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#1594: iOS 15.2.1、AirTag ストーキング、2022 年の CES テクノロジー動向

先週、Apple は iOS 15.2.1 と iPadOS 15.2.1 を出して、HomeKit 関係の厄介な脆弱性を修正するとともに、いくつかの細かなバグをパッチした。Apple の位置情報追跡機 AirTag がストーカーや泥棒に悪用されていると警察もメディアも騒ぎ立てているが、Glenn Fleishman がこの懸念について検討し、それが現実の懸念なのか誇張されたものなのかを考える。それから、Jeff Porten がラスベガスの CES への仮想の旅から戻って、2022 年に注目すべきテクノロジーの動向について Consumer Technology Association による考察 (と彼自身のそれに対する反応) を伝える。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Mactracker 7.11.1、HandBrake 1.5.1、Default Folder X 5.6.3、Fantastical 3.5.2 と Cardhop 2.0.8、Mimestream 0.32、SoundSource 5.3.9、ScreenFlow 10.0.4、Mellel 5.0.9、Bookends 14.0.4、それに Microsoft Office for Mac 16.57 だ。

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

iOS 15.2.1 と iPadOS 15.2.1 が Messages バグと HomeKit 脆弱性を修正

Apple が iOS 15.2.1 および iPadOS 15.2.1 アップデートをリリースしたが、バグ修正はたった 2 件だけであった:

それよりもっと興味深い変更点が、セキュリティノートに記されている。ある厄介な HomeKit 脆弱性に関するたった 1 件のセキュリティ修正で、悪意を持って作成されたある HomeKit アクセサリ名 (500,000 字ほどを含んでいる) がそれを処理した iOS および iPadOS デバイスを妨害し、再起動してもその状態は直らないというもので、唯一の解決法はデバイスをリセットしてリストアすることであった。セキュリティ研究者 Trevor Spinolas が 2021 年 8 月にこのバグを Apple に報告していた。この脆弱性がいくら稀なものであるとしても、Apple がバグの存在を認めて修正するまでにこれほど長い時間が掛かったというのは困ったことだ。セキュリティ研究者を大切にするのは、Apple にとってプラスになることでしかないのに。

もしあなたが HomeKit を使っているなら、あるいは Messages や CarPlay のバグに遭遇したことがあるなら、直ちにアップデートすべきだろう。そうでない人には、何か新たな問題が起こらないかどうか数日待ってからにすることをお勧めしたい。

iOS 15.2.1 アップデート (iPhone 11 Pro 上で 804.8 MB) と iPadOS 15.2.1 アップデート (2020 年型 iPad 上で 676.6 MB) は Settings > General > Software Update でインストールできる。

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Glenn Fleishman  訳: 亀岡孝仁  

AirTag: 隠れたストーキング危険それとも最新の誇大化された都市伝説?

逸話の複数形は統計ではない。しかしながら、確かなデータが欠落しても、逸話は成立する。どうもそれが Apple の AirTag に関係した望まない追跡の危険性の事例の様に見える。幾つかの最近のニュースや警察の発表で、それはストーカー行為や車の盗難の媒介者として言及されている。

報じられた出来事全てを額面通り取ったとしても、米国とカナダでの既知の出来事の数は数十に過ぎない。それなのに、その激怒ぶりや並外れた報道ぶりは何故なのであろうか? 分かっていること対する恐れは氷山の一角に過ぎない。通常であればそれは普通の心配事であるが、パンデミックの時代にあっては強調され、我々の評価軸は余りにも外れており、危険度と反応をどの様に判断するかを理解するのは困難かも知れない。

未知のものを追跡する

AirTag や同様の Chipolo ONE Spot がどの様に動作するのか見てみよう ("Apple の AirTag、鍵探しの手助けを約束" 20 April 2021, そして "おーい Chipolo! Find My ネットワーク追跡機 ONE Spot 登場" 24 August 2021 参照)。これらの小さな、低出力の Bluetooth に基づいた製品は暗号化された識別子を連続的にブロードキャストし、それは最新のオペレーティングシステムが走る Apple 機器によって最大数百フィートの範囲で検知され得る。この Bluetooth ID は逆追跡されないよう定期的に変更される:静的な ID を使えば、他の人がそのブロードキャスト製品を追跡することを許すことになる。(Apple はこのやり方を、同社と Google が COVID-19 接触追跡を提供するシステムに採用した。)

Internet 接続を持ちそして Find My ネットワークが有効にされた Mac, iPhone, 或いは iPad なら何でも、既知の現在地と Find My 製品に対するパターンに一致する Bluetooth ネットワーク識別子を結合させられる。場所データと Bluetooth ID を組み合わせたものは Apple にアップロードされる。Apple はこれらの位置情報を使ってその機器を特定することは出来ない。と言うのも、その Bluetooth ID 暗号は、iCloud にリンクしたアカウントの一部であるネイティブの Find My アプリにしかそのデータを要求し復号することを許さないからである。全ての AirTag と Find My 製品は一台の iPhone 又は iPad を使ってペア付けされ、そしてそれらの暗号化キーはそのユーザーの他の機器間で共有される。

その小ささ、間欠的な Bluetooth 信号送出、定期的な ID 変更、自動的信号リレー、そして長い電池寿命故に、AirTag はその人に知られることなく誰かを追跡するのに理想的な機器に見えるかも知れない。AirTag が近くにある人に対して注意を呼びかけるために Apple が導入した安全策が無ければ、そうだと言える。私は誰かがアラートされる場合全てを記述した記事を前に書いた - "AirTag があなたと一緒に動いているという警告が出た場合" (4 June 2021) 参照。要約すると:

これらの安全策には、通知を巡っていじれる余地が未だかなり残っている。"AirTag 追跡をめぐる 13 通りの状況" (15 May 2021) でも書いたように、悪意の人がパートナーの所有する車やバッグの中に追跡器を忍ばせ、そのパートナーの iPhone は Find My ネットワークがオフになっているようにすることも可能である。その車やバッグがそのストーカーの近くに約8時間以内に戻ってくれば、警報音が発せられることは決してない。

望まない追跡の問題は、AirTag の殆どあらゆる側面に関わる不透明さによって悪化している。AirTags や同様の Chipolo ONE Spot Find My 追跡器がこれ迄に何台売れているのか我々は知らない。人々が自分と一緒に移動している追跡器に関して日々受け取るアラートの数も我々は知らない。その内、どれだけが偽検出なのか我々は知らない:偽検出とはある人の近くにたまたまある追跡器がその人には無関係なアラートを誘発する度合いを言う。

最も重要なこととして、どれだけの数の Find My 追跡器が、成人や養育権を持たない子供を、彼らの知識や同意なしで、追跡しようとするために使われているかを我々は知らない。(自分の子供や自分が保護観察権を持つ子供を追跡する問題は、州毎に異なるより複雑な法的問題の領域に入ってしまう。)

我々は何を知っているか?

報道や警察の報告を見てみよう。

過大評価しない

ここ数週間の話を幾つか集めてみたら、きちんとした報告に見えるものが、人々は誰かが実際に彼らを追跡している或いは前にされたことがあると信じていると報じているように見えた。(同時に、私はより多くの人が紛失したものを、時には盗まれたものを AirTag を使って取り戻せた実体験を共有するのも見始めている。)

一番飛び交った話とその後追い報告は、Ontario, Canada の York Regional Police から発せられた。それは次の様に言っている:彼らが確信しているものには5つの事案があり、車両窃盗団が公の駐車場に止まっている高級車に AirTag を仕掛け、後でその所有者の家にあるのを見つけ、彼らの都合の良い時にそれを盗むというものである。

An AirTag hidden in an electrical adapter compartment
Ontario, Canada の警察はこの画像を載せて、車泥棒がこの AirTag をトレーラー接続用の電気アダプターの内部に隠していたと説明している。

警察署はこのビデオを Twitter に、そしてより詳細な説明と写真を含む報道発表をそのウェブサイトに載せた (Internet Archive リンク)。(このリリースはもう見ることが出来ないが、撤回ではない:ツイートは未だ見られるし、そして York 警察はそのポストを定常的に4週間以内に削除しているように見える、恐らく自動的に。)

それは 2 December 2021 のことで、その後も、具体的な事案の話が幾つか続いた:

私はまた、意識を高めることと一般的な不安を引き起こすことを併せ持ったより一般的なものも見つけた:

最も思慮深い記事は University of Wisconsin の警察部門からのもので、Apple AirTag とあなたの安全.、と題するものである。このブログでは次の様に報じている、"UWPD は UW-Madison キャンパスで過去数週の間に AirTag 警告メッセージを受け取ったとする個人からの報告を3件受け取った。" しかし、それには非常に大事な但し書きが付いている:"どの事例でも AirTag は見つけられていない... 個々人が悪意の下に追跡されていたと言うよりは、近くのアパートや学生寮の部屋からの AirTag 信号が拾われた可能性が高いと思われる。"

人々は過剰反応しているのであろうか? とんでもない:その内容は間違いなく気がかりである。誰かがバーから、職場から、或いは学校から私をつけてきているかも知れないと疑われるような事態に直面したら、私は間違いなく警察を呼ぶ。そして、私は性的嗜好から言うとストレートの男であるが - もしあなたが男以外の性そしてストレート以外の性的嗜好だと自認するのであれば、その不安感は遙かに高いものであろうと想像する。何故ならば、見知らぬ人、家族、そして元パートナーによるストーカー行為、そして対象となる人口の 70% かそこらでの暴力のこれ迄に十分書かれてきた危険性の高まりがあるからである。

でも、ちょっと待って欲しい。もしこれらの事象が定常的に起こっているのであれば、報道記事は爆発的に増えると私には思える。AirTag は明確なアラートを提供する;実際に現物を見つければ警察に訴える証拠となるし、警察はストーキングの目的で GPS 追跡器が車に隠し置かれる事例には慣れている。アラートを受けたことだけでは警察はまともに取り合ってくれないなかも知れないが、AirTag を見つければ、それは間違いなく被害届の対象となる。上記の話の幾つかでは、警察は AirTag と関連付けられている登録情報を入手する手続きを始めたり、完了したりすらしている。理屈の上では、そこから犯人を割り出せるはずだし、ニュースメディアもこれらの話を追い続けるべきである。

覚えておくべきは、AirTag は一つの iCloud アカウントにロックされており、一つの電話番号と紐付けされており、そして内部には不変のシリアル番号を持っていることである。AirTag を見つけた人がそのシリアル番号を読み出すために必要なのは、NFC 対応の Apple 又は他の機器だけである;他の Find My 項目を持った iPhone か iPad が必要。これら全てを合わせて考えれば、AirTag は悪人が誰かを追跡するには危険度の高い方法であることが分かるであろう。悪人達が burner Apple ID を作り出し [訳者注:burner とは使い捨てのもので、それを作り出すツールが出回っている] そして潜在的には個別のセルラー ID からは追跡されない burner iPhone を使うという先見の明を持っていれば話は別である。Apple は iMessage やその他の沢山のデータに対してプライバシーを約束しているが、同社は、令状があれば、一つの iCloud アカウントが誰に属しているかの様なものは明かすであろう。

報道や警察発表の中には、過去の恐怖や繰り返し起こる都市伝説のにおいに満ちた物がある。1980 年代には、米国内の法執行機関は Satanism (キリスト教の儀式に倣った悪魔崇拝) では人間の生け贄とする、幼児の殺害を含む、ことが蔓延していたと確信していた。成人或いは幼児の行方不明は無いにも拘わらず - Satanist! 1987 年の Chicago Tribune から

しかし、国中の増大する警察捜査員にとって、儀式的な手指切断、放血そして時には殺人の話は現実の話である。セミナーやカンファレンスで、彼らは、通常であれば奇妙なそして説明の付かなく見える犯罪の背後にある悪魔のような動機のしるしを見つける訓練を始めた。"

同様に、毎年 Halloween の時期に、カミソリの刃の入ったリンゴや毒入りキャンディについての警告が警察から出るが、米国では 2008 年から 2019 年の間に報告されたのはたったの4件で、それ以前は殆ど無かった。有名な 1974 年のキャンディに毒を仕込んだ話は無差別では無かった:父親が彼の子供を殺害したのである.。また、子供向けのタトゥー貼り絵に LSD を塗ったいたずらも進行中である。そして、夜間にヘッドライトを消した車に対してヘッドライトをハイビーム照射すると、ギャング入門儀式の一部としてあなたを追いかけそして殺すというものもあるが、この様にして殺されたという報告は未だ無い。(嫌がらせ運転は別物である。)

作り話をするのは人間である。技術不信の表現として現代世界における恐怖を表すのも人間である。そして、Find My 追跡器には、これ迄の機器よりも遙かに簡単な方法で追跡され得るというリスクは疑いなくある。注意深くいることは役立つ、そして Apple が出来る事はもっとある。

追跡器に気をつけよう

もし心配ならば、自分自身と愛する人達とを望まない追跡から守るにはどの様なことをすれば良いのであろうか?

我々にはどうしようも無いことが一つ? 近くにある Find My 製品に対するアクティブスキャンである。 Find My 機器を探すため自分の周りをスキャンすることを Android フォンからは強制出来るが、同じことが Apple のハードウェアからは出来ないというのはとても奇妙なことである。iOS 15.2 beta では、Find My アプリの Items ビューの中の一つの項目は Items That Can Track Me, と読め、Tracker Detect 能力を提供するように見えた。でも、それは 15.2 の製品リリースには無かったが、Apple は次期リリースにそれを含めるべく最善を尽くすべきである。これがあれば、iPhone や iPad ユーザーは、心配ならば、車、バッグ、或いは家を調べてみることが可能になる。(そして Tracker Detect for Android も自動で働くはずである。iOS の Find My アプリはそうだからである。)

基本的に、我々は人々が悪い行いをしないようにする事は出来ない。無線技術以前には、誰かが小麦粉の缶をあなたの車の後ろに取り付け、小さな穴を開け、そして道路上の白い粉の跡を追いかけた。比較的高価な GPS 追跡器になると、より強力で周りにリレーしてくれるものを必要としない。虐待の、或いは疑い深いパートナーは、単純に Find My を Family Sharing 経由で使用して、あなたの iPhone や MacBook の居場所を見るかも知れない。

AirTag は新しい種類の危険をもたらす訳では無い。それは、他の人を追跡することに関して分別ある或いは合法的である線を超えて行ってしまうのを手助けする古いゲームへの単に新しいそして曲解された参入でしかない。Apple は、一方で紛失したバックパックや鍵を探し出すのに有用でありながら、安全を重視して AirTag を巡るパラメーターを精査し続けるべきである。

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Jeff Porten

CES 2022: 今年もまた新たなテクノロジー動向

この前の 1 月からもう十年も経ったのかという気がしていても無理もないことだとは思うが、実際にはもちろんたった一年しか経っていない。そうしてラスベガスでは、また CES が開催されている。通常通りにこのショウは 2 日間の Media Days で始まり、集まった報道関係者たちに情報がもたらされるのだが、これらのイベントも、またショウの残りのイベントも、“新しい通常”通りに、オンラインのハイブリッド・フォーマットで放送されている。とりわけ去年の CES のオンラインフォーマットに私はがっかりしたし (2021 年 2 月 11 日の記事“CES 2021: マルチポート iPad ケース、MacBook Pro 用 SSD、ビデオ会議用カメラ、自分で運転する飛行機”参照)、今年も仮想の参加となってやはり私は嬉しくない。でも、Omicron COVID-19 の大波がやって来ていること (感染も拡大も望みたくないところだが) と、旅行予定であった週だけで何千ものフライトがキャンセルされていることを考えれば、今年もまたリモートから CES にログインする方が賢明なように思えた。

Media Days の呼び物の一つが Consumer Technology Association による Tech Trends to Watch プレゼンテーションだ。手に負えないほど陽気な調子でコンシューマ向けテクノロジーの良い面だけを押し出そうとするところは予期した通りだが、それでもそこには興味深い数字が含まれている。ただ、今年は部屋の中に吠えない大きな犬が鎮座していた。つまり、今年のプレゼンテーションは私の予想に反して COVID-19 についてほとんど触れなかったのだ。例年通りに CTA の Vice-President of Research である Steve Koenig がプレゼンテーションの壇上に立ったが、彼はほんの数回「パンデミックの季節」という言い方をしたのみだった。それは私には、まるで彼がウェスタロスに住んでいるかのように聞こえた。かの大陸では一つの季節が何年も続き、二年間も閉じこもっては少しだけ外へ出られるようになったりするという... いやいや話を地球上に戻そう。ここではアメリカ人のたった 62% しかフルにワクチンを接種しておらず、ブースター接種を受けたのはたった 21% だ。世界中を見渡せばその数字はそれぞれ 51% と 7% になる。

ここ二年間で感染力の強い COVID-19 変種が2つ登場し、ワクチンを接種していない人口が新たな変種を生む場所となり感染を広げる媒介となる。そういう事実とワクチン接種率とを見れば、任務達成と宣言してパンデミックの終わりを告げられる日がいつになるのか、分かったものではない。そうなる代わりに、おそらく私たちはそれぞれのコミュニティーが継続的にパンデミックの状況に合わせて半永久的な“ニューノーマル”を受け入れて行くという、まさに気候変動に対処するのと同じ姿勢を続けなければならないのだろう。そのような認識が Koenig のプレゼンテーションには一切見られず、重要なテクノロジーが現実に私たちの社会の中でパンデミックに適応してきたという事実からあまりにもかけ離れているような印象を受けた。もしも彼が「今後数年間にパンデミックはこのようになると思われ、その影響により良く対処するためテクノロジーの世界はこんなアクションをすることになる」という話をしてくれたならば、どんなにか安心できただろうにとも思う。

ハイテク経済は順調ですよ

自宅で過ごす時間は長くなったかもしれないが、消費できるお金を持っている人たちは多く、私たちはそのお金をテクノロジーに注ぎ込んでいる。コンシューマ向けテクノロジー製品の売上は、2022 年には 5 千億ドルを超えるだろうと見込まれる。

US Consumer Tech Industry Forecast

Koenig のプレゼンテーションでは語られなかったけれども図表から明らかに見て取れるのは、ここ 5 年間のハードウェア製品の売上の伸びがあまり大きくなかったことだ。本当に伸びたのはソフトウェアとサービスの分野だ。あるいは、消費者向けの用語で言えば、新しいテレビを買うのか、それとも新しいストリーミングサービスを購読するのか、という選択だ。パンデミックによって生活習慣が変わった結果、どちらかの支出が増えただろうか? Koenig は後の方のスライドでこのことに触れて、ストリーミングサービスのトップ4がそれぞれ 2 千万人から 2 億人以上の購読者数を持つに至ったと指摘した。

Netflix 214, Prime 175, Disney 118, Apple TV+ 20

これらの数字が必ずしも直接比較可能なものとは言えないことに注意したい。Amazon の Prime Video が 1 億 7,500 万人の購読者を持つというのは、Amazon Prime 配送サービスの契約者がその数だけいるということを反映しているに過ぎない。これら2つのサービスはバンドルされており、別々に購入することはできないからだ。実際に Prime を視聴している人数がここに書かれた購読者数よりはるかに少ないことはほぼ間違いない。同じように、Apple TV+ の購読者数は Apple デバイスを購入して無料の 90 日間試用をオンにした人数も含んでいるし、Apple One サービスバンドルを購入した人数も含んでいる。本当の購読者数と視聴者数を知っているのも、Ted Lasso の新しいエピソードが出た際に実際に何人の人がそれを視聴したかを知っているのも、Apple のみだ。それに比べて Netflix は、2 億 1,400 万人の購読者を誇る巨大な力であって、Netflix という名前がストリーミングサービス視聴の代名詞として使われるほどであり、Disney+ は運用を始めてからたった 2 年で番組のバックカタログの規模もずっと小さいにもかかわらず、そのバックカタログの魅力度は非常に高いだろう。

Koenig はコンシューマがパンデミックへの反応として新しいテクノロジーで「自宅をレベルアップしている」と説明したが、私には次のスライドに示されたようなバラ色の状況がハードウェアの売上に起こっているとは思えない。

Consumers Level-Up Their Tech

最も大きく伸びたのは 4K テレビだが、私の観点からは人々が自分のテレビをもっと高い解像度にアップグレードしようと思ったというよりもテレビの買い替え時期になってたまたま意図した価格帯に 4K テレビが売られていたということの方が多いのではないかと思う。(とりわけ、外食したり映画館へ行ったりすることにお金を使わなくなって人々が思う価格帯が広がったことを考えればそれが言える。) つまり、コンシューマがエレクトロニクスに以前よりハイテクの選択肢を求めるようになったのか、それとも今やそのような製品が標準となって、いやむしろそれ以外の選択肢がなくなって、必然的にそのような選び方をせざるを得なくなったのかで、状況の見え方が大きく異なるということだ。ワイヤレスヘッドフォンを別に欲しい訳ではなくても、最近の iPhone を買えばヘッドフォンの選択肢はそれしかないのだから。

同じように、ヨーロッパ人の 40% がこれから一年以内にスマートフォンを買うつもりで、27% が新しいデスクトップコンピュータを買うつもりだとなれば胸踊ることに聞こえるかもしれないが、仮に新規の顧客が全然おらず既存の顧客が 2.5 年から 4 年の購入サイクルを迎えているのだとしても同等の数字が出るだろう。

EU tech purchase plans in 2022

しかしながら、テクノロジー業界について CTA が示した数字には、2つだけ真の意味で明るい材料がある。1つ目は、何が“高級”な高価格帯ブランドで何が“通常”の中価格帯ブランドかを CTA の基準に従って切り分ければ、高級ブランドの売上の方が全世界的にはるかにしっかりしていたという点だ。Koenig はその理由としてコンシューマがより高品質の体験を望んでいるからだと述べた。Apple 顧客が聴衆であるここ TidBITS では悪くない議論だろう。ただ、私には他の要因も多くあるように思える。高価な製品が必ずしもより良い製品であるとは限らないという私の冷めた見方に同感な方ならば賛成して頂けることだろう。

簡単に言い直せば、パンデミック下の経済には多くの勝者と多くの敗者があったということだ。自由に使えるお金があった人たちは今や懐にもっと余裕があるし、そうでない人たちは今や日々の生活にも困っている。思うに、世界中で、そもそも テクノロジーにお金を出せる人ならば、評判が高いというだけの理由で高級ブランドにお金を使える余裕があるだろうし、価格のみで競争しているテクノロジーに予算を振り向けようとは思わず、従ってその方面の売上が痩せ細るのは必然なのだろう。それは日用品のテクノロジーを販売する会社にとっては良くないことだろうが、革新する者、最先端の研究開発製品、デザイン界のインフルエンサーたちにとっては非常に良いことだ。彼らの製品こそが法外な値札を付けて市場に出るのだから。そういったリスクの高い部門が高い支持を得るのはテクノロジーにとって健全なことであり、それによって今年の最先端が 2027 年の主流となるのだ。

Global spending growth of premium brands

2つ目の明るい材料は、新しいサービスや新しいソフトウェアを選ぶ人たちはその分野を離れないという点だ。皆さんもきっといくつかのストリーミングサービスを試したことがあって、どの番組を観たいかによってそのうちいくつかを見捨ててきたことだろう。それでも、ストリーミングサービスに料金を支払うことを完全には止めなかっただろう。そのことは、フィットネスのテクノロジーや食品配達サービスについても言える。そのいずれもパンデミックの期間に大幅な伸びを見せたが、その勢いが消え去ることはないだろう。

他の分野でも同じことが言える。今や私は自分が使う Mac アプリのうちのどれが Setapp を通じてライセンスを受けたものであるかなど気にもしなくなっているし (2017 年 1 月 25 日の記事“Setapp、一つの月額料金で数多くの Mac アプリを提供”参照)、その購読が 1 台の Mac で使うことしか認めていないので MacBook Pro から新型 M1 ベース MacBook Air へ乗り換えた際にやむなく短期間そのことを意識したのみであった。この種の不可視性が起これば、つまり、サービスの購読料金が埋没費用と化しサービス自体が本質的に特定のハードウェアに統合されてしまえば、それらの会社にとってはその後も収入が続くことが保証される。

Consumers stick with new services

サプライチェーン以外で失うものは何もない

世界最良のテクノロジーであっても、お金を出せば入手できるのでなければ何の意味もない。それはただ単に半導体不足で新しいトラックが手に入らないということだけではなくて、私が今回ラスベガスへの旅行を断念した決断もそうだったように、半導体を製品に組み立てる人員が足りない (あるいは飛行機を飛ばす人員が足りない) ということでもあるのだ。

Useless trucks sitting at a Kentucky speedway due to the chip shortage

それは、現代社会を駆動する互いに織り合わされた商業網における驚くべき脆弱さだ。パンデミックは、ただ単に新しい製品の生産を阻害したのみならず、製品を必要とされる場所へ届けられる能力をも阻害した。2021 年 3 月に巨大な一隻の船が非常に良くない旋回をした際には、多くの人たちが初めて全世界的な海運業界の実情に目を向けることになったのだが、そこにある本当の事実は、必要とされる場所へ必要とされる その時に 品物を届けられる能力に、私たちの経済の恐ろしいほどに大きな部分が依存し切っていることだ。港や船で働く人員が病気のために働けなくなれば、サプライチェーンの中で上下双方向にその影響が及ぶ。当然ながら、さまざまな工場の中でも同じ問題は起こり得る。半導体の場合は、2020 年末の時点で商業規模の注文が届くまでに 12 週間かかっていたものが、その一年後には 22 週間かかるようになっている。

他方、皆さんがお店で支払う価格は、今や多くの場合、過去には無視されがちであった輸送コストに基づくようになった。製品を詰め込んだ巨大な金属製の箱を大洋を渡って運送するコストがみるみる2倍、3倍に跳ね上がって世界規模のインフレを引き起こしつつあり、そうしたコストが占める役割が今日ますます大きくなっている。

Skyrocketed costs of shipping containers

Koenig は、海運コストの問題はまだ当分解消するとは思えないけれども、他の問題は企業レベルで新しいテクノロジーを追加することにより解決できる見込みがあると述べた。しかし、それに続いて彼は何とも不吉な口調で、運転手の要らない自動運転のトラックや、人間の代わりにロボットが働く工場について語った。そういうアイデアはそれ自体に問題がある訳ではない。実際、長期的に見れば、そういうことはいずれ間違いなく起こるだろう。

でも、それは現在ある問題の手早い解決方法として見るべきものだろうか? 現在米国国内だけで 350 万人のトラック運転手がいて、他の多くの産業を支えている。(例えば道路沿いのモーテルや、レストラン、ハイウェイ近くの小さな町の経済を想像してみよう。) 実際、(私がここ十年間の CES やその他の場所で見聞きしたことによれば) テクノロジー的にはあと数年で自動運転の自動車に切り替えることは可能となるかもしれないし、人間の手による運転を趣味のみのものに限定して都市の中や州間の幹線道路では禁止するようにすれば、多大な経済効果があることはおそらく確かだろう。(それがとんでもないことだと思う人は、自動車が置き換えたその前のテクノロジーには 6000 年にわたる歴史があったことを思い起こそう。) それでも、人間を文字通り運転席から排除しようという政治的・社会的意思を私たちが持つに至るまでにはまだ少なくとも十年か二十年はかかるだろう。

もっと確実な解決法もあって、こちらも現に追い求められつつある。それは、製造能力を向上させることで出荷による混乱を将来のサプライチェーン計画へと織り込むことだ。半導体不足は当面解決されることはないだろうが、3大チップメーカーである Intel、Samsung、TSMC (Apple の M1 シリーズのチップを作っているメーカー) は3社合わせて 4 千億ドルを新工場に投資すると発表しており、2022 年のうちに製造能力が 16% 向上するだろうとしている。さらに良いのは、それらの工場のいくつかが (75% の工場が東アジアに集まっている現状とは違って) 全世界的に散らばることだ。現状ではたった一つの大災害が起こるだけで多数の工場が同時に消えてしまいかねない。それは過去にも実際に起こっている。2011 年には日本で大地震と津波が起こり、同じその年にタイで大洪水が起こって、前者は RAM チップの供給に、後者はハードドライブの供給に大きな影響を及ぼした。

New chip fabs being built by Intel, Samsung, and TSMC

出会った“バース”は気に入らなかった

Koenig のプレゼンテーションは拡張現実 (AR) と仮想現実 (VR) の話題に移った。これは毎年繰り返されている CES の話題であり、去年までは両方のテクノロジーを一括りにした XR という用語も使われていた。仮想現実 というのはその言葉の指す通り、ゴーグルや頭部に取り付けるヘッドセットを使い、そこに完全に異なる現実、例えばビデオゲームや、遠い土地にある店舗の中を歩いて回る擬似体験などを呈示するものだ。拡張現実 はそれとは違う。あなたの物理的環境から情報を取り込んで、その上に新しい情報を重ね合わせつつも、あなたの周囲はそのままに見せるのだ。拡張現実の良い実例としては、街を歩きながら道案内の矢印を空中に浮かんだように表示する Google Live Street View や、かつては誰もが持っていて今もなお人気を保っているゲーム Pokémon Go で (下の図にはいるが) 実際の庭にいるはずが ない 生き物がスマートフォンの画面に登場するような使い方がある。

Pokemon Go

拡張現実 (AR) を支持する人たちは (私もその一人だが)、このテクノロジーをどこでも使えるようにするハードウェアとして邪魔にならないヘッドギアが普及して、周囲の見え方に新たな画像を補完するようにしつつ、スタートレックの Enterprise から光線ビームで転送されたばかりの人物のようには見えたりしないことを期待する。そのようなデバイスはまだ AR 用にも VR 用にも登場していない。例えば Oculus Quest 2 ヘッドセットのような VR デバイスは、従来より小型の機器を使ってできるものとしては見事な出来栄えではあるものの、邪魔にならないとは到底言えない。それでも、CES では例年そうだが、出展者一覧をさっと見渡しただけでも軽量のメガネ型 XR の未来を約束する小さな会社がたくさんある。大手のメーカーがテクノロジーをライセンス供与して数年間かけた開発を許すようになれば、きっと実現されるだろう。こうして現時点ではまだハードウェアが欠落しているにもかかわらず、Koenig は XR の「基本的構成要素」は既にあると述べ、リアルタイムで計算を処理できる CPU を備えたモバイルデバイスや、視覚と聴覚以外のフィードバックを返せる触覚技術、それに 5G (おそらくは将来ポケットの中にあるデバイス以外のものから XR コンテンツを送信できるようにするためだろう) を挙げた。

Oculus Quest 2
ファッションに関するヒント: Oculus Quest 2 を使うなら、オーバーサイズのセーターは必ずウエストバンドの中にたくし込もう。

気掛かりなのは、Koenig が今回は一度も XR という用語を使わなかったことだ。その代わりに、彼はこれら一連のテクノロジーをまとめて“メタバース”と呼んだ。これは、おそらくほとんどの人たちにとっては Facebook が社名を Meta に変更したというニュースに伴って初めて聞いた用語だ。どうやら CTA はこのメタバースという用語をあらゆる拡張現実体験で使えるものにしたいと望むもう一つの団体らしい。Koenig は何の説明も用語定義もすることなしにいきなりその単語を使ったからだ。まるで、それが既に聴衆に受け入れられた用語であるかのように。(The Verge がメタバースに関するとびきり楽しくて皮肉に満ちた Q&A ページを出して、この概念がいかに漠然としたままのものかを示している。)

私がこれを厄介なことだと感じるのには2つの理由がある。1つ目は、用語が不正確だからだ。接頭語 "meta" は、その後に続くものが何か他のものであることを意味している。例えば Mac 上のファイルに対するメタデータは、そのファイルの最新の変更日時や、メガバイト単位でのファイルサイズなどを含んでいる。これは、そのデータについてのデータだ。でも、仮想現実はその場の現実についてのものではなくて、一時的にその現実を置き換えるものだ。拡張現実の方はメタデータであり得る。例えば、あなたが居る場所の温度をヘッドアップ表示したりするからだ。でもそれはむしろ、周囲から直接得られたのではない補助的な情報を重ね合わせるオーバーレイデータと言うべきだろう。目の前にあるレストランの名前を表示すればそれはメタデータと考えられるかもしれないが、庭で動き回るポケモンはメタデータではない。

メタデータとオーバーレイデータを区別しようと言うとただ学者ぶっているように聞こえるかもしれないが、メタデータが本質的に補助的なものであるのに対して、オーバーレイデータが本質的に... 本質的であることを考えれば、その違いが奥深いものであると分かる。社会と経済がオーバーレイデータを必要とする拡張現実の体験へと傾斜してゆくにつれて、お金に余裕のない人たちや、アクセスに必要なテクノロジーを使いたくない人たちは取り残されてゆく。皆さんはレストランに入って、テーブルに QR コードが表示され注文がオンラインでしかできないと分かった、というような経験がないだろうか。私の住む地域では、パンデミックへの対応として、料金をチャージしたスマートフォンがなければ外食するのが難しい状況になっているし、過去には純粋に社会的な過程であったところにテクノロジー的な層が加わるようになっている。これこそ、拡張現実が一般的になって高価な機器が必要とされるようになればどんなことが起こり得るかの現実の実例だ。Koenig はメタバースの体験が物理的な現実と“切っても切れない”状態で結び付くと述べた。それは正しいと思うけれども、そのことは双方向に働くだろうと私は思う。もしも周囲にあるはずの拡張現実を見逃せば、社会の中の重要な側面を見逃すことになってしまう。

“メタバース”とは、私たちが既に用語を持っていた概念に商標変更を施したものだ。最近使われていた用語は XR だが、もっと前には 1982 年に William Gibson の小説 Neuromancer で使われた“サイバースペース”という用語があった。“メタバース”自体は古い言葉で、1992 年に Neal Stephenson が小説 Snow Crash の中で使ったが、サイバースペースほど一般に使われることはかつてなかった。通常、企業が新しい用語を宣伝するのは、既に cromulent な (一般に容認された) 用語が存在していて、その企業がそれを所有したがっている場合だ。サイバースペースや XR は、コミュニティーや公共の空間がその中に存在することを許す仮想の場所だ。これに対してメタバースは知的財産であってその中のコミュニティーは誰かに、例えば Facebook に所有されている。9,250 億ドル相当のこの会社が社名変更までしてあと何年も経たなければ実現されないテクノロジー空間の名前と結び付けたがるのならば、それは軽々しく実行に移されたことであるはずがない。そこには、新しい会社 Meta, Inc. が将来メタバースを所有して、現在 Facebook が 20 万人もの住民を持つ公共空間を所有しているのと同じ状態を達成することを見越した投資だという考え方があるはずだ。

夢想家のように聞こえたならばお許し願いたいが、私の観点からは、商業的存在の手でコントロールされない公共の空間があるということが、社会にとって決定的に重要だ。インターネットが今日の状態になり得たのは誰もそれを所有していないからであって、だからこそ何千もの会社とオープンソースのプログラマーたちがそこに相互利用可能なサイバースペースを構築し、誰でも他の人たちがそれを拡張したりそこに居住したりできるようになったのだ。私にとって、互いに相互利用可能でないメタバースが複数個林立してそれぞれの知的財産をインスタンス化するような未来は、暗黒の世界だ。パリの Facebook を訪れる体験がパリの Google やパリの Apple とは根本的に異なるものだったとしたらどうだろうか? でもそうなることは十分にあり得る。

たった一つの単語から深読みし過ぎだとお思いならば、Koenig がただ単にメタバースを売り込んでいただけではないことも知っていて頂きたい。彼は「暗号通貨こそメタの世界のお金だ」とさえ言ってのけたのだ。この途方もない主張を裏付けるデータは何も述べられなかった。たとえあなたが Bitcoin なり他に何千とあるその競合物なりに投資をしていたとしても、あなたがそれを実際の商取引のために使ったことはまずないだろう。今この記事を書いている時点で、Bitcoin の価値は今日で 3.2%、先週で 11.8% 下落し、ここ 6 か月の通算では 23.1% 上昇した。これでは、恐るべき経済の極めて値動きの激しい通貨だと言わざるを得ない。たぶんオランダのチューリップ・バブルみたいなもので、ちょっとだけ訪れるのは楽しいかもしれないが、私はそこに住もうとは思わない。

あともう一つ Koenig がメタバースについて語ったことがあって、これには私も同意できる。「これについては今後 20 年間ずっと議論し続けることになるだろう。」その通りだ。私たちがこれを丸ごとそのまま受け入れてしまったりせずに、十分に時間をかけてこのテクノロジーがどのように社会を変化させるかについて議論し、何らかの合意を得ることができるようにと願いたい。

今年の未来は去年の未来と同じ

それ以外のことについては、Koenig のプレゼンテーションは例年 Tech Trends の聴衆に語られてもはやお馴染みになった数多くの事柄を述べていた。つまり、昨年にはまだ未来が実現されておらず、今年もまだ実現されていないということだ。5G のコミュニケーションは次に来る十年間のための“結合組織”であって、そのことは昨年語られたのと全く同様だ。2022 年の潜在的に新しいニュースは何かと言えば、3GPP 作業部会が 5G のための新しい一連の要件を近々発表する予定で、この業界に新たな標準を追加することになる。それが皆さんに直接の影響を与える可能性は低いけれども、企業がビジネスをするやり方には、企業間においても企業内においても 5G が革命的な変化をもたらすだろう、という Koenig の断言に根拠を与えるものとなるかもしれない。

人工知能もまた、あまりにも CES の定番となって、Koenig でさえ“例年の”と述べたくらいだ。それでも、コンシューマが AI に何をさせたいと思っているかについての CTA の調査に私は興味を惹かれた。私に言わせれば、ここにデータで示された人々は AI テクノロジーのリスクと利益について全く知識がないのではなかろうか。AI の倫理を扱った Yale 大学のフォーラムに私は何度も出席したが、そこで専門家たちが議論した内容は AI が重要な決定過程において支援する役割のみを持つべきであって、最終的な決定者は人間でなければならないということであった。それなのにこのデータに示された人々の意見を見れば、投資やテロ対策において AI が 助言 でなく 決断 をすることを進んで許そうとしているように見える。(ただ、ショッピングという非常に重要な分野については助言か決断かという区別を重視する人が多いようだ。)

Consumers open to AI-powered tasks

リスク評価の欠落のもう一つの実例の可能性と思われるのが、John Deere 社が新たに発表して注目された See and Spray Select AI テクノロジーだ。農場の農地で雑草のみを見つけてそれをターゲットに農薬散布をすることで、使用する農薬の量を 75% 以上節約できるというものだ。一見すると純然たる成功のように思えるけれども、私はその二次的影響がどの程度研究されたのかに興味を覚える。例えば、日々頼りにして使っているトラクターの修理さえできない農場経営者たちにどんな影響があるかという問題がある。テロ対策のために AI を使って監視と逮捕を実行している国では、知らずにその価値に反する行動をとってしまうこともあり得るだろう。また、これまで買い待ちの姿勢で株の長期保有を続けてきた投資家は、AI を取り入れた途端にデイトレーディングに突入させられて不快な驚きを感じるかもしれない。

それ以外のニュースについては、今年の未来は去年の未来と同じだ。だから、宇宙テクノロジー、運輸業、持続可能テクノロジー、デジタル健康技術などの分野でどんな変化が起こりそうかと気になっている人は、どうぞ私が Tech Trends イベントを取材した過去の記事をご覧頂きたい。今年のイベントにはあまりお伝えすべき詳細情報がなかったからだ。一つだけ興味深い例外があって、人々が自らの心の健康を改善するためにテクノロジーを安心して活用できる将来の方向の可能性について記録した資料があった。心の病にかかっていて、または過去にかかったことがあって調査に回答した人たちの過半数が、その種の手法を喜んで採用してみたいと答えたのだ。メンタルヘルスの専門家が不足しているこの国において、さらにはパンデミックによってストレスを抱えたり絶望したりということが多く起こるようになった今、テクノロジーを活用して軽症の症例が悪化するのを予防できるようになれば、それは十分に前進と言えるだろう。

(日本語)CES 2017: 注目すべき技術トレンド | CES 2018: Consumer Technology Association が語るテクノロジー潮流 | CES 2019 のトレンド: ビッグデータ、5G、AI、AR/VR、自律自動車、大型テレビ | CES 2020: 注目すべきテクノロジーの動向 | CES 2021:注目すべき技術動向

The journey to mental wellness

では、来年またお目にかかろう。その際には、CTA が次の潮流として何を思い描いていて、それをいかに宣伝しようとしているか、また考えてみたい。その時までにはパンデミックが十分に収まって、より穏やかな気持ちで、より安全に、会場を実際に訪れて参加できることを願っている。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Mactracker 7.11.1

Mactracker 7.11.1

ちょっとした休止期間を経て、Ian Page が Mactracker 7.11 をリリースして最近のメジャーな Apple ハードウェアのアップデートとリリースに関する詳細情報を盛り込んだ。新型 M1 ベース MacBook Pro、iPhone 13、Apple Watch Series 7 も記載されている。また、今回のアップデートでは macOS 12 Monterey、iOS 15 と iPadOS 15、watchOS 8、tvOS 15 も記載された。具体的に言えば、今回のリリースで MacBook、MacBook Air、MacBook Pro 各モデルの電源ポートの情報を追加し、Apple のビンテージおよびオブソリートモデルに対するサポート状況を最新の情報に更新し、Monterey 上での動作への対応を追加した。そのリリースの後間もなく Mactracker はバージョン 7.11.1 にアップデートされて一部のモデルで History が表示されなかった問題を修正した。(Mactracker ウェブサイトからも Mac App Storeからも無料、171 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Mactracker 7.11.1 の使用体験を話し合おう

HandBrake 1.5.1

HandBrake 1.5.1

HandBrake Team がオープンソースのビデオ変換プログラム HandBrake のバージョン 1.5 をリリースして改善やバグ修正を加えた。今回から macOS 10.13 High Sierra またはそれ以降を要するようになった HandBrake 1.5 は、高効率コアでエンコーディングのプロセスが止まってしまう可能性があった問題を解消し、自動命名が正しく適用されないバグを修正し、キュー情報タブを更新してエンコーディングの平均速度と元のファイルサイズに対するパーセント数を含めるようにし、またフレームマルチパス、ディスプレイおよびコンテンツの光メタデータのマスター、クロマ位置情報など高度な機能を可能にする VideoToolbox API へのネイティブ対応を追加している。このリリースの後間もなくバージョン 1.5.1 が出て、Linux 版と Windows 版での問題を修正した。(無料、35.9 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

HandBrake 1.5.1 の使用体験を話し合おう

Default Folder X 5.6.3

Default Folder X 5.6.3

St. Clair Software が Default Folder X 5.6.3 をリリースして、最近使ったファイルの追跡での問題を解消するとともに、インターフェイス上の問題に対処した。Open/Save ダイアログを拡張するこのユーティリティは今回、Mail や Messages から直接開いた添付ファイルを Recent Files メニューに追加する (ただしフォルダの中の位置は隠される) ようにし、Box Drive によってクラウド同期されたものを Recent Folders や Recent Files に表示するようにし、コントロールボタンがスクリーン下端にある場合はフルサイズの Save As ウィンドウを自動表示しないようにし、ドラッグ&ドロップ操作の最中に Finder のドロワが隠れてしまうことがあったバグを修正し、Default Folder X による最近使ったタグのコレクションが信頼性をもって動作するようにし、Utility および Favorites メニューでメニュー項目が揃わなかった問題を解消した。(新規購入 $34.95、TidBITS 会員には新規購入 $10、アップグレード $5 の値引、Setapp からも入手可、16.5 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

Default Folder X 5.6.3 の使用体験を話し合おう

Fantastical 3.5.2 and Cardhop 2.0.8

Fantastical 3.5.2 と Cardhop 2.0.8

Flexibits が Fantastical 3.5.2Cardhop 2.0.8 をリリースして、このカレンダーアプリと連絡先管理アプリに改善とバグ修正を施した。Fantastical は Workplace Rooms、3CX、および MiTeam Meetings 会議への対応を導入し、他のユーザーに代わって Zoom ミーティングをスケジュールする機能への対応を追加し、イベントが選択されていない場合でもリストの中で選択された日を表示するようにし、Todoist タスクのノートへの対応を追加し、Around 会議の探知を改良し、重複した項目のある提案を作成すると警告を表示するようにし、イベントの開始日や終了日を編集すると起こることがあったクラッシュを解消した。Cardhop は macOS 12 Monterey で Bluetooth を使って電話を掛ける際の問題を解消し、Monterey の下でクイックノートが動作しないことがあったバグを修正し、連絡先の詳細を開く際に起こったハングに対処した。これら2つのアプリはバンドルされた Flexibits Premium 購読を通じてのみ利用できる。(Flexibits からも Mac App Store からも購読年額 $39.96、無料アップデート、54.7/32.6 MB、Fantastical リリースノート/Cardhop リリースノート、macOS 10.13.2+)

Fantastical 3.5.2 と Cardhop 2.0.8 の使用体験を話し合おう

Mimestream 0.32

Mimestream 0.32

Mimestream が会社名と同名のネイティブな macOS 用 Gmail クライアントをバージョン 0.32 にアップデートして、新機能と改良、バグ修正を加えた。今回のリリースではメッセージ作成中に Reply と Reply All を切り替えられるようにし、メッセージ作成ウィンドウの中で From アカウントにプロフィール写真を表示し、終了時にまだ送信中のメッセージがあれば通知し、Format > Lists メニューでリストのスタイルを切り替えられるようにし、変更した署名が Dark モードで重複していたバグを修正し、Excel や生のソースからコピーした複数個のアドレスをペーストする際に起こったクラッシュを解消し、Reply と Reply All を切り替える際に BCC の受取人が省かれてしまった問題に対処し、新規メッセージで署名の画像が壊れて見えたバグを修正した。(無料、8.5 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

Mimestream 0.32 の使用体験を話し合おう

SoundSource 5.3.9

SoundSource 5.3.9

Rogue Amoeba が SoundSource 5.3.9 をリリースして、このオーディオコントロール・ユーティリティに歓迎すべき変更を加えた。今回のリリースでは、メニューバーアイコンをクリックするとピン留めされた SoundSource ウィンドウをメニューバーに呼び戻すのでなく表示するようにし、音量スライダーを改良してノブを動かすとミュートを解除するようにし、Firefox のオーディオが SoundSource の中で2度表示された問題を修正し、macOS Shortcuts が SoundSource 用に機能しない Shortcuts も表示していた問題を修正した。(新規購入 $39、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、25.3 MB、リリースノート、macOS 10.14+)

SoundSource 5.3.9 の使用体験を話し合おう

ScreenFlow 10.0.4

ScreenFlow 10.0.4

Telestream が ScreenFlow 10.0.4 を出した。このスクリーンキャスト録画およびビデオ編集アプリに改良とバグ修正を施した、メンテナンス・アップデートだ。今回のアップデートではファイル検索画面に Cancel ボタンを追加し、Bump、Twirl、Pinch、Vortex Distortion の各フィルタを復活させ、新バージョンにアップグレードする際に Style Presets および Key Bindings をそのまま持ち込む機能を追加し、サムネイルが空中にある状態でウィンドウを閉じてもアプリがクラッシュしないようにし、1440p (2560×1440) の書類プリセットを追加するとともに 4K プリセットを 4K UHD と改名し、書類を開いた後の Timeline 継続時間の計算に誤りを生じていたバグを修正し、Stock Media Library の PNG MOV ファイルへの対応を追加した。(新規購入 $149、アップグレード価格あり、84.4 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

ScreenFlow 10.0.4 の使用体験を話し合おう

Mellel 5.0.9

Mellel 5.0.9

Mellel が 会社名と同名の Mac 用ワードプロセッサのバージョン 5.0.9 を出した。バグ修正に特化したメンテナンス・リリースで、今回のアップデートではメモリリークとコンパイル警告を解消し、表のスタイルエディタで文字属性ポップオーバーを開くと表の属性にオーバーライドが加わったバグを修正し、最後に使ったテキスト言語設定が書類から書類へコピーされていた問題に対処し、macOS 12 Monterey でアプリ内通知ウィンドウを閉じた際のクラッシュを解消し、Monterey でのいくつかのインターフェイス項目の表示を修正した。(Mellel からも Mac App Store, からも新規購入 $49、アップグレード $29、無料アップデート、91.6 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

Mellel 5.0.9 の使用体験を話し合おう

Bookends 14.0.4

Bookends 14.0.4

Sonny Software が Bookends 14.0.4 をリリースして、全く新しい参照項目編集枠を装備した。この編集枠のフィールドは縦方向にスクロールするリストとして表示され、並び順は環境設定でも、またフィールドのラベルを Command-ドラッグして別のフィールドのラベルの上にドロップすることでも変更できる。この参照文献管理ツールはまた、PDF 注釈を書き出す機能を追加し、ウェブブラウザの PMID または PMCID フィールドから記事を開くコンテクストメニュー項目を追加し、PDF を添付する際に JSOR からメタデータを読み込む機能を改良し、iCloud をデフォルトフォルダに設定している場合にも誤って /Bookends/Attachments が作成された問題を解消し、添付ファイルをトップレベルのフォルダへ移すと起こったエラーを解消した。(新規購入 $59.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、99 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Bookends 14.0.4 の使用体験を話し合おう

Microsoft Office for Mac 16.57

Microsoft Office for Mac 16.57

Microsoft が Office for Mac のバージョン 16.57 をリリースして、M1 ベース Mac へのフル対応を Excel に追加した。Mac 用 Excel の Power Query が Apple silicon プロセッサにネイティブに対応し、Rosetta エミュレータを無効化して Excel を使えるようになった。今回のアップデートで Word、PowerPoint、Excel では Microsoft Information Protection ポリシーで保護された機密書類のスクリーンキャプチャと画面共有が防止されるようになった。さらに、Excel は Power Query を使用してローカル Excel ワークブック、テキスト、CSV ファイルから読み込めるようになり、Word は他の人たちとの共同作業中に切断された場合に書類を最新の変更で自動的に更新するようになった。(一回限りの購入は $149.99、年払い講読オプションは $99.99/$69.99、Microsoft AutoUpdate 経由で無料アップデート、リリースノート、macOS 10.14+)

Microsoft Office for Mac 16.57 の使用体験を話し合おう