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#1693: Vision Pro レビュー、インターネット上のセキュアな共有、Apple Q1 2024 業績報告、あなたにとって Vision Pro の価値は?

Vision Pro が発売された! 初期に出たレビュー記事の中からいくつか選んで紹介しつつ、Adam Engst が考察と印象を述べる。また、皆さんなら Vision Pro にいくらまで出せるかとお尋ねする。私たちの最新のスポンサー、Vision Pro 用の没入型 Art Authority Museum を出したばかりの Art Authority を歓迎したい。Michael Cohen が寄稿記事で Apple の Q1 2024 業績報告を紹介するが、Apple は 2023 年の売り上げ低迷期を過ぎて増収に転じつつある。最後に、実用的な話題に目を向けて、Adam がインターネット上でセキュアに情報を共有するための8つの方法を検討する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは BBEdit 15.0.1 と Pixelmator Pro 3.5.6 だ。

Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Art Authority、TidBITS のスポンサーに

最新の長期スポンサーである Alan Oppenheimer が共同設立した Art Authorityを歓迎したい。彼は、AppleTalk の創設者の一人であり、Internet サービスプロバイダーを運営し、そして Mac ファイアウォールを開発することから世界の美術を全ての人にアクセスすることを可能とすることを使命とする iPhone、iPad、Apple TV アプリの作成へと進んだ。Art Authority はまた、美術品のプリントや美術館売店販売品の様な傑作の複製を販売するいくつかの企業も買収した。

我々は長年にわたって Art Authority のアプリについて何度も言及してきた。そして同社の最新の発表は仮想博物館、Art Authority Museum である。

Art Authority Museum は、何百人もの史上最も重要な芸術家によって作成された何千もの歴史上最も重要な芸術作品のコレクションを持つ、画期的な新しい没入型美術館です。これらの作品を物理的な博物館 (群衆なし) でと同じように体験するだけでなく、私たち全員が想像し始めることしか出来ない方法でその経験をパーソナライズすることがもうすぐ出来るようになります。

何故思わせぶりの広告なのか? Art Authority Museum は無料の Vision Pro アプリであり、現時点では、ロビーのオープン前ツアーしか提供していない。そこでは、ユーザーは世界で最も歴史的に重要な芸術作品の何十かを体験出来る。Art Authority は、その完全なコレクション - 数万の芸術作品 - が利用可能になる今年後半にグランドオープンを計画している。ユーザーは独自のギャラリーを作成することが出来、そして Art Authority は他にも色々な機能を開発中である。その中には、物理的な美術館では警備員に迷惑をかける傾向があり難しいことである対象物に好きなだけ近づくことが出来るとか、或いは、対象物に没入している間に知らせたり楽しませたりしてくれるカスタムオーディオオーバーレイ等がある。

(皮肉なことに、Alan は、Vision Pro のハードウェアが今週後半まで到着しないため、数日間自分の博物館を訪れることが出来ないと言っていた。Apple は、現在Vision Pro で利用可能なアプリが 600 以上あると言っており、開発者が単なるシミュレータではなく、実際の Vision Pro でアプリがどのように見え、どのように機能するかを見るようになるにつれて、迅速なアップデートが沢山出てくると思われる。)

もう既に Vision Pro を購入しているのであれば、Art Authority Museum アプリを試してみることをお勧めする。そして、標準のメガネに組み込まれた将来のVision Pro を待っているのであれば、Art Authority の他のアプリをチェックしてみて欲しい:iPad 用の Art AuthorityiPhone 用の Art Authority、そしてApple TV 用の Art Channel がある。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Vision Pro の初期レビューに示された印象と考察

Apple の新しい Vision Pro ヘッドセットがついに登場した。(2024 年 1 月 8 日の記事“Apple Vision Pro が 2024 年 2 月 2 日 に登場”参照。) いつもと同じく Apple は厳選したレビュー筆者たちにリリース前のユニットを配った。そうして出されたレビュー記事やレビュービデオをすべて読んだり視聴したりしたなら何時間もかかるだろうが、Vision Pro に特に思い入れの強い人でない限りそれは時間の無駄というものだろう。その上、レビュー筆者たちの意見はほとんどの点で一致しているので、どうやら異なる視点はあまりないように思える。もっともそれは予想されたこととも言える。この Vision Pro はあまりにも新しくあまりにも独特なので、ほとんどの人はまだ基本を説明しようとするだけの段階にあるからだ。

レビュー記事いろいろ

まず初めに Wall Street Journal の Joanna Stern のビデオをぜひ観ておこう。長さは 9 分以下だが、その中で彼女は Vision Pro を (多少不自然かもしれないが) 現実の環境の中で試しており、彼女の語り口はいつも通りに示唆に富んでいて楽しませてくれる。

Joanna Stern のビデオを見終えて Vision Pro が大体どんなものか、ユーザーの目には何が見えるかの感じを掴んだなら、次は Daring Fireball の John Gruber が書き上げた長文、単語数 7250 のレビュー記事を読んで 、背景を目の当たりにすべきだ。Gruber の説明と分析は注意深くよく考え抜かれている。この記事にはたった一枚の静止画像しか添えられていないが、文章が素晴らしくてよく伝わる。

それを読み終えたなら、あとはいくつかの選択肢がある。もっと詳しく読みたい人には、Nilay Patel が The Verge に単語数 9000 のレビュー記事を書いており、数多くの静止画像も添えている。彼の論調は他のレビュー筆者たちに比べて否定的な面が強く、ヘッドセットを装着していると本質的に孤立感に襲われるという点を最も強調している。また、彼は髪が乱れるのが嫌だとも言う。The Verge のビデオ映像はよく出来ているが、基本的に Patel 本人が記事のテキストを朗読しているものに過ぎない。(ただし Vision Pro が彼の髪に与えた影響がよく分かる。)

MKBHD の YouTuber である Marques Brownlee が Vision Pro について3つのビデオを作った。まずは 19 分間の「箱から取り出す」ビデオで、私はその初めの方をサッと観ただけだが、彼は梱包されている部品を一つ一つ取り出して説明しており、ここは有用で参考になると思った。次に彼はなかなかよく出来た 38 分間のビデオで Vision Pro の使い方を Joanna Stern より詳しく説明している。でもベストだったのは最後のビデオで、ここで彼は Vision Pro のハードウェアとソフトウェアがいかにうまく働くかについて意見を述べている。

それを観終えた私は正直言って少々くたびれて、Vision Pro についてもっと知ることにうんざりした気持ちになってしまったが、さらにもっと知りたいという人には Tom's Guide の Mark Spoonauer による単語数 5000 のレビュー記事や、CNET の Scott Stein による単語数 7000 のレビュー記事がある。もっとビデオを観たい、もっと熱狂的な感想の声を聴きたいという人には iJustine の 32 分間のビデオが、箱から取り出すところから使い方までカバーしている。使っていると目に見えるものがとても速く動いてカクカクした感じになり実際に見えるものを必ずしも反映していないと彼女が警告している点に注目したい。

最初の印象は

たくさんのレビューを読んだり観たりした私には、Vision Pro についての印象がいくつか残った:

最終的な考えは

Vision Pro について知っておくべき最も重要な点は、これが“その他の私たち”のためのものではないことだ。Vision Pro がいったい誰のためのものかということすらまだ明らかではない。決定的に重要だと言えるアプリはまだ登場していない。Apple は開発者たち、早期導入者たち、最先端のものにお金を注ぎ込むことを厭わないテクノロジーおたくたちに、今は種蒔きをしているところだ。間違いなく Apple は、Meta やその他同じ領域に縄張りを確保しようとする者たちに先んじることを望んでいる。このテクノロジーがこれから進化を遂げて、主流の製品を手頃な価格で届けられるようになるという目標に進めるための体験をすべての人たちに、Apple にも、開発者たちにも、ユーザーたちにも Vision Pro が提供すること、それが Apple の願いなのだ。

あるいはむしろ、それは現状に対する私の分析と言うべきだろうか。でもそれは経験を積んだ多くのテクノロジー業界ウォッチャーたちの分析とも一致している。ただしこれは Apple のマーケティングマシンから聞こえてくる言葉とは一致しない。マーケティングの言葉は Vision Pro がすべての人たちのもの、今ある現実の問題を解決するものと装いつつ語る。初代の Vision Pro が想像の中の未来のために必要な最初の第一歩であると Apple が公言することはできないが、これまで Tim Cook が AR や VR について語ってきたことと照らし合わせて考えれば、何が起こっているかは自ずと明らかだろう。

おそらく第2世代の Vision Pro になれば重量が半減し、第3世代ではバッテリーを内蔵し、第4世代ではパススルー・ビデオを使った VR ヘッドセットの代わりに実際の眼鏡型の製品に生まれ変わるのではなかろうか。(そしてもちろん、どこかの時点で "Vision Air" が登場することだろう。) それは危険なほどSF小説に近いけれども、約束としては魅力的だ。いつの日か Vision Pro があらゆる Apple 製品に取って代わることがあるかもしれない。単なる眼鏡が (代わりにコンタクトレンズを想像するのはSFの範疇だろうが) あらゆる処理、コミュニケーション、録画、仮想ディスプレイを担うことができたならば、いったい誰が iPhone、Mac、Apple Watch、Apple TV といったものを必要とするだろうか? あまりにも遠い未来を見過ぎてしまったかもしれないが、それはそれとして、私としては Apple の構想と、その実装を好ましく思う。他のテクノロジー巨人各社がおそらくあなたに広告を浴びせ、あなたの目の動きを逐一観察し、あなたにもっと品物を売り付けようとする一方で、それとは違う目標を掲げた Apple の構想と、その実装を。

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Michael E. Cohen Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Apple の Q1 2024、iPhone と Services の好調のお陰で増収に戻る

Apple は Q1 2024 の決算を報告し、$33.9 billion (希薄化後一株当り $2.18)の利益と $119.6 billion の売上げを発表した。同社の売上げは前年同期と比較して 2% 増加し、利益は 16% 増加した ("Apple Q1 2023 売上げ、外国為替、コロナ、そしてインフレで減速" 3 February 2023 参照)。Apple の幹部は、今四半期の業績は、昨年の第一四半期の 14 週間と比較して 13 週間の活動に基づいていると指摘した。これは、2023 年の4会計四半期でのわずかな売上げ減少と比べれば良いニュースであり、そして Q1 2024 を売上げと利益の両方で Apple の史上二番目に高い四半期とした。最高は Q1 2022 であった。

(日本語)Apple、Q4 2023 で 1% の減収にも拘わらず史上最高益を報告 | Apple Q3 2023 業績、為替相場の影響で 1% 減収 | Apple の Q2 2023 業績、為替と "マクロ経済条件" 故に微減収 | Apple Q1 2023 売上げ、外国為替、コロナ、そしてインフレで減速

四半期売上げの円グラフでの最大のパイは、再度 Apple の売上げの 58% を占めたiPhone と、史上最高を記録し四半期の売上げの 19% を占めた Services であった;両方合わせると、この二つの部門だけで 77% の寄与となる。残りの部門のうち、Mac は全体の約 7% を維持したが、iPad と Wearables は両方とも下落し、それぞれが昨年よりも 2% 少ないパイとなった ("Apple Q1 2023 売上げ、外国為替、コロナ、そしてインフレで減速" 3 February 2023 参照)。

Apple Q1 2024 category revenue pie chart

iPhone

iPhone は特に好調だった。その業績は 2022 年の過去最高には及ばなかったが、Apple は依然として iPhone の売上げで $69.7 billion を稼ぎ出し、2023 年から6% 増加した。iPhone 15 製品群は進化的には比較的マイナーなアップデートだったが、Apple は顧客満足度が 99% に達したと主張し、iPhone へのアップグレード者の数は過去最高を記録したと言った。

Apple Q1 2024 iPhone revenues over time

Mac

2024 年第一四半期には 24-inch iMac, 14-inch MacBook Pro, そして 16-inch MacBook Pro の M3 搭載バージョンが導入され、Mac の売上げは昨年の第一四半期よりもわずかに - 1% 以下 - 高くなった。(Tim Cook が再度強調したように)今年の第一四半期は昨年の同四半期よりも1週間短かったにもかかわらずである。

Apple Q1 2024 Mac revenues over time

iPad

iPad が今でも $7 billion の売上げをもたらしたことを考えると、iPad が苦戦しているとは言い難い。そうではあるが、それは "比較しにくい" 2023 年の売上げから 25% 減少している。2023 年は、2022 年後半の M2 iPad Pro モデルのリリースと、以前の工場閉鎖による供給中断により抑圧された需要に Apple が追いついたため、異常に高かった。しかし、それはまた 2020 年以来最も低い iPadの売上金額でもあった。Apple は昨年新しい iPad をリリースしなかったため、次の新しいモデルは iPad の売上げを大幅に増加させる可能性が高いように見える。

Apple Q1 2024 iPad revenues over time

Wearables

iPad と同様に、Wearables 部門は、昨年の結果とは "比較しにくい" が、売上げが11% 減少した。今年の分にはリリースされたばかりの Apple Watch Series 9 とApple Watch Ultra 2 モデルの売上も含まれている。今後の四半期では、Appleの新しい Vision Pro が Wearables 部門に含まれることになるが、初期生産量が小さいことを考えると、しばらくの間、売上げに大きく貢献することは出来ない。それにもかかわらず、Apple は企業の顧客がこの機器に対して表明している関心の高さを強調した。一人のアナリストに迫られた時、Cook は Vision Pro の販売軌跡を以前の Apple 製品と比較することを控え、"それぞれの製品にはそれぞれの旅がある" と述べるに留めた。

Apple Q1 2024 Wearables revenues over time

Services

繰り返しになるが、Services 部門は Apple の売上げ図の中の明るいスポットであり、前年比 11% の増加を記録し、Apple の業績集計部門の中で最も高かった。現在、設置ベースで 22 億台の Apple 機器があり、これらの機器にサービスを提供する機会はこの部門が引き続き成長出来る兆しと言える。

Apple Q1 2024 Services revenues over time

地域別業績

Greater China からの売上げは前年比で 13% 減少したが、世界の他の地域はその下落を補うのに役立ち、Cook は Latin America や Middle East 等の新興市場における Apple の業績に喜びを表明した。Americas は、前年の1週間長い四半期と比較しても 2% の売上げ増を絞り出した。更に良いことに、Europe と Asia-Pacific 地域の売上げはそれぞれ史上最高の 10% と 7% の増加を記録し、そしてJapan の売上げは 15% 増加した。

Apple Q1 2024 Region revenues over time

今後

Apple は引き続き高い収益性を保ち成長にも戻っているが、同社は来るべき数ヶ月の間に難しい仕事を抱えている。それは China での販売の減速と、新しい EU アプリ配布要件を満たすための Apple の不承不承の努力の未知の効果である ("EU が壁に囲まれた Apple の庭を開放させる" 29 January 2024 参照)。プラス面では、新しい iPad が今年後半にまず間違いなく登場しその部門を強化するであろうし、Apple の iPhone と Services 部門は引き続き好調に推移する可能性が高い。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

インターネット上で機微情報を共有するためのセキュアな方法8つ

どこかの時点で、私たちのコミュニケーションの大部分はアナログからデジタルへと移った。かつての手紙や電話は電子メール、テキストメッセージ、カレンダーイベント、セルラー通話やインターネット通話やビデオ通話へ移行した。アナログな方法の下では、私たちの秘密は大体において安全であった。電話の通話を盗聴したり、封筒に湯気をあてて開封し中を読んだりする方法は困難であると同時に (政府がする場合以外は) 違法であった。つまり、プライベートなコミュニケーションがほとんど常にプライベートに保たれると期待できた。

けれどもインターネットが登場して、今やコミュニケーションに対する攻撃が世界レベルで可能となった。攻撃のために手紙をこっそり抜き取ったり、電話の基幹回線や交換局に物理的に侵入したりといったことが不要になった。極めて長期間にわたりデジタルなコミュニケーションがいかに保護されないままの状態であり続けたかを、たいていの専門家が過小評価していた。比較的最近になってやっと、ほんの十年ほど前に、いかに私たちが知らず知らず機微情報を誰もが読める状態で送信していたか、自分のハードウェアや遠隔サーバの上に保護もなしに放置したままにしていたかが十分に意識されるようになった。

活動家、ジャーナリスト、政治家、労働組合の幹部、企業の重役といった人たちが、その種の問題の矢面に立ってきた。なぜなら彼らはプライベートな会話、コミュニケーションの相手の人物、物理的な居場所、さらには財務や健康に関する情報などについて暴露される高いリスクを抱えているからだ。一見ありふれた会話であっても情報漏洩の可能性があるので保護の必要がある。そのような人たちは、自らのコミュニケーションの習慣や手段について十分考えておくべきだ。

でも、大多数の人々、大多数の話題は、それほど厳密なプラバシーを必要としない。もちろんプライバシーはある方が好ましい。来週の夕食会の打ち合わせの電子メールが世界中に公表されたり、招待していない人に読まれたりすれば、どんなにありふれた夕食会であったとしてもやはり嫌な気がするだろう。ただ、日常的なコミュニケーションに関する限り、既存のデジタルツールが十分なプライバシーを提供しており、そのデータが漏洩したとしても現実の悪影響は無いに等しいだろう。

そうだとしても、高価値の標的でない私たちでさえ、悪意ある人の手に渡ったり公開の場に晒されたりすれば自分の心理、人間関係、キャリア、あるいは資金管理に悪影響を及ぼす情報を、誰かと共有せざるを得ないことはある。そのような情報で最も分かりやすいのはパスワードだ。秘密に保たれなければパスワードの意味がないので、意図した受取人以外の人がアクセスできないような形でパスワードの共有をしなければならない。いったん誰かにパスワードを知られれば、その人があなたに関係する情報のすべてを閲覧し、抽出し、変更できるようになってしまう。

他の種類のデータも、アカウントからアカウントへ、システムからシステムへと移動させなければならない場合には保護が難しくなる。中でも重要なのは財務情報だろう。e-コマースサイトにクレジットカード情報を提供する際には、そのサイトがセキュアな HTTPS 接続を使い十分な配慮の下でその情報を保存することをあなたが知っている、あるいは少なくともそう期待できると思っていることが前提となる。けれども、夕食会のためにレストランに予約を入れる際に、クレジットカード情報を電子メールで送れと言われれば、それには抵抗を感じるだろう。おそらくたいていは問題ないのだろうが、そのレストランの電子メールアカウントに誰がアクセスできるかは知りようがないのだし、データを決済システムに移した後にそのメッセージを削除してくれるという保証もないのだから。

もっと他の状況も考えてみよう。より広い財務情報、例えば銀行口座の情報、税申告のための書類、退職後の計画シートなどについてだ。知らない人に自分の資産を調べられたり、口座番号を知られたり、その他の情報を明かされたりするのが嫌で一生懸命資産を隠す努力をしなければならないのは望ましくない。Hunter Biden についてどんな意見を持っていようとも、ラップトップ機の内容を抽出され世界中の目に晒されるのを想像すれば誰もがゾッとするだろう。

それからまた健康に関する情報もある。カクテルパーティーの席でどこそこが痛いなどと話題にすることはあるかもしれないが、自分の精神的健康や慢性疾患に関する書類が怪しげなルートで転送されるとしたら、それを憂慮するのは正当なことだ。ライバルや敵対者について話すのなら愉快かもしれないけれど、離婚や、仕事場や、競争関係にある状況などで相手の個人的な健康情報を暴露するのは、相手に損害を与えることになり重大な問題となるかもしれない。

静止したデータと転送されるデータ

では、インターネット上で機微情報を共有する必要に直面した場合、何をすべきだろうか? その答は、共有しようとする情報の性質と、利用できるシステムと、受け取る人の技術的能力に依存する。他の人たちがどうしているのかが気になって TidBITS Talk で議論を始めてみたところ、たくさんの有益な助言が届いた。

可能性の詳細に分け入る前に、送信しようとしている情報が転送中において、および転送元と転送先で保管されて静止している状態において、それぞれどのように保護されるかを双方とも考慮しなければならないことに注意しよう:

セキュアに情報を共有するための解決法

これらのことをすべて考え合わせて特定の解決法を見出すためには、4つの点を考慮する必要がある:

私がお勧めする具体的方法を紹介しよう:

ご覧の通り、インターネット上で機微情報をセキュアに共有するための万能の方法は存在しない。でも、皆さんの必要に応じて、上で紹介した選択肢のどれかがきっと使えるだろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

BBEdit 15.0.1 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

BBEdit 15.0.1

最近のメジャーアップグレード (2024 年 1 月 11 日の記事“BBEdit 15 が ChatGPT、Minimap、Cheat Sheet、その他を追加”参照) に続き、Bare Bones が BBEdit 15.0.1 をリリースして改良を加えるとともに報告された問題点を修正した。今回のメンテナンス・アップデートでは、ChatGPT ワークシートからテキストをコピーする際に引用された応答から行頭の Markdown 引用符を削除するようにし、ChatGPT ワークシートの環境設定で API キーを入力する方法を提供し、 bbedit --preview にパイプされたローカルな HTML データが BBEdit ウィンドウの中で空白の Preview を生成したバグを修正し、特定の場所のファイルを開いた際に macOS がそれに "touch" していた macOS のセキュリティ挙動を回避し、プロジェクトをロードする際にリンクアドレスモードの設定が正しく保存・復元されなかった問題を解消し、Dark モード下で Windows パレットの close ウィジェットの見栄えを修正し、またいくつかのクラッシュに対処した。2023 年 7 月 1 日以降に BBEdit 14 を購入した人は BBEdit 15 に無料でアップグレードでき、それ以外の BBEdit 14 オーナーのアップグレード価格は $29.99、もっと古いバージョンからのアップグレードは $39.99 だ。(新規購入 $59.99、無料アップデート、29.6 MB、 リリースノート、macOS 11+)

BBEdit 15.0.1 の使用体験を話し合おう

Pixelmator Pro 3.5.6 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Pixelmator Pro 3.5.6

The Pixelmator Team が Pixelmator Pro 3.5.6 をリリースして、Photoshop PDF、Adobe Illustrator (.AI)、および Illustrator EPS ファイルへの対応を改良した。今回のアップデートでは、Photoshop PDF ファイルでそのファイルの作成に使用されたすべてのレイヤーが表示されるようにし、注釈 (例えばテキスト、図形、署名など Preview の Markup を使って追加したもの) の付いた PDF を開くことができるようにし、Final Cut Pro 用の PSD ファイルの最適化を改善して Gradient Fill および Color Fill エフェクトレイヤーをサポートし、RAW レイヤーを含む古い Pixelmator Pro 書類のサポートを改善し、画像を HDR JPEG フォーマットで書き出す際に画像の色をより適切に保存するようにした。(Pixelmator からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、650.7 MB、 リリースノート、macOS 12+)

Pixelmator Pro 3.5.6 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

*TidBITS アンケート: あなたは Vision Pro にいくらなら払えるか?

これはいつもの Do You Use It? アンケートとは少し趣を異にするが、TidBITS 読者層の総意を知りたいという目的は同じだ。Apple の新製品 Vision Pro の価格についてはいろいろの意見が言われている。基本価格は $3499 だが、ストレージ増量、必要なインサートレンズ、AppleCare+、収納ケース、その他を付ければあっという間に税込価格は $4000 を軽く超えるだろう。

(日本語)"Do You Use It?" 調査を紹介する | Do You Use It? Stage Manager の採用率は低い | Do You Use It? Mac の Spotlight | Do You Use It? Launchpad は昔からの Mac ユーザーには受けが悪い | Do You Use It? プロキシアイコン | Do You Use It? Spotlight は主にファイル発見とアプリ起動に使われている | Do You Use It? iPhone 上の Apple の天気アプリ | Do You Use It? プロキシアイコンは静かに生産性を上げる | Do You Use It? Apple の Weather アプリは人気だが他にも人気の代替製品が多種多様 | Do You Use It? iPhone 14 Pro の Always-On ディスプレイ | Do You Use It? iPhone の常時表示ディスプレイは人気だが誰もが使う訳ではない | Do You Use It? Mac のウェブブラウザ | Do You Use It? Safari が Mac Web ブラウザのトップに | Do You Use It? Finder タグ | Do You Use It? Finder タグには集中的な用途あり

だからもちろん Vision Pro は高価だが、それは必ずしも法外な価格という訳ではない。部品にも組み立てにも間違いなくコストが掛かるからだ。報道によれば Apple は発売後の週末だけで 200,000 ユニットを売ったとのことなので、Apple が付けた値札の金額に見合う価値が Vision Pro にあると考えた人たちがいたことは確かだ。

では、あなたはどう考えるだろうか? あなたが Vision Pro について知っていることと、現実にどのような目的に使えるかを考えた上で、いくらなら払えるかを想像してみて頂きたい。単なるテクノロジーへの熱情だけで考えずに、どれだけの価値を Vision Pro から引き出せるかを、他の Apple デバイスと比較しつつ理性的に評価して頂けるとありがたい。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Vision Pro は過度に没入型?

Vision Pro を論じた Vanity Fair の記事で、Nick Bilton がこう書いている

Vision Pro を外した途端、他のデバイスがどれもこれも平面的で退屈に思えてしまう。75 インチ OLED TV はまるで 1990 年代の CRT みたい、iPhone はその昔の折り畳み携帯電話みたい、自分の周りの世界さえ驚くほど平坦に見える。これは、大きな問題だ。ちょうど、ステレオを鳴らさずに自動車を運転するなど考えられないように、スマートフォンなしに人々とコミュニケーションしたり子供たちの写真を撮ったりするなど想像できないように、コンピュータなしに仕事をするなどあり得ないように、いつの日か、私たちは拡張現実なしに暮らすことなど考えられないようになるのではなかろうか。あまりにもテクノロジーに包まれ過ぎて、まるでドラッグを求めるようにこの眼鏡を付けたい気持ちが高まり、今日の私たちが iPhones を求めるよりずっと強い気持ちで、AR に埋もれて浸るドーパミンの快感を求めるようになるのではなかろうか。

心の底で私はこの Apple Vision Pro があまりにも没入的過ぎると知っている。なのに私はこれを通して世界を見てみたいと欲する。シリコンバレーのある投資家は言った。「テクノロジーとしては間違いなく素晴らしいけれど、それでも私はこれが失敗に終わるだろうと思うし、そう願っている。Apple はますます、リハビリ提供者の顔をしたテクノロジー的フェンタニル密売人のごとくになりつつある。」きつい言葉だが、彼は確かに、スマートフォンの奴隷となった私たち多くの感じ方を知っている。彼はこの劇の進行を見届けてきた。第一幕と、第二幕をしっかりと見届けた上で、彼はその終幕を見通せる。

実際きつい言葉だが、成功とは常に予期せぬ結果と手に手を取って進むものだ。

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