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#1548: Apple が全プラットフォームをアップデート、記録破りの Apple Q1 2021 業績、Nomad ワイヤレス充電マット

先週、Apple は watchOS 7.3、iOS 14.4、iPadOS 14.4、tvOS 14.4 をリリースした。これらのアップデートは数多くのセキュリティ脆弱性に対処しているが、その中には 2 件の深刻なものも含まれている。また watchOS アップデートは (日本でも心電図機能が利用できるようにするとともに) 黒人歴史月間を記念した新しい文字盤を追加している。今週になって Apple はアップデートサイクルの締めくくりとして macOS 11.2 Big Sur を出した。こちらも数件のバグを修正するとともに数多くのセキュリティ脆弱性をパッチしており、上記と同じく深刻な攻撃への対処も含んでいる。世界全体が経済の諸問題に苦しむ中で Apple は圧倒的な Q1 2021 業績を報告し、記録破りの売上とすべての製品カテゴリーにおける2桁の成長を明かした。最後にもう一つ、今は開発中止となってしまった Apple の AirPower 充電マットが欲しかったと思っている人のために、Julio Ojeda-Zapata が Nomad の Base Station Pro をレビューする。最大 3 つのデバイスを置くことができる、ワイヤレス充電マットだ。今週注目すべき Mac アプリのリリースは SoundSource 5.3、Quicken 6.1、それにセキュリティアップデート 2021-001 (Catalina と Mojave) だ。

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

watchOS 7.3、iOS 14.4、iPadOS 14.4、tvOS 14.4 が深刻なセキュリティ攻撃に対処

2021 年最初のアップデートとして、Apple は macOS 以外のすべてのプラットフォームで一斉にアップデートを出し、その数日後に macOS 11.2 Big Sur を出した。(2021 年 2 月 1 日の記事“macOS 11.2 Big Sur が Bluetooth を改良、バグを修正”参照。) 今回は珍しく watchOS 7.3 が最も大きなアップデートで、Black History Month (黒人歴史月間) のためにアフリカをテーマにした楽しい時計文字盤を新たに追加している。iOS 14.4 と iPadOS 14.4 はいくつかの歓迎すべき調整を受け、HomePod Software Version 14.4 も同様だが、Apple は tvOS 14.4 については変更点を何も発表していない。今回のアップデートはいずれも深刻なセキュリティ脆弱性に対処しており、Apple によればその中には現に攻撃されている脆弱性もあるという。

機能の観点から言えば、今すぐこれらのアップデートをインストールする必要はないだろう。けれども、いくつかの脆弱性の深刻さを考えれば、早めにインストールすることをお勧めしたい。まずは1日か2日待って、直ちに良くない副作用が出ていることがないと確認したら、ボタンを押してアップデートを入手して頂きたい。

watchOS 7.3

watchOS 7.3 で最も目立つ新機能は新しい Unity 文字盤で、Black History Month (黒人歴史月間) を祝うためのものだ。Pan-African 三色旗の黒・緑・赤を使っており、時計の動きに合わせてパターンが変わる。Apple Watch にこの文字盤を加えるには、iPhone 上の Watch アプリで Face Gallery タブをタップし、Unity 文字盤をタップして、Add をタップする。

また、watchOS 7.3 のリリースノートには Apple Fitness+ 登録者のための新しい Time to Walk 機能の宣伝が載っているが、これは watchOS 7.2 で既に利用できるようになった機能であった。(2021 年 1 月 25 日の記事“新しい Apple Fitness+ の特典が歩きに出ることを促す”参照。)

海外の Apple Watch ユーザーに嬉しいニュースがある! 不規則な心拍の通知が日本、マヨット、フィリピン、台湾、およびタイで利用できるようになり、また日本、マヨット、フィリピン、およびタイのユーザーが ECG (心電図) アプリにアクセスできるようになった。

あともう一つ、リリースノートには Zoom 機能を有効にすると Control Center と Notification Center が反応しなくなることがあったバグが修正されたと書いてある。

watchOS 7.3 のセキュリティノートには 30 件のセキュリティ修正がリストされているが、そのうち一つはカーネルの脆弱性で、悪意のあるアプリケーションに権限を昇格される可能性を持つものであった。Apple によればこの脆弱性が実際に悪用された可能性があるとのことだ。

watchOS 7.3 のダウンロードサイズは Apple Watch Series 4 で 165 MB だ。アップデートをインストールするには、iPhone で Watch アプリを開き、My Watch > General > Software Update へ行く。いつも通りに、Apple Watch が充電器に接続されていて、かつ少なくとも 50% 充電されていることが必要だ。

iOS 14.4 と iPadOS 14.4

iOS 14.4 アップデートは 3 件の変更点を提供する。より小さな QR コードを認識可能になったこと、Settings > Bluetooth で Bluetooth デバイスの種類を分類するオプションにより音声通知を正しいデバイスで受けられるようになったこと、iPhone 12 シリーズモデルのカメラが正規の Apple 製カメラとして確認できない場合に通知を出すようになったことだ。

この最後の項目は興味深い。独立の修理業者 Hugh Jeffreys が全く同じ 2 台の iPhone 12 モデルの背面カメラを交換してみると,、いずれも正しく機能せず、Camera アプリがフリーズすることも多かったという。カメラをもう一度交換して戻せば問題が解決した。つまり、iPhone 12 のカメラはその iPhone にコード付けされていて、Apple の手でプログラム化されなければならず、たとえ正規の Apple 部品を使っていてもサードパーティによる修理を拒むように作られているということだ。iOS 14.4 になってこの挙動に何らかの変化があったのかどうか、知りたいと思っている。

iOS 14.4 では他にも次のようなバグが修正された:

iPad についても iPadOS 14.4 が出され、上記の変更点のうちのいくつかが組み込まれている。

iOS 14.4 と iPadOS 14.4 は全部で 43 件のセキュリティ脆弱性に対処している。そのうち一つは上で述べたカーネルの脆弱性で、もう一つはリモートの攻撃者によって任意のコードが実行される可能性を持つ WebKit の脆弱性だ。この後者の脆弱性も、実際に悪用された可能性が報告されている。

iOS and iPadOS 14.4 security notes

(iPhone 11 Pro 上で) 344.6 MB の iOS 14.4 アップデートは Settings > General > Software Update からインストールできる。iPadOS 14.4 アップデートは 10.5 インチ iPad Pro 上で 310 MB だ。

HomePod Software Version 14.4

Apple は HomePod Software Version 14.4 も出した。これは新型の iPhone にある超広帯域無線 U1 チップを利用することにより、近所の iPhone から HomePod mini へ音楽を引き継ぎ、パーソナライズされたリスニング提案を HomePod mini の隣にある iPhone に表示し、iPhone を HomePod mini に近付けたときにメディアコントロールを自動表示する。

「ご自分の裁量 (device) にお任せします」という言い回しの通り、HomePod デバイス (device) は自分で勝手にアップデートするはずだ。それが勝手に起こるまでただ待っているのは嫌だという人は、Home アプリを開いて、もしも Update Available ボタンが表示されればそれをタップすればよい。もしも表示されなければ、HomePod タイルをタッチして押し続け、歯車アイコンをタップして設定に入り、画面の上の方にある Install をタップすればよい。

tvOS 14.4

最後に、これが一番小さなものだが、Apple は tvOS 14.4 をリリースした。上記のカーネルの脆弱性を含む 31 件のセキュリティ修正を別にすれば、リリースノートには実質的に何も書かれていない。tvOS 14.4 アップデートをインストールするには、Settings > System > Software Update へ行くか、あるいはただ放っておいて勝手にインストールさせてもよい。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

macOS 11.2 Big Sur が Bluetooth を改良、バグを修正

他の Apple オペレーティングシステムに対するアップデートが出たばかりだが (2021 年 1 月 26 日の記事“watchOS 7.3、iOS 14.4、iPadOS 14.4、tvOS 14.4 が深刻なセキュリティ攻撃に対処”参照)、Apple は macOS 11.2 Big Sur もリリースして、Bluetooth の信頼性を向上させるとともに、いくつかのバグを修正した:

macOS 11.2 release notes

これらのバグ修正は驚天動地のものに思えないかもしれないが、今回の macOS 11.2 アップデートの焦点はセキュリティにあるようだ。上記とは別に、43 件のセキュリティ修正が施された。脆弱性のうち 2 つ、つまり先週の他の Apple オペレーティングシステムへのアップデートでも対処が施された 2 件の深刻な脆弱性は、実際に悪用された可能性が報告されている。しかしながら、最近 sudo Unix ユーティリティの中に発見された脆弱性については何も述べられていない。

macOS 11.2 アップデートは、公称では Intel ベースの iMac と M1 ベースの MacBook Air の双方で 3.25 GB のダウンロードとなっているが、後者の Mac のダウンロードウィンドウにはなぜか 4.18 GB と表示された。アップデートのインストール方法は Software Update を使うしかない。どうやら Apple は Big Sur のアップデートで独立型ダウンロードのリリースを止めたようだ。

Downloading macOS 11.2 on M1

攻撃された脆弱性の深刻さを考えれば、既に macOS 11.1 を走らせている人には早めに macOS 11.2 をインストールすることをお勧めしたい。まずは数日待って、予期せぬ副作用が見つかっていないことを確認してから、アップデートしよう。

しかしながら、従来のバージョンの macOS からまだアップデートしていない人には、この macOS 11.2 が状況を静観している人にも Big Sur へのジャンプを果たすために十分な自信を与えてくれるものと判断できるまで、あともう数週間待ってみることをお勧めしたい。

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Michael E. Cohen Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

Apple、Q1 2021 で嵐を乗り越え記録を粉砕

Apple は、不確かな海で上手く波を乗りこなし続けている。Q1 2021 の決算報告で、Apple は、純利益 $28.8 billion (希薄化後一株当り $1.68)、記録を更新する売上げ $111.4 billion を発表した。同社は、前年の四半期よりも売上げを 21%、利益を 35% 伸ばした ("Appleの Q1 2020 業績、iPhone は回復 Wearables は天井知らず" 28 January 2020 参照)。

Q1 results over time

Apple CEO Tim Cook は、崩れかかった世界における Apple の成功について殆ど謝罪的にすら見え、そして、この四半期投資家電話会見を同社の色々な慈善事業の概要から始めた。例を挙げると、最近発表した人種的公平イニシアチブ ("Apple、新しい人種的公平と正義のイニシアチブのプロジェクトを開始" 13 January 2021 参照)、長年に亘る Product Red への協賛、そして米国経済に対する $350 billion の投資の誓約等である。

しかし、その経済的成功を無視するわけには行かない:同社は、全ての製品分野でそして全ての営業地域で二桁の成長を記録した。FaceTime ですら、上昇の四半期を経験した: Cook 曰く、Apple はホリデーシーズンにこれ迄で最高の数の FaceTime 通話を処理した。彼はまた、この四半期に 16.5 億台の Apple 機器がアクチベートされたと言った。

iPhone 業績

Apple は前年比で 17.2% の上昇を iPhone 売上げで記録し、前年同期の $56 billion から $65.6 billion への増収となった。CFO Luca Maestri は、売れ筋として具体的に iPhone 12 Pro と 12 Pro Max の名前を挙げ、そして iPhone 12 の顧客満足度は 98% だったと言った。Maestri は iPhone 12 mini とその販売は期待外れだという噂については何も語らなかったし - アナリスト達も何も質問しなかった。

iPhone Q1 2021

一つ興味を引く数字がある:この四半期末までに、ユーザーは十億台の iPhone をアクチベートした。

Mac 業績

Mac の製品群は前年比 21.2% の売上増であった。Maestri は、Apple の新しい M1 チップを搭載した MacBook Air, MacBook Pro, そして Mac mini の新しいランナップが大きく貢献したと語った。Mac は $8.7 billion を Q1 2021 に稼ぎ出したが、Q1 2020 には $7.2 billion であった。Mac の販売は全ての地域で上昇し、そして Mac は平均すると 94% の顧客満足度を得ていると彼は語った。パーソナルコンピュータ市場における Apple の比較的低い市場シェアを考えると、新しい M1-based Mac のこの力強い販売実績から、Cook はバラ色の将来をこの由緒ある製品群に対して予言していた。

Mac Q1 2021

iPad 業績

iPad は傑出した四半期となり、殆ど衝撃的と言える前年比 41.1% の増収で、前年同期の $6 billion から上昇し $8.4 billion の売上げを Apple にもたらした。Cook は iPad 製品群を Apple の中で史上最善のものと位置づけ、ラップトップコンピュータの置き換えとして買った人や、ラップトップやデスクトップに加えて買っている人もいると指摘した。パンデミックの最中の遠隔コンピューティング機器としての必要性がこの製品群の四半期成功に貢献したのはまず間違いない。しかしながら、Cook はまた、教育市場での販売成長の効果についても言及した。日本とドイツの学校における、iPad の展開はこれ迄の最高となっている。

iPad Q1 2021

Wearables, Home, and Accessories 業績

Apple のその他部門である Wearables, Home, and Accessories もまた好調で、前年比 29.6% の増収であった。この部門の売上げは $13 billion で、前年同期より $3 billion 増えた。新しい高級機種 AirPod Max ヘッドフォンを含んだ AirPod 全般が、ホリデーシーズン期間中の極めて好調な需要もあって、この部門の業績を押し上げた ("2020 年の Apple の あともう一つ: AirPods Max" 8 December 2020)。この新型ヘッドフォンの $549 という値札にも拘わらず、Cook は当分の間供給はタイトだろうと語った。Cook はまた、$99 で売られているソフトボール大の新しい HomePod mini の好調な売上げも賞賛した。

Wearables Q1 2021

Services 業績

最近の四半期で急増していた Services 部門もまた目覚ましい業績を上げ、前年比 24% の増収を記録した。Apple は、Apple Music, iCloud, そして他のサービスに加えて、新しい Apple One サービスバンドルも多大な貢献をしたと言った。App Store の定期購読も増加した。しかしながら、Apple は恐らく Apple TV+ の貢献を余り表に出せないであろう。と言うのも、 その顧客の殆どは無料のお試し期間にあるからlである。この試行期間は再び延長され、今や July 2021 迄となっている。Services はこの四半期に $15.8 billion を稼ぎ出したが、前年同期は $12.8 billion であった。

Services Q1 2021

国際市場特記

Apple の販売は、全ての世界市場で増加した。とりわけ中国での事業は好調で、57% の増収を記録し、Cook は 5G 対応の iPhone 12 ラインが好調の一つの要因だとした。Cook は、中国では 5G ネットワークが良く発達しており、需要はもう既に存在していたと言った - もっとも、彼は Apple の中国での成果の要因は何も iPhone と 5G だけではない事を直ぐに付け加えた:Mac と iPad の中国での販売は、"会社の平均" 以上であった。

この四半期での日本での販売も増加し、売上げは 33.1% 上昇した。好調の一因は記録となる iPad の需要であった。他の地区に目を転じると、Europe は 17.3% 成長し、Rest of Asia Pacific は 12.3% の成長、そして Americas は 11.9% 増加した。

Cook は、Latin America と India における成長の機会にも言及した。後者の地域での販売は昨年倍増したが、彼は、そこでの Apple の市場シェアは余りにも低いので、今後の成長余地は十分にあると表現した。

Apple Regional Q1 2021

Apple はお金を手放すことも出来ない

巨人 Apple の快進撃の速度を遅らせられるものはあるのであろうか? 数ヶ月の間、Apple も冷えてきた様に見えた時もあったが、COVID-19 パンデミックの最中にあっても、同社は記録を粉砕し、投資家を驚嘆させる迄に戻った。この四半期電話会談の参加者は誰もが Tim Cook を心から褒め称えることから始めた。事実、その賞賛は余りにも感情にあふれ、繰り返されたので、もしいい加減に聞き流していたら、彼には赤ん坊が生まれたばかりだと思えたかも知れない。

興味深いことだが、Apple が上手くやっていない数少ない分野の一つは、その保有現金を放出するという使命にあるかも知れない。Q1 2021 のプレスリリースで、Apple は、"我々はまたこの四半期中に $30 billion 以上を株主に返還し、長い目で見て正味でのキャッシュニュートラルの状況に達するという目標を維持している" と言っている。

この四半期に $30 billion を手放しても、Apple には $195.57 billion の手持ち現金があり、実際の所、前四半期よりも 2% 増加している。同社は、お金を文字通り入ってくるよりも早く放出出来ていないのである。ひょっとすると、同社は Apple ユーザー全員に景気刺激の報酬を送る事を考えても良いのかもしれない。

少なくとも、無料の iCloud ストレージ容量を、恥ずかしいほど小さい 5 GB から増量する事ぐらいはして欲しい。

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Julio Ojeda-Zapata  訳: Mark Nagata   

Nomad マルチデバイス充電器が AirPower 後継の座を狙う

ワイヤレスでスマートフォンを充電したければ、簡単なことだ。シンプルな、ある程度の品質を備えた Qi パッドを $30 ほどで買ってきて、電源に挿し、充電面の上に iPhone を置いて、バッテリーが満タンになるまで待てばよい。

Qi 充電パッドの厄介な点は iPhone をぴったり正確な位置に置かないと充電されないことだ。正確に位置を決めることで iPhone 内部の金属製の充電コイルが Qi 充電器の中の対応するコイルと正しく揃うようになる。

Apple は AirPower で、先進国ならではのこの悩みから私たちを解き放とうと考えた。それは、同時に複数個の Apple デバイスを引き受けることのできるものになるはずであった。けれども結局、 AirPower は日の目を見ることがなかった。報道によればその理由は発熱の問題が解決できなかったからだという。(2019 年 3 月 29 日の記事“Apple、AirPower を中止、熱を処理出来ない”参照。) それでも、AirPower のアイデアは消えはしなかった。Apple が正確な位置取りを得るため MagSafe へと方向転換した一方で、他の会社が AirPower 流の製品を出してきた。

その種のアクセサリーの一つ、Nomad の Base Station Pro を私はテストしてきた。これは魅力的で頑丈に作られた複数デバイス用の充電パッドで、AirPower が宣伝していた機能のすべてを実現する訳ではないが、それでもやはり見事な工業技術の粋と言える。特に注目すべきは、この Base Station Pro が iPhone の正確な位置取りを要求しない点だ。

Base Station Pro with two iPhones and AirPods

この Base Station Pro は出荷された製品でありながら同時にテクノロジー上の概念実証の存在でもある。これは、AirPower 後継の座を狙う自由配置充電テクノロジー Aira FreePower の好い見本となるべく意図され、またさらにその先を意図するものでもある。Aira 社を創設した人たちは、充電面をいたる所に、家具に内蔵したり、自動車の室内に統合したり、コーヒーショップのカウンターに取り付けたりすることを目指している。

確かにとてもクールだが、Base Station Pro の購入を検討する人たちは直ちにジレンマに遭遇する。はたしてこれは $199.99 も出して買う価値があるのか? 普通の Qi パッドを 3 台買う方がずっと安いのに?

素敵だが、欠点がある

この Base Station Pro の価格が高い理由の一つは、手の込んだ物理的構造にある。実用的なプラスチックやゴムを使わず、頑丈なアルミニウムの本体の上に革で覆われた充電パッドがある。厚さはたったの半インチ (1.3 cm) ほどだ。旧型の Base Station と見掛けは似ているが、Aira テクノロジーがその価格をさらに押し上げている。

Base Station Pro には一つはっきりした欠点がある。Aira 充電が Apple Watch に対応していないのだ。Nomad はこれを回避するため、ウォッチパック用にクリップオン式のアルミ製マウントを無料で提供する。ただし、それを使うためには Base Station Pro の 30 ワット USB-C アダプタとは別に、そのための電源アダプタを自分で用意しなければならない。その場しのぎの解決策であってケーブルの乱雑さを招くけれども、見た目はそれほど悪くない。

Base Station Pro with Apple Watch, iPhone, and AirPods Pro

約束の通り、Base Station Pro では iPhone や AirPods ケースを置く場所について融通が利く。苦労して正しい場所に置いたりせずとも、デバイスを斜めに置いてもかまわない。ただし下の図に示すように、それぞれのデバイスがパッド表面の3分の1程度を占めている必要がある。

iPhones and AirPods Pro at different angles

Aira のテクノロジーは、内蔵基板に六角形の充電コイルを互いに重ね合わせて 18 個組み込むことによって隅から隅まで充電できるようにしていると主張する。けれども私の経験では、AirPods ケースを Base Station Pro の縁に近い部分に置くと時々充電しないことがあった。

4 個目のデバイスを置こうなどと考えない方がよい。私は 2 台の iPhone を両側に、真ん中のところに AirPods ケースを 2 個置いて試してみたが、うまく行かなかった。充電器前面の充電表示ライトが (4 個でなく) 3 個しか点灯しないという事実が、私がやり過ぎていたことを示していた。AirPods ケースは片方しか充電されていなかった。

デバイス 2 台のみを充電する場合には、Aira テクノロジーがさらにもっと自由な位置取りを許す。2 台の iPhone (あるいは iPhone 1 台と AirPods Pro ケース 1 つ) ならば、事実上パッドのどこに置いても、ほとんどどんな角度で置いても大丈夫だ。

iPhones and AirPods Pro at different angles

Base Station Pro は 7.5 ワットで充電する。これが、標準的な Qi アクセサリーによる iPhone 対応の最大ワット数だ。これと比較して、iPhone 12 を Apple の MagSafe で充電すれば 15 ワットだ。ただし iPhone 12 mini のみは例外で 12 ワットの充電になる。

Base Station Pro の使用に際して起こり得る問題が 3 つある、と Nomad は警告する:

もう一つの問題が、Apple が iPhone 12 をリリースした際に表面化した。MagSafe 用磁石が Aira 充電と干渉するので、旧モデルの iPhone よりも充電が遅くなったり、信頼性が落ちたり、全く充電しなかったりする可能性がある。

iPhone 12 のハードウェアが既存のワイヤレス充電で問題を起こすというのは結構よく聞くことだが、Apple は iOS 14.2 でこの問題に少なくとも部分的には対処を施した。(2020 年 11 月 5 日の記事“Apple、iOS 14.2、iPadOS 14.2、watchOS 7.1、HomePod Software 14.2、tvOS 14.2 をリリース”参照。)

Nomad も解決策の可能性を一つ持っている。Base Station Pro を Mac に接続して updaterアプリを走らせることで、ファームウェアをアップデートすることができる。Nomad によれば、最近のアップデートによって「体験がかなり向上しました。iPhone 12 が初めて出た当時よりも、今ではずっと良い具合になっています」とのことだ。

私の体験もそれを裏付けている。Base Station Pro をテストし始めた頃は充電に信頼性がないという感じがしていたけれども、最近になってパフォーマンスが一貫して良くなったと思う。最近 2 週間はこれを主たる充電器として使っているが、大きな問題は起こっていない。Nomad によれば近日中にまたソフトウェアアップデートを出して充電体験にさらなる向上を図るという。

費用に見合うか?

では、iPhone ユーザーならば $200 出して Base Station Pro を購入することを真剣に検討すべきだろうか? その答は単純ではないだろう。次のような要因を考えてみよう:

マルチデバイスのワイヤレス充電器は他にもあって、かなり安く買えることも多い。ただ、そういうものを買う前に注意して調べておく方が良い。素敵に見えたのに私の机の上で欠陥を見せたのが Belkin の $129.99 の TrueFreedom Pro で、素敵にずっしりとして革で覆われた Qi パッドだ。互いに重なり合ったコイルのメッシュを内蔵していることにより置く場所に融通が利く点は Base Station Pro と同じだ。でも、この TrueFreedom Pro は同時にたった 2 台のデバイスしか充電できず、しかも Apple Watch はどうやっても充電できない。

また、TrueFreedom Pro もやはり iPhone 12 で問題が起こる。Belkin は製品ページの中で「iPhone 12 モデルとは非互換」と説明している。私の iPhone 12 デバイスを充電することはできたけれども、Belkin からのメッセージには他のスマートフォンに比べて遅くて信頼性も劣るかもしれないと書いてあった。Base Station Pro と違って TrueFreedom Pro にはファームウェアアップデートがないので、どのような iPhone 12 非互換性も将来変わる見込みはない。

結論

私は Base Station Pro を使うのが好きで、将来のファームウェアアップデートによってより良いものになるのを楽しみにしているけれども、もっとシンプルでもっと安価な選択肢が他にある以上、その将来は安泰ではない。標準的な Qi 充電器は高級に見えもせず必ずしも最速の充電ができるとも限らないが、それでも一晩かければ私の iPhone を何の問題もなく充電できる。高速充電の必要があれば、Lightning ケーブルを差し込めばよいだけだ。確かに、標準的な Qi パッドの上で iPhone を探りながら動かして充電が始まる位置を見つけるのは厄介かもしれない。でもそれは、少し練習すれば自然にできるようになることだ。

結局、Nomad Base Station Pro で置く場所に融通が利く点は、高いお金を出す理由になるだろうか? もちろん、それだけの余裕のある人には素敵なアクセサリーとなるだろう。でも予算的に厳しい人にとっては、お金の節約をする方が賢いと言えるだろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

SoundSource 5.3

SoundSource 5.3

Rogue Amoeba が SoundSource 5.3 をリリースした。このオーディオコントロール・ユーティリティへの大きなアップデートで、アプリ内キーボードショートカットでのデバイス切替を高速化している。SoundSource のグローバルホットキーで SoundSource を前面に出し、それから Command-0 を押せば Output Device のデバイスセレクタがハイライト表示される。矢印キーで望みのデバイスを選んでから Return を押せばよい。今回のリリースではまた特定のアプリケーションまたは出力デバイスについてエフェクトの処理を無効化する Bypass Effects オプションを新設し、カスタム作成のプロファイルをロードする Headphone EQ エフェクトを有効化し、SoundSource の Undo 対応を改善し、メインウィンドウが開いていない場合に誤ってキーボードショートカットを受け入れてしまっていた問題を解消し、Audio Capture Engine をバージョン 11.6.3 に更新し、M1 ベース Mac とのフル互換性を提供した。(新規購入 $39、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、24.2 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

SoundSource 5.3 の使用体験を話し合おう

Quicken 6.1

Quicken 6.1

Quicken Inc. が Quicken for Mac のバージョン 6.1 をリリースした。この財務管理アプリのメンテナンス・リリースで、新しい調整機能を組み込むとともに、レポートの保存挙動をより一貫性あるものにしている。今回のアップデートでは調整済みのセッションをすべて記録して新設の Reconcile History ウィンドウで一覧できるようにし、レポートの保存のためのプロンプトを出すことであなたの望む変更が保存されるようにし、Quick Pay や Check Pay を使って支払いをする際に過去の支払額を表示するようにし、Check Pay の支払いが到着すべき日を選べるようにし、編集や同期の後に QuickFill ルールの一部が削除されることがあったバグを修正した。(講読年額 $35.99/$51.99/$77.99、購読者は無料アップデート、リリースノート、86.2 MB、macOS 10.13+)

Quicken 6.1 の使用体験を話し合おう

Security Update 2021-001 (Catalina and Mojave)

セキュリティアップデート 2021-001 (Catalina と Mojave)

Apple が macOS 10.15 Catalina 用と 10.14 Mojave 用にセキュリティアップデート 2021-001 をリリースして、Catalina で 32 件、Mojave では 23 件のセキュリティ脆弱性をパッチした。その中には Apple によれば現に攻撃されている脆弱性もあるというカーネルのバグも含まれている。これらのアップデートには Software Update からアクセスできる。攻撃されている脆弱性の深刻さを考えれば、まずは1週間ほど待って何か良くない副作用が出ないかどうか確認してから、これらのセキュリティアップデートをインストールすることをお勧めしたい。もしもアップデートした後で何か問題に気付かれたら、どうぞコメントに書き込んで知らせて頂きたい。(無料、サイズはいろいろ、リリースノート、macOS 10.15.7 および 10.14.6)

セキュリティアップデート 2021-001 (Catalina と Mojave) の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: 亀岡孝仁

Apple、Black History Month を祝う

Black History Month 参加の約束の中で、Apple はその広範囲な分野に亘る数々の展示を立ち上げる体勢を整えている:App Store, Apple Music, Apple Maps, Apple TV, Apple News, Apple Books, Apple Podcasts, Apple Fitness+, Shot on iPhone, そして Today at Apple すらも含まれる。

Black Unity Apple Watch

最も目を引きそうなものとして、Apple は "Black Unity コレクション" を用意していて、特別版の Apple Watch Series 6 ($399-$499), Black Unity Sport Band ($49), そして特別の African テーマの文字盤からなる ("watchOS 7.3、iOS 14.4、iPadOS 14.4、tvOS 14.4 が深刻なセキュリティ攻撃に対処" 26 January 2021 参照)。Apple は、そのプレスリリースで、これらの製品からの収益は、平等と公民権に焦点を当てる6つの世界的な非営利団体を支援するために使われると言っている。

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Apple の Data Privacy Day、プライバシー努力を強調

Apple は 28 January 2021 を Data Privacy Day と宣言し、その機会を利用して iOS App Store での新しいアプリプライバシーラベルと来るべき App Tracking Transparency 機能を強調した。後者の機能は、ユーザーデータをアプリを通して追跡したり、そのデータを他の会社と共有したりする前に、ユーザーの許可を求めることを開発者に強制するものである ("Apple、アプリのプライバシーに関する開示とオプトインの厳しい要件を発表" 7 January 2021 参照)。

一方で、プライバシー分布の反対極では、App Tracking Transparency 機能に関して Facebook が Apple に対する訴訟を準備中だというニュースが同時に流れてきた。

Apple はまた "A Day in the Life of Your Data" と呼ばれる PDF 報告書を出した。それは、テック会社があなたをどの様に追跡しているか、そして Apple の技術はその追跡をどの様に阻止しようとしているかを説明している。

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2020 年の Apple:The Six Colors Report Card

殆どの統計を見れば、2020 年は、最悪の、恐ろしい、良くない、どうしようもなく悪い年であり、多くの人に "AustraliaNew Zealand に引っ越そうかな" と呟かせる程であった。しかし、Apple はどうであったか? 金銭的には、同社はパワー全開であった ("Apple、Q1 2021 で嵐を乗り越え記録を粉砕" 27 January 2021 参照)。しかし、販売は成功の完璧な反映とは言えない、とりわけ、Apple の様な沢山の製品群と構想を持つ会社にとっては。

2020 年の Apple の成果についてより微妙な差異を明らかにする全体像を探り出すため、Jason Snell は再び著名な 55 人のテック評論家のグループからアンケートをとり、年次 Six Colors Apple 成績表に取りまとめた。他の多くの良く知られた名前に加えて、そこには我々の仲間 Adam Engst, Josh Centers, Michael Cohen, Glenn Fleishman, そして Rich Mogull, 更に Take Control Books からの Joe Kissell の考えが反映されている。

Mac は M1-powered Mac が展開されたお陰で点数を大幅に上げ、そして Apple の点数は、iPhone, サービス、HomeKit, ハードウェア信頼性、ソフトウェア品質、そして環境と社会問題で改善した。しかしながら、Cupertino では全てがバラ色だったわけではなく、iPad, Apple Watch, Apple TV, 開発者関係、そしてウェアラブルでは点数を下げた。

Six Colors report card change between 2019 and 2020

何時ものことだが、報告書全体が読むに値する、とりわけ、あなたの好きな Apple 賢人からの簡潔な引用は。

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