と同様、アルバム表示で Download ボタンをタップすることもできるし、楽曲表示のポップオーバーから Download をタップすることもできる。(三つの点のポップオーバーボタンは、アルバム表示の中の個々のトラックの右側からもアクセスできる。)ダウンロードしたトラックは(ハンバーガーボタンをタップして開いてから Your Library セクションの下にある同じ表示オプションからも見つかる。けれども、どれがストリーミング用に保存されたものでどれがダウンロードされたものかの区別は見ただけでは分からない。

ライブラリの問題にさらに複雑度を増しているのが、Amazon Music アプリの中から iOS 標準の Music アプリのライブラリ(つまり、iTunes Store から購入した楽曲や、デスクトップの iTunes ライブラリから同期した楽曲)へも入り込めるところだ。例えば、Your Library の下の Albums をタップしてから右下隅のリストの一番上にある Cloud スライダーをタップして Device に切り替える。すると、表示が切り替わって Amazon Prime からダウンロードした楽曲ばかりでなく Music アプリの中に保存されたあらゆる楽曲も含まれるようになる。このどんでん返しは Your Library の他の表示からもアクセスできるが、Music アプリの中のプレイリストを見たい場合はまず (Your Library のさらに下にある) Settings に行ってから Music アプリの個々のプレイリストを選んでおかねばならない。

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プレイリストの話のついでに言えば、Amazon がどんなものを精選したかについては、ハンバーガーボタンをタップしてから Prime Playlists をタップすれば、人気あるプレイリストを一覧したり、あなたが以前に再生したり購入したりしたものに基づく推薦を受けたりすることができる。一つのプレイリストからは、個々の曲を再生することも、個別の曲または全部の曲を Prime Music ライブラリに追加することもできる。また、プレイリストの一番上に見える Download ボタンをタップすれば(個別のトラックで左へスワイプすることによっても Download ボタンにアクセスできる)プレイリストの(Prime のプレイリストでもあなたが作成したプレイリストでも)全曲(または個別のトラック)をデバイス上へダウンロードできる。

あなたが自分でプレイリストを作成でき、それらはクラウドから入手できるトラック(つまり Prime Music タイトルや過去に購入したもの)やデバイス上に保存されたトラックとは区別される。つまり、Prime Music からダウンロードしたトラックと iTunes ライブラリを混ぜることができる(けれどもそれはあなたがデバイス上で作成したプレイリストに限られ、クラウド上のプレイリストではできない)ということだ。

プレイリストを作成するには、まずハンバーガーボタンをタップして、Your Library の下の Playlists をタップする。Playlists ページの右上隅にあるスライダーで Device または Cloud を選んでから、Create New Playlist をタップし、それからプレイリストに名前を付ける。(Artists、Albums、Songs、Genres のどれかの表示で) 個々のトラックの隣にあるプラスボタンをタップしてトラックを追加してから、スクリーンの一番上にある Done をタップすればよい。

あなたのプレイリストはすべて(Prime Playlist もあなたが作成したものも)他の iOS デバイスや、Mac のデスクトップアプリ、および Amazon アカウント認証情報を使っているブラウザベースのクラウドプレイヤーに同期される。

Prime のデスクトップで見えるもの -- iOS 用アプリと同様、デスクトップ用の Amazon Music アプリでも Prime Music のトラックをストリームでき、あなたの音楽ライブラリ(過去に Amazon から購入してクラウドに保存してあるものや、あなたのコンピュータ上の iTunes ライブラリ)にアクセスできる。iOS 用アプリでは Prime Music トラックや Prime Playlist をダウンロードできるが、この Mac 用アプリでは Prime 対象曲のダウンロードができない。(ただし、過去に購入したものをダウンロードすることはできる。)しかしながら、iOS 用アプリに欠けていた構成要素がここには一つある。Prime Music 以外のタイトルを Amazon Digital Music 店頭から購入できる機能だ。(この機能が iPhone、iPad や iPod touch にないのは、アプリ内購入で要求される 30 パーセントの Apple への割り前を Amazon が支払いたくないからだ。)

あなたの Amazon アカウント認証情報を入力してから、まずは Your Library を開くと、あなたが以前に Amazon から購入しクラウドに保存してある音楽がすべてリストされる。(左上隅にある Cloud ボタンがオレンジ色に変わる。)そのすぐ右の Computer ボタンをクリックすれば、iTunes ライブラリにあるすべての音楽およびポッドキャストファイル(このアプリはコンピュータ上にあるそれらのファイルへのポインタとなるのみで、それらのファイルを移動させることはできない)と、以前に購入してダウンロード済みのトラックとを見ることができる。Cloud および Computer のいずれのライブラリでも、それぞれ Playlist、Artist、Album、Song、Genre の表示を切り替えることができる。

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残念なことに、Mac 用の Amazon Music アプリがあなたの iTunes ライブラリをすっかり吸い込んでしまうのを止めることはできない。環境設定の中のオプションで iTunes の中にあとから置かれた新規の楽曲を追加しないようにすることはできるけれども、あなたのコンピュータ上にある楽曲を集めた Amazon Music のデータベースに既に追加済みの音楽を削除することはできない。もしもあなたが非常に大きな iTunes ライブラリを持っているなら(私は 46,000 曲近く持っているが)、最初のデータベース読み込みの作業はかなり長い時間がかかり、その間のプロセッサ占有量も大きいので、初めて起動した際には、アプリの挙動がのろのろすることを覚悟しておく方がよい。

Amazon Prime 会員ならば、一番上の Store タブの右側に青い字で示されたリンクが見えるはずだ。ここから、Prime Music 表示と Prime Playlists 表示で提供されるすべての Prime 機能にアクセスできる。ただし、それら二つの表示で Best Sellers、New Releases、Genres (と検索フィールド) 以外のところにも踏み込もうとすれば、リストの中に Digital Music ストアで販売されているものと Prime のトラック (チェックマーク付きの Prime アイコンで示される) の両方が並ぶことになる。それらの表示のどれかで左上の Prime ボックスをチェックすれば、無料でストリーミングできるトラックのみが表示されるようになる。

iOS 用アプリと同様、Mac 用の Amazon Music もプレイリストをクラウド上のものとあなたの Mac 上で作成あるいは保存されたものとに分けて管理する。Your Library の下の Playlists を選び、Cloud ボタンをクリックすれば、あなたが保存した精選 Prime Playlist も、あなたがクラウド上で作成したプレイリストも見ることができる。プレイリストを一つ選択すればそれが中央のパネルに表示され、そこから全部をごっちゃにストリームすることも、個々のトラックを選んで再生することもできる。(以前に購入したトラックのみからプレイリストを作成してある場合には、それらをコンピュータ上にダウンロードすることもできる。)

デスクトップ版の Amazon Music アプリでは、ドラッグ&ドロップで手軽にプレイリストを作成できる。中央のパネルで曲を一つ選び、それを右側にある Playlist/Download パネルの中の新規プレイリストボタンの上にドラッグするか、あるいは既に作成済みのプレイリストの上にドラッグする。新規のプレイリストを作成する場合には、それに名前を付ける機会が与えられ、そうすると右側のパネルの中でアクティブになるので、他の曲をそこへドラッグすることも簡単にできる。けれども、自分が今どこにいるかは常に意識していなければならない。クラウド上に保存された曲をコンピュータ上に保存された曲のプレイリストに混ぜることはできないからだ。(ただし購入済みの曲をクラウドからダウンロードしてそれを Computer プレイリストに追加するのはできる。)

壁に囲まれた庭を乗り越える... ただし有料で -- 皆さんもきっともうお気付きだろうが、デスクトップ版とモバイル版の Amazon Music はいずれもクラウドとデバイスの別々のライブラリにアクセスでき、何を使っているかにもよるがそれらをある程度混合させることができる。(例えば、モバイル上やコンピュータ上で作成されたプレイリストは iTunes ライブラリの音楽を Amazon ライブラリのトラックと混ぜることができる。)しかしながら、デスクトップアプリで作成した Computer プレイリストや、iOS 用アプリで作成した Device プレイリストについて、そのプレイリストをクラウドへアップロードしてそれを Amazon Music の機能を使ってストリーミングするということはできない。

とは言うものの、あなたのコンピュータ上に保存されたすべての音楽を iOS デバイスでも利用できるようにしたいと思えば、それらのトラックを Amazon のクラウドサーバにアップロードする方法を Amazon が提供している。ただし、有料だ。(最初の味見のみ無料となる。)まず第一に、最新の Amazon Music Importer をダウンロードする必要がある。(Amazon の クラウドプレイヤーを開いて、右上隅の Import Your Music リンクをクリックしてインストーラをダウンロードするか、あるいはこちらのリンクを使って 9.4 MB のディスクイメージをダウンロードする。)Amazon 認証情報を入力すれば、Music Importer にあなたのコンピュータを丸ごとスキャンさせることも、あるいは手動でフォルダをブラウズしてアップロードすべきトラックを選ぶこともできる。

でも、ここに一つ困難がある。Amazon のサーバへ無料でアップロードできるのは 250 トラックまでに限られているのだ。けれども、年額 $24.99 の購読をすれば上限が 250,000 トラックまでに増える。(年額 $24.99 という価格は iTunes Match と同じだが、トラック数の上限は 10 倍だ。)また、iTunes Match と同様、Amazon の Digital Music ストアから購入したトラックは上限の計算に含まれず、アップロードされた音楽は(その楽曲が資格ある権利者のものとマッチできる限り)高品質の 256 Kbps MP3 にアップグレードされる。

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その通り、これは年額払いの Prime 会員価格とは別途に支払う費用(合計は年額 $123.99)だけれども、それを払うことであなたの音楽ライブラリのすべてがどこにいても(少なくともライブラリの楽曲数が 250,000 を超えない限り)手許にあって使えるようになる。さらに、もしも Roku を持っていれば、アップロード済みの音楽ライブラリをそのデバイスを通してストリーミングできるようになる。(ただし Prime Music トラックやプレイリストへのアクセスはできない。)

Prime (Music) は割に合うか? -- Amazon の Prime Music は月額払い購読する他のストリーミングサービス (つまり Beats、Google、Rdio、Slacker、Spotify) のどれとも一対一で競合するものではない。たった百万トラック強という規模のライブラリは深みも広さも他のサービスに敵わない。(プレスリリースによれば Amazon はそのスタート以来「何百何千という曲」を追加し続けているが、それでも合計曲数は他社に比べてかなり少ないままだ。)けれども、他のストリーミングサービスのようなしっかりした選択肢はない代わりに、Amazon Music は年額払いの Prime 会員権に加わる素敵なアドオンと見ることができる。ただしその際には Amazon Music の持ついくつかの制約をよく理解している必要がある。

まず第一に、Prime Music は新たな音楽を見つけるためにはあまり役に立たない。ライブラリの中に新たにリリースされる曲はどれも、それほど新しい曲ではないからだ。(この春にはマイナーな新リリースがいくつかあっただけだ。)もちろん当代の人気あるリリースも (Daft Punk、Alt-J、Justin Timberlake、Bruno Mars など) いくつかあるけれども、たいていは 9 ヵ月から 12 ヵ月経った曲だ。Amazon の Prime Music にリストされたトップ 20 のアルバムのうち、2014 年にリリースされたものは 2 つだけ (クラシック音楽のクロスオーバー Lindsey Stirling と、カントリー音楽のアーティスト Cole Swindell) だ。

私にとって Prime Music はメインのストリーミングサービスとして使えるものではないので、私は月額払いの Spotify 購読を続けるつもりだ。Spotify ではリリースされる新しいアルバムを事実上すべて試聴できるからだ。その上、Spotify のカタログには 2 千万トラック以上が含まれ、外国のタイトルの取り揃えもとても充実している。(私はアイスランド音楽とフランス音楽に熱中するという変わった趣味を持っているのでぴったりだ。)

でも、人によって音楽の趣味は異なるので、あなたの評価は違うかもしれない。Prime Music の取り揃えたものはあまりにも主流のものばかりで、私にとっては 現代的 とは言えないけれども、誰か他の人にとってはまさにぴったりした響きに聞こえるかもしれない。それでも、聴きたい曲を見つけてもそのアルバムの他の曲が Prime Music のサービス対象でないと知って Prime Music の深みの欠如が気に障るということはしばしば起こるかもしれない。(例えば去年出た Dale Earnhardt Jr. Jr. の素晴らしいアルバム "The Speed of Things" でそういうことがあった。)

良い点としては、音楽のストリーミング品質が Spotify や Rdio よりも良いことに私は気付いた。Amazon Music アプリで再生すると、Pretty Lights のクールなヒップホップではベースの響きがより印象的で、Chris Thile がマンドリンを奏でる "Bach: Sonatas and Partitas, Vol. 1" は他の二つのサービスからストリームしたものよりもずっとエネルギーに溢れ生き生きとして聞こえた。また、誰か他の人に曲の選択を任せたい気分の時にいつでもすぐに精選 Prime Playlist が使えるのも嬉しい。それから、確かに最新リリースがないことで私は不満を感じているけれども、それでも Prime Music ライブラリには最近二・三年の曲が結構たっぷり揃っていて多くのリスナーの要求に応えられることだろう。

Amazon Prime パッケージの一部として見れば、Prime Music は素敵なアドオンと言える。ただ、この機能だけを理由として Amazon Prime の新規購読者を獲得できるほどのものではない。Amazon Prime の目玉と言えば、商品の出荷が無料で二日以内到着の出荷になるとか、Prime Instant Video とかいったものなのだから。けれども既に Prime 会員になっている人たちにとっては、これは音楽ストリーミングサービスへの素敵な入り口となり、うまく行けば今後さらなる成長も期待できるのではないかと思う。それでも、既に契約済みの他のサービスを解約してまで乗り換えるほどのレベルには到底達していない。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2014 年 9 月 15 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Parallels Desktop 10.0.2 -- Parallels Desktop がバージョン 10.0.2 (27712) にアップデートされ、安定性やパフォーマンスに関する数多くの問題点に修正が加えられた。この仮想化ソフトウェアでは Coherence で意図せぬキーボード入力を起こしていたバグを修正し、Boot Camp 仮想マシンの中の Parallels Tools Service プロセスの CPU 使用量を少し下げ、LogMeIn がインストールされている場合に Windows OS ネイティブのサウンドが歪んだ問題を解消し、システム終了時に仮想マシンがクラッシュすることのあった問題を修正している。(新規購入 $79.99、アップグレード $49.99、教育関係者向け $39.99、バージョン 10.0+ からは無料アップデート、275 MB、リリースノート、10.9.4+)

Parallels Desktop 10.0.2 へのコメントリンク:

TextExpander 4.3.3 -- Smile が TextExpander 4.3.3 をリリースし、公開ベータ版の OS X Yosemite と互換になるようにした。また Smile はこのバージョンを含め今後の TextExpander 4 は来たるべき公式リリースの Yosemite とフル互換であると予想している。(Yosemite への準備については 2014 年 9 月 5 日の記事“Take Control 本で、今から Yosemite に備えよう”参照。)今回のアップデートには詳細は不明だがその他の修正や改善も施されている。(新規購入 $34.95、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、9.8 MB、リリースノート、10.7+)

TextExpander 4.3.3 へのコメントリンク:

Marked 2.4.1 -- Brett Terpstra が Marked 2.4.1 をリリースして、この Markdown プレビューツールに多数の改善を加えた。今回のアップデートでは書類ごとに印刷の際のヘッダとフッタを MMD メタデータを使って指定できるようになり、あらゆるメタデータに HTML コメントが付けられるようになり、Leanpub の "X>" ブロックを作る機能を追加し、ストリーミングのプレビュー機能を(Terpstra のブログ記事には「近日中にさらなる機能も」とある)追加している。また、Scrivener や(名前は挙がっていないが)その他のアプリに対する画像検出やアクセス権リクエストを修正し、マルチカラムの印刷テーマを修正し、GitHub Flavored Markdown (GFM) ではデフォルトで newline を保持しないようにしている。Terpstra はまた、自動アップデートに対応しないのは今回の直接ダウンロード版 Marked 2.4.1 で最後となり、次回のリリースから自動アップデートが働くようにすると言っている。けれども、Mac App Store 版が自動アップデート機能を持たないことには注意したい。(新規購入 $13.99、無料アップデート、16.7 MB、 リリースノート、10.7+)

Marked 2.4.1 へのコメントリンク:

iTunes 11.4 -- Apple が iTunes 11.4 をリリースし、iOS 8 との互換性を確保するための内部的変更を加えた。iOS 8 は 2014 年 9 月 17 日に対応機種の iPhone、iPad、iPod touch 用に入手可能となる。(2014 年 9 月 19 日にリリースされる iPhone 6 および iPhone 6 Plus も iOS 8 を走らせることになる。2014 年 9 月 9 日の記事“Apple、大型画面搭載の iPhone 6 と iPhone 6 Plus を発表”参照。)iTunes 11.4 は Apple の iTunes ウェブページから直接ダウンロード、または Software Update 経由で入手できる。(無料、直接ダウンロードは 232 MB、Software Update 経由なら 97.3 MB、10.6.8+)

iTunes 11.4 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2014 年 9 月 15 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週は Apple のニュースが大量にもたらされたが、Adam Engst は The Tech Night Owl Live ポッドキャストに出演して、Apple の新製品や Macworld 印刷版の不名誉な終焉などさまざまな話題を解明した。Apple CEO の Tim Cook は自ら Charlie Rose とのインタビューに臨み、Apple に関するとても興味深い情報断片を語った。Microsoft は大ヒットゲーム Minecraft のメーカーを何と 25 億ドルを出して買収し、このゲームの将来に疑問符を付けた。それから、Apple が U2 の最新アルバムを配布するに至った裏話と、時計の専門家の目から見た Apple Watch への論評もある。

Adam Engst、Tech Night Owl で Apple の発表を再訪 -- The Tech Night Owl Live ポッドキャストで Adam Engst がホストの Gene Steinberg と対談し、Apple の大きな発表、つまり Apple Watch、iPhone 6 と 6 Plus、それに Apple Pay について論じ合った。印刷版 Macworld の消滅も話題となった。

コメントリンク: 15072

Tim Cook が Charlie Rose と対談 -- Apple CEO の Tim Cook が Charlie Rose のインタビューを受けたが、その最初の一時間が視聴できるようになっている。そこには興味深い情報の断片がぎっしり詰まっていて、Steve Jobs が未だに Apple に仕事部屋を持っているとか、Apple の最大の競争相手は誰か、Apple が Jobs の下で出来なかったことは何か、テレビ業界の現状、などが語られた。

コメントリンク: 15070

Microsoft、Minecraft の開発者を 25 億ドルで買収 -- Microsoft が、Stockholm に本社を持つ開発会社 Mojang を買収すると発表した。大ヒットしたゲーム Minecraft のメーカーだ。買収価格は 25 億ドルという。手続き的に生成されるサンドボックスゲーム Minecraft はサバイバル、構築とファンタジーを融合させる。無名の存在から史上最も人気あるゲームへと登り詰めた Minecraft は、1 億件を超えるダウンロード数を記録している。残念なことに Mojang の創設者たちは別の仕事へ移行しようとしているので、このゲームの将来は不透明だ。

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Apple の U2 との 1 億ドル契約の裏側 -- Billboard が、U2 の新しいマネージャー Guy Oseary にインタビューし、このバンドが Apple との間で最新アルバム "Songs of Innocence" を iTunes ユーザーに無料で配布する契約を結んだ事情を聞き出した。噂によれば今回の契約で Apple は 1 億ドルを支払ったと言われている。Oseary は Beats 共同創設者 Jimmy Iovine が U2 と親密な関係にあると説明し、今後も Apple との協力があり得ると示唆するとともに、今回の契約に対して小売店から苛立ちの声が寄せられたとも語った。

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時計の専門家の視点から見た Apple Watch -- テクノロジー専門家や評論家の多くが最近発表された Apple Watch について語っているが、それらの論評のほとんどすべてがこれをインタラクティブなデバイスとして捉え、そのさまざまの機能に焦点をあてている。けれども Benjamin Clymer は別の見方をする。腕時計と腕時計愛好家のための専門出版 HODINKEE の創設者たる彼は、当然のことながら、Apple Watch を腕時計として評価しようとする。彼の意見によれば「高級な時計のメーカーに対してこれが脅威となるとは思えないが、低価格のクオーツ時計や、さらには入門レベルの機械式時計のいくつかにとっても Apple Watch は大きな問題となるのではないかと思う。」この記事は、時計市場と、その中で Apple Watch が占める位置に関する非常に興味深い概観となっている。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2014年 9月 19日 金曜日, S. HOSOKAWA